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四季と易経 その三十九

芒種(ぼうしゆ)(二十四節氣の九節氣)

【新暦六月五日ころから六月二十日ころまで】
 「小満」の次の二十四節氣は「芒種(ぼうしゆ)」である。
 「芒(のぎ)」とは、イネ科植物の穂先にある針のような突起のこと。芒種(ぼうしゆ)は、この芒(のぎ)のある穀物の種を蒔く時季であり、田植えを始める目安とされました。(絵で楽しむ)

螳螂生(かまきりしようず)(七十二候の二十五候・芒種の初候)

【新暦六月五日ころから九日ころまで】
 意味は「螳螂(かまきり)が生まれ出る(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 秋のうちに草の茎や人家の外壁などに産みつけられた卵から、小さな螳螂が何百と出てくるころ。

 「螳螂生(かまきりしようず)」は、易経・陰陽消長卦の「乾為天」九四に中る。次に「乾為天」九四の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「乾為天」九四の言葉は【新暦六月五日ころから九日ころまで】に当て嵌まる。

乾為天九四(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
九四。或躍在淵。无咎。
○九(きゆう)四(し)。或(ある)いは躍(おど)りて淵(ふち)に在(あ)り。咎(とが)无(な)し。
 九三の段階を経て、君子としての基礎力を身に付けた九四は、時には躍動するように成功するが、時には淵(ふち)に沈むように失敗する。成功と失敗を繰り返す不安定な時だが、今は飛龍として羽ばたくためのチャンスを掴む時だから、大きな過失には至らない。

《小象伝》
或躍在淵、進无咎也。
○或(ある)いは躍(おど)りて淵(ふち)に在(あ)りとは、進むも咎(とが)无(な)き也(なり)。
 時には躍動するように成功するが、時には淵に沈むように失敗する。成功と失敗を繰り返す不安定な時だが、今は飛龍として羽ばたくためのチャンスを掴む時だから、大きな過失には至らない。九四の時は、成功しても驕(おご)ることなく、失敗しても怯(ひる)むことなく、飛龍を目指して果(か)敢(かん)に進んで行く時なので、大きな過失は犯さないのである。

 「乾為天」九四の之卦は「風天小畜」である。次に「風天小畜」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「風天小畜」の六四の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「乾為天」の九四と同じく【新暦六月五日ころから九日ころまで】に当て嵌まる。

風天小畜(乾為天九四の之卦)

《卦辞・彖辞》
小畜、亨。密雲不雨、自我西郊。
○小(しよう)畜(ちく)は亨(とお)る。密(みつ)雲(うん)あれど雨ふらず、我(わ)が西(せい)郊(こう)よりす。
 小畜は小(陰)が大(陽)をやんわりと止める時である。下卦乾が上に進もうとするので上卦巽(そん)が止めようとするが、力で押し止めることはできない。柔順な德で君主(社長)や父(母)の心を和らげ止め(柔よく剛を制し)てこそ、臣下(部下)や子の志が行われる。
 下卦乾天は熱エネルギーを発するので大気(天空)に水蒸気が蓄えられる。水蒸気は天空で密雲となるが、上卦巽の風に遮られて雨は地上に降ってこない。
 別の見方をすれば、雲(六四の陰)は互(ご)体(たい)兌(だ)(二三四)の西の郊外から湧き起こるが、互体離(三四五)の太陽が照射して雨は降らない。(或いは)六四の陰(雲)が西の郊外から湧き起こるが、陰から働きかけると陰陽和合しないから雨は降らないのである。
 周の文(ぶん)王(おう)が殷(いん)の紂(ちゆう)王(おう)により羑(ゆう)里(り)に囚(とら)えられていた時に、易の卦(か)辞(じ)(彖(たん)辞(じ))を書いたと伝わる。その時文王が呟いた「わが志は天下泰平にあるが君主の紂王と志が和合せず、少し止められたる時であるなぁ」という嘆(たん)息(そく)の意に寓(ぐう)したという説もある。この場合、「我」は文王を「西郊」は周の国を指す。すなわち、「我(わ)が西(せい)郊(こう)よりす」とは、文王が周の国の羑(ゆう)理(り)(牢獄)に囚(とら)えられていたので、密雲は雨とならないのである。

