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四季と易経 その三十

霜止出苗(しもやんでなえいずる)(七十二候の候の十七候・穀雨の次候)

【新暦四月二十五日ころから二十九日ころまで】
 意味は「霜がやみ苗が生長するころ(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 晩秋の暖かさでようやく霜が降りなくなり、苗がすくすくと育つころ。

 「霜止出苗(しもやんでなえいずる)」は、易経・陰陽消長卦の「澤天夬」九二に中る。次に「澤天夬」九二の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「澤天夬」九二の言葉は【新暦三月二十五日ころから二十九日ころまで】に当て嵌まる。

澤天夬九二(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
九二。惕號。莫夜有戎勿恤。
○九二。惕(おそ)れて號(さけ)ぶ。莫(ぼ)夜(や)、戎(じゆう)有るも、恤(うれ)ふる勿(なか)れ。
 九二は中庸の德を具えていることが不正(陽爻陰位)を補って自ら戒(かい)慎(しん)する。その役割は権力を有する佞人上六を侮(あなど)らずに警戒すべきことを世に広く警鐘することである。その役割を全うすれば日が暮れ夜になり事変が起きても、何も心配することはない。

《小象伝》
象曰、有戎勿恤、得中道也。
○象に曰く、戎(じゆう)有るも恤(うれ)ふる勿(なか)れとは、中道を得れば也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。剛健にして中庸の德を具えている九二が、佞人上六を侮(あなど)らずに警戒すべきことを世に広く警鐘すれば、日が暮れ夜になり事変が起きても、何も心配することはない。中庸の德で怠(おこた)りなく事変に備えるのである。

 「澤天夬」九二の之卦は「澤火革」である。次に「澤火革」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「澤火革」六二の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「澤天夬」の九二と同じく【新暦四月二十五日ころから二十九日ころまで】に当て嵌まる。

澤火革(澤天夬九二の之卦)

《卦辞・彖辞》
革、己日乃孚。元亨利貞。悔亡。
○革は己(つちのと)の日乃(すなわ)ち孚(まこと)あり。元(おおい)に亨(とお)る、貞(ただ)しきに利(よろ)し。悔(くい)亡(ほろ)ぶ。
 革は己(つちのと)の日。己(つちのと)は十(じつ)干(かん)(甲(こう)乙(おつ)丙(へい)丁(てい)戊(ぼ)己(き)庚(こう)辛(しん)壬(じん)癸(き))の六番目、組織の発展段階の半ばを過ぎている。すなわち、組織を変革する時に近付いている。幾が至れば大きな変革を為し遂げる時である。変革の必要性は、組織を運営している今の体制が綻(ほころ)び、今の体制が組織を動かしていることの弊害が目につくようにならないと認識されない。
 適切な時期に変革を断行するから民衆に支持される。民衆に支持されるから大きな変革を為し遂げられるのである。正しい(適切な時期に変革を断行する)道を固く守れば、平常時なら後悔すべきことも、変革時なら許される。

