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四季と易経 その七十五

朔風払葉(さくふうをはらう)(七十二候の五十九候・小雪(しようせつ)の次候)

【新暦十一月二十八日ころから十二月一日ころまで】
 意味は「北風が木の葉を吹き払う(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 冷たい北風が、木々の枝から枯れ葉を吹き飛ばすころ。朔風とは北風をさします。この時季の北風は「木枯らし」「木の葉落し」などといい、山を越えて吹きつけてくる乾燥した「空(から)っ風」。

 「朔風払葉(さくふうをはらう)」は、易経・陰陽消長卦の「坤為地」六二に中る。次に「坤為地」六二の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「坤為地」六二の言葉は【新暦十一月二十八日ころから十二月一日ころまで】に当て嵌まる。

坤為地六二(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
六二、直方大。不習无不利。
○六(りく)二(じ)、直(ちよく)方(ほう)大(だい)なり。習(なら)わざれども、利(よろ)しからざる无(な)し。
 六二は、雄(おす)馬(うま)である乾の根源的な力(元氣)を丸ごと受け容れる(己(おのれ)を虚(むな)しうして全てを受容できる)から、真っ直ぐで、方向正しく、彊(かぎ)りなく大きな力を発揮する。乾の元氣を丸ごと受け容れる六二は、學ばずと雖(いえど)も、全て宜しく事が運ぶのである。

《小象伝》
象曰、六二之動、直以方也。不習无不利、地道光也。
○象に曰く、六(りく)二(じ)の動は、直にして以(もつ)て方(ほう)也(なり)。習わざれども利(よろ)しからざる无(な)しは、地(ち)道(どう)光(おお)いなれば也。
 小象伝は次のように言っている。六二が動くのは、雄馬である乾の根源的な力(元氣)を丸ごと受け容れる(己(おのれ)を虚(むな)しうして全てを受容できる)。それゆえ、真っ直ぐで、方向正しく、彊(かぎ)りなく大きな力を発揮することができるのだ。全て宜しく事が運ぶのは、六二が柔順中正の陰德を具えて、剛陽に柔順に従う坤の道を大いに発揮するからである。

 「坤為地」六二の之卦は「地水師」である。次に「地水師」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「地水師」の九二の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「坤為地」の六二と同じく【新暦十一月二十八日ころから十二月一日ころまで】に当て嵌まる。

地水師(坤為地六二の之卦)

《卦辞・彖辞》
師、貞。丈人吉无咎。
○師(し)は貞。丈(じよう)人(じん)なれば吉にして咎无し。
 師は多くの人々(大衆)を率(ひき)いて、相手(国家から家庭まであらゆる組織)と戦う時である。戦いには正義がなければならぬ。才德高く、尊崇される長老や経験豊富な人物を総大将に得ることができれば、戦いに勝利して多くの人々(大衆)の安寧を守ることができる。多少犠牲があったとしても咎められない。

《彖伝》
彖曰、師衆也。貞正也。能以衆正、可以王矣。剛中而應、行險而順。以此毒天下、而民從之。吉又何咎矣。
○彖に曰く、師は衆也。貞は正也。能(よ)く衆を以て正しければ、以て王たる可(べ)し。剛中にして應(おう)じ險を行(おこの)ふて順。此(ここ)を以て天下を毒すれども民之(これ)に從う。吉にして又何の咎あらん。
 彖伝は次のように言っている。師は多くの人々(大衆)。貞は正義。大衆を率いて相手と戦う時は、正義がなければならぬ。正義を掲(かか)げて大衆を率いてこそ、天下に誇れるリーダーである。剛健と中庸の德を兼ね備えた九二の長老や経験豊富な人物が、六五のトップに厚く信任され、険難な戦い(下卦坎)に中り柔順(上卦坤)に対処する。
 天の正しい理法に順って戦いを行うので大衆は帰服するのだ。多少犠牲があったとしても、大衆は九二のリーダーに従う。それゆえ、トップは戦いに勝利して大衆の安寧を守ることができる。どうして咎められようか。

《大象伝》
象曰、地中有水師。君子以容民畜衆。
○象に曰く、地中に水有るは師なり。君子以て民を容れ衆を畜(やしな)う。
 小象伝は次のように言っている。地(上卦坤)中に水(下卦坎)が聚(あつま)っているのが師の形である。貴方が君子なら、この形を見習って、大らかな心で大衆を受け容れ、養い育て教え導くのである。

地水師九二(坤為地六二の之卦・爻辞)

《爻辞》
九二。師在中。吉无咎。王三錫命。
○九二。師に在(あ)りて中(ちゆう)す。吉にして咎无し。王三(み)たび命(めい)を錫(たま)う。
 剛中具えた九二は六五のトップから総大将(リーダー)に委任され軍隊(組織)を統括する。よく軍(組織)を率いて戦いに勝ち天下を平定するので、組織(大は国家から小は家庭まで)は安泰である。多少犠牲があったとしても咎められることはない。トップから何度もご褒(ほう)美(び)の言葉を賜(たまわ)るほど尊ばれる。

《小象伝》
象曰、師在中、吉、承天寵也。王三錫命、懐萬邦也。
○象に曰く、師に在(あ)りて中(ちゆう)す吉とは、天(てん)寵(ちよう)を承(う)くる也。王三(み)たび命(めい)を錫(たま)うは、萬(ばん)邦(ぽう)を懐(なつ)くる也。
 小象伝は次のように言っている。九二が総大将(リーダー)に委任され、軍隊(組織)を統括し、天下を平定して組織は安泰となるのは、トップに厚く信任されているからである。
 何度もトップからご褒(ほう)美(び)の言葉を賜(たまわ)るほど尊ばれ、戦いに勝って国土を広げ(組織を拡大・強靱化して)、大衆(多くの人々)に喜ばれるからである。