《彖伝》
彖曰、小畜柔得位而上下應之、曰小畜。健而巽、剛中而志行。乃亨。密雲不雨、尚往也。自我西郊、施未行也。
○彖に曰く、小(しよう)畜(ちく)は柔(じゆう)位(くらい)を得て、上(じよう)下(げ)之(これ)に應(おう)ずるを、小畜と曰(い)う。健にして巽(そん)、剛中にして志行わる。乃(すなわ)ち亨る。密雲あれど雨ふらずとは、往(ゆ)くを尚(たつと)ぶ也。我(わ)が西(せい)郊(こう)よりすとは、施(ほどこ)し未(いま)だ行われざる也。
 彖伝は次のように言っている。六四(柔)が正(せい)位(い)を得て上下の陽爻は皆六四に応比するので、下卦乾天が進むことをやんわりと止めるから小畜と名付けた。下卦乾は健やかで驕(おご)ることなく巽(そん)順(じゆん)に従うのである。九二と九五が剛健で中庸を得ているから、終には志を実現する。すなわち物事はすらっと通る(すらすらとは通らない)のである。
 下卦乾天は熱エネルギーを発するので大気(天空)に水蒸気が蓄えられる。水蒸気は天空で密雲となるが、上卦巽の風に遮られて雨は地上に降ってこない。
 やがて、次々と密雲が湧き起って地上に雨が降ってくることを貴ぶのである。雲(六四)は西の郊外から湧き起こるが、太陽が照射して雨は降らない。(或いは)六四の陰(雲)が西の郊外から湧き起こるが、陰から働きかけると陰陽和合しないから雨は降らない。(或いは)文王が周の国の羑(ゆう)理(り)(牢獄)に囚(とら)えられていたので、密雲は雨とならない。いずれにしても、未だ時が至らず慈雨を施すことができないのである。

《大象伝》
象曰、風行天上小畜。君子以懿文德。
○象に曰く、風(かぜ)天(てん)上(じよう)を行くは小畜なり。君子以て文德を懿(よ)くす。
 大象伝は次のように言っている。天(乾)上に風(巽)が吹き渡っているので密雲が雨にはならない形が小畜の卦象である。
 君子はこの卦象を見て、己の文德の至らぬ(學問が足りない)から結果が出ないことをよく弁(わきま)えて、聖(せい)賢(けん)の學問を習い身を修めて密雲雨になる時を静かに待つのである。

風天小畜六四(乾為天九四の之卦・爻辞)

《爻辞》
六四。有孚。血去惕出。无咎。
○六四。孚(まこと)有り。血(いたみ)去り惕(おそ)れ出(い)づ。咎无し。
 止める時(小畜)の主(一陰五陽の一陰にして主爻)六四は至(し)誠(せい)の心で九五のトップに尽くすので、九五に信任されて庇(ひ)護(ご)を得る。九五の側近としてよく仕え、柔よく剛を制する役割を果たすので、剛に迫害される危険を免れる。人に咎められるような過失は犯さないのである。

《小象伝》
象曰、有孚、惕出、上合志也。
○象に曰く、孚(まこと)有り、惕(おそ)れ出(い)づとは、上(うえ)、志を合わすれば也。
 小象伝は次のように言っている。止める時(小畜)の主(一陰五陽の一陰にして主爻)六四は、至(し)誠(せい)の心で九五に尽くすので、九五に信任され庇(ひ)護(ご)を得る。九五の側近としてよく仕え、柔よく剛を制する役割を果たすので、剛に迫害される危険を免れる。九五のトップが側近六四の至誠の心に感動し、志を同じくするからである。