《彖伝》
彖曰、革、水火相息、二女同居、其志不相得曰革。己日乃孚、革而信之。文明以説、大亨以正。革而當、其悔乃亡。天地革而四時成、湯武革命、順乎天而應乎人。革之時、大矣哉。
○彖に曰く、革は水(すい)火(か)相(あい)息(ほろ)ぼし、二女同じく居(お)り、其(その)志、相得ざるを革と曰(い)う。己(つちのと)の日乃(すなわ)ち孚あり、革(あらた)めて之を信ず。文明にして以て説(よろこ)び、大いに亨りて以て正し。革めて當(あた)り、其(その)悔(くい)乃(すなわ)ち亡ぶ。天地革まりて四(しい)時(じ)成り、湯(とう)武(ぶ)、命(めい)を革(あらた)め、天に順(したが)ひて人に應(おう)ず。革の時は大(だい)なる哉(かな)。
 彖伝は次のように言っている。革は火(下卦離)を熱して澤の水(上卦兌)を沸騰させ、澤の水が溢れて火が消える象。水(すい)火(か)相(あい)滅(ほろ)ぼす形である。二階に少女(上卦兌)と一階に中女(下卦離)が同居している(同じ組織に属している)が、志を異にして争っている。このような状態は革(あらた)めなければならないので革と名付けたのである。変革の必要性は、今の体制が綻び、今の体制が組織を動かしていることの弊害が目につくようにならないと認識されない。適切な時期に変革を実行するから民衆に支持される。民衆は今の体制が行き詰まり、その弊害に耐えられなくなって初めて変革の必要性を身に沁みて感じるのである。
 文明が発展して(下卦離)、民衆が和らぎ悦ぶ(上卦兌)から、大きな変革を為し遂げられる。正しい(適切な時期に変革を断行する)道を固く守ったからである。今の体制を革(あらた)めて、様々な弊害を根底から除き去るので、平常時なら後悔すべきことも、許されるのである。天地は陰陽消長循環して時が革まり季節(春夏秋冬)は変化する。人類の生成発展は殷(いん)の湯(とう)王(おう)や周の武(ぶ)王(おう)の革命のように、天命に順い、民の心に応じて行われる。時の宜しきに中る革の時は何と偉大であろうか。

《大象伝》
象曰、澤中有火革。君子以治歴明時。
○象に曰く、澤(さわ)の中に火有るは革なり。君子以て歴(こよみ)を治(おさ)め時を明かにす。
 大象伝は次のように言っている。澤(上卦兌)の中(下)に火(下卦離)が有り、お互いに滅ぼし合っているのが革の形である。君子は水(すい)火(か)相(あい)滅(ほろ)ぼす革の形に見習って、時の変化に順応した行動計画を暦(中長期の計画)に表して、政治や政策の実施計画(短期の計画)を民衆に明示するのである。(或いは、正しい暦を制定し、春夏秋冬の変化を明らかにして、農業に基づく経済活動を支援するのである。)

澤火革六二(澤天夬九二の之卦・爻辞)

《爻辞》
六二。己日乃革之。征吉无咎。
○六二。己(つちのと)の日乃(すなわ)ち之を革(あらた)む。征けば吉にして咎(とが)无し。
 六二は柔順中正の賢臣である。九五の天子(トップ)を補佐して変革を成し遂げる役割を担っている。しかし、変革を急いではならぬ。今は己(つちのと)の日。己(つちのと)は十(じつ)干(かん)(甲(こう)乙(おつ)丙(へい)丁(てい)戊(ぼ)己(き)庚(こう)辛(しん)壬(じん)癸(き))の六番目、組織の発展段階の半ばを過ぎている。すなわち、組織を変革する時に近付いているが、まだ、変革を実行する時には至っていない。現体制が綻(ほころ)び、その弊(へい)害(がい)が目につくようになった時に、はじめて変革は成し遂げられるのだ。然るべき時を待って九五の天子(トップ)と共に進み征けば、見事に変革は成功する。誰からも咎められない。

《小象伝》
象曰、己日乃革之、行有嘉也。
○象に曰く、己(つちのと)の日乃(すなわ)ち之を革むとは、行きて嘉(よろこび)有る也。
 小象伝は次のように言っている。変革を急いではならぬ。今は己(つちのと)の日。己(つちのと)は十(じつ)干(かん)(甲(こう)乙(おつ)丙(へい)丁(てい)戊(ぼ)己(き)庚(こう)辛(しん)壬(じん)癸(き))の六番目、組織の発展段階の半ばを過ぎている。すなわち、組織を変革する時に近付いているが、まだ、変革を実行する時には至っていない。現体制が綻(ほころ)び、その弊(へい)害(がい)が目につくようになった時に、はじめて変革は成し遂げられるのだ。
 然(しか)るべき時を待って天子(トップ)と共に進み征けば、変革を見事に為し遂げ、現体制による弊害が刷新されるので、大いに民衆に喜ばれるのである。