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四季と易経 その五十一

土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)(七十二候の三十五候・大暑の次候)

【新暦七月二十七日ころから八月一日ころまで】
 意味は「土が潤い蒸し暑くなる(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 地面からは陽炎(かげろう)が立ち上り、まとわりつくような熱気が漂う時季。蒸し暑いことを「溽(じゆく)暑(しよ)」、暑さの盛りを「極暑(ごくしよ)」、燃えるような暑さは「炎暑(えんしよ)」、過酷な暑さは「酷暑(こくしよ)」といいます。

 「土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)」は、易経・陰陽消長卦の「天山遯」六二に中る。次に「天山遯」六二の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「天山遯」六二の言葉は【新暦七月二十七日ころから八月一日ころまで】に当て嵌まる。

天山遯六二(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
六二。執之用黄牛之革。莫之勝説。
○六二。之(これ)を執(と)るに黄(こう)牛(ぎゆう)の革を用(もち)う。之(これ)を説(と)くに勝(た)ふる莫(な)し。
 柔順中正の成卦主六二は遁れ退く時のトップである剛健中正の九五と相応じている。
 柔順中正の德で黄(こう)牛(ぎゆう)の皮ひもを固く結ぶように九五をしっかり繋(つな)ぎ止め、遁(のが)れるべきでない時はどっしりとその位(くらい)に止(とど)まり、遁れるべき時は躊躇することなく速やかに隠(いん)遁(とん)する。九五との結びつきは、固く結んだ黄牛の皮ひもを解き離せないほど堅(けん)固(ご)である。

《小象伝》
象曰、執用黄牛、固志也。
○象に曰く、執(と)るに黄(こう)牛(ぎゆう)の革を用(もち)うるは、志を固くする也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。六二は黄(こう)牛(ぎゆう)の皮ひもを固く結ぶように九五をしっかと繋ぎ止め、遁れるべきでない時はどっしりとその位に止まり、遁れるべき時は躊躇することなく速やかに隠遁する。九五と共に遁れ退く時の志(使命)を堅固に守るのである。

 「天山遯」六二の之卦は「天風姤」である。次に「天山遯」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「天風姤」九二の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「天山遯」の六二と同じく【新暦七月二十七日ころから八月一日ころまで】に当て嵌まる。

天風姤(天山遯六二の之卦)

《卦辞・彖辞》
姤、女壯。勿用取女。
○姤(こう)は、女(じよ)壯(さかん)なり。女を取(めと)るに用ふる勿(なか)れ。
 姤は一陰(小人・女・邪心)が五陽(君子・男・清明心)の下にすっと入り込んで(下卦巽)、巧妙に取り入り、陰(小人・女・邪心)の勢力を増大していく時である。
 このような時(邪心が魅力的な姿に化身して君子を誑(たぶら)かす時)に女(魅力的な姿に化身した邪心の例え)を決して用いてはならない。

《彖伝》
彖曰、姤、遇也。柔遇剛也。勿用取女、不可與長也。天地相遇、品物咸章也。剛遇中正、天下大行也。姤之時義、大矣哉。
○彖に曰く、姤は遇(あ)ふ也。柔剛に遇ふ也。女(じよ)を取(めと)るに用(もち)ふる勿(なか)れとは、與(とも)に長(なが)かる可(べ)からざれば也。天地相(あい)遇(あ)い、品(ひん)物(ぶつ)咸(ことごと)く章(あきら)か也。剛中正に遇へば、天下大いに行はるる也。姤の時(じ)義(ぎ)大(だい)なる哉(かな)。
 彖伝は次のように言っている。姤は遇う時。一陰(小人・女・邪心)が五陽(君子・男・清明心)と出遇う時である。女(魅力的な姿に化身した邪心の例え)が男(君子・大人・清明心の例え)に巧みに取り入り、陰(小人・女・邪心)の勢力を増大する。このような時(邪心が魅力的な姿に化身して君子を誑(たぶら)かす時)に女(魅力的な姿に化身した邪心の例え)を決して用いてはならない。女(魅力的な姿に化身した邪心の例え)は幾久しく身(清明心)を保つことができないからである。
 陰陽交わり(結合して)悪い結果を招くこともある。しかし、天地の道は陰陽交わり消長して萬物が生成発展する循環である。人の道は剛健中正の德を備えた君子が国(組織)を治めれば、天下(組織)は大いに平らかになる(調和する)のである。以上のように考えてみると、姤の時の意義は何と偉大であろうか。

《大象伝》
象曰、天下有風姤。后以施命誥四方。
○象に曰く、天の下に風(かぜ)有るは姤(こう)なり。后(きみ)以て命(めい)を施(ほどこ)し四(し)方(ほう)に誥(つ)ぐ。
 大象伝は次のように言っている。天(乾)の下に風(巽)が吹き、遍く地上に風が行き渡るのが姤の形である。姤の君主(トップ)はこの形を見習い、清明心を保ち続けるための命令を発布して天下の隅々にまで行き渡らせ、萬民を教化するのである。昭和

天風姤九二(天山遯九二の之卦・爻辞)

《爻辞》
九二。包有魚。无咎。不利賓。
○九二。包(つと)に魚(うお)有り。咎(とが)无(な)し。賓(ひん)に利(よろ)しからず。
 九二は剛健にして中庸の德を具えた君子。すぐ下に居る悪しき小人初六を苞(つと)に悪魚を包むように封じ込める。傍から見ると、徐々に君子に浸透して邪心を蔓延(はびこ)らせる小人初六と親しんでいるように見えるが、悪魚の影響が他に及ばないように(一陰五陽で一陰に惹かれかねない陽爻を守ろうと)しているのだから何も問題ない。苞(つと)に包んだ悪しき小人初六を、絶対に他の君子(陽爻)に遇わせてはならない。

《小象伝》
象曰、包有魚、義不及賓也。
○象に曰く、包(つと)に魚(うお)有りとは、義、賓(ひん)に及ばざる也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。苞に悪魚を包むように悪しき小人初六を封じ込める。一陰五陽の悪しき一陰初六を他の君子(陽爻)に遇わせることが、君子の道義(道德を大義として人の道を真っ直ぐに正しく歩むこと)に悖(もと)るからである。