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四季と易経 その十

鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)(七十二候の七十二候)

【新暦一月三十日ころから二月三日ころまで】
 意味は「鶏が卵を産み始める(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 春の訪れを感じた鶏が、卵を産み始めるころ。

 「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」は、易経・陰陽消長卦の「地(ち)澤(たく)臨(りん)」六三に中る。次に「地澤臨」六三の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「地澤臨」六三の言葉は【新暦一月三十日ころから二月三日ころまで】に当て嵌まる。

地澤臨六三(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
○六三。甘(かん)臨(りん)す。利(よろ)しき攸(ところ)无(な)し。既(すで)に之(これ)を憂(うれ)うれば咎(とが)无(な)し。
 六三は柔弱不正で才能と人德が乏しいのに邪(よこしま)な志(野心・野望)を抱いて下卦兌(だ)の最上に居る。巧(たく)みに人を悦ばせる言葉や物腰柔らかな態度(下卦兌の主爻)で下々に臨(のぞ)み、媚(こ)び諂(へつら)って人の上に立つ。それゆえ、何をやっても失敗する。
 六三が己の非を知り、憂(うれ)えて態度を改めれば、咎(とが)められることは免(まぬが)れる。
《小象伝》
○象に曰く、甘(かん)臨(りん)すとは、位(くらい)當(あた)らざれば也。既(すで)に之(これ)を憂(うれ)うれば、咎(とが)、長からざる也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。佞人六三が媚(こ)び諂(へつら)って人の上に立つのは、邪(よこしま)な志(野心・野望)を抱いて下卦兌(だ)の最上に居るからである。
 六三が己の非を知り、憂(うれ)えて態度を改めれば、最初は咎められることがあっても、漸(ぜん)次(じ)に咎められることはなくなっていくであろう。

 「地澤臨」六三の之卦は「地天泰」である。次に「地天泰」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「地天泰」九三の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「地澤臨」六三と同じく【新暦一月三十日ころから二月三日ころまで】に当て嵌まる。

地天泰(地澤臨六三の之卦)

《卦辞・彖辞》
○泰(たい)は、小(しよう)往(ゆ)き大(だい)來(き)る。吉にして亨る。
 泰は小(上卦坤の陰)が下(か)降(こう)し、大(下卦乾の陽)が上昇して、上下陰陽大いに交(まじ)わる。それゆえ、何事も調和して幸運を招き寄せる。何をやってもうまく行く。
《彖伝》
○彖に曰く、泰は小往き大來る。吉にして亨るとは、則(すなわ)ち是(こ)れ天地交わりて萬(ばん)物(ぶつ)通ずる也。上下交わりて其(そ)の志同じき也。内は陽にして外は陰、内は健にして外は順、内は君子にして外は小人、君子の道長じ、小人の道消(しよう)する也。
 彖伝は次のように言っている。泰は小(上卦坤の陰)が上卦(外卦)に往(い)って下降し、大(上卦乾の陽)が下卦(内卦)に来て上昇して、上下陰陽大いに交わる。それゆえ、何事も調和して幸運を招き寄せる。何をやってもうまく行く。天地が交わり、萬(ばん)物(ぶつ)が生成発展するのである。
 君德(トップの恩沢)が民(たみ)に普(あまね)く行き渡り、民の尊崇する気持ちが君(トップ)に通じて、君(くん)民(みん)志を同じくして天下泰平となる。内面は君子(下卦乾)の德を備えて、外面にその光を現さない(上卦坤)。内側に剛健な志を抱き、外側は柔順に人に接する。
 根幹(内卦)に君子が居て、末端(外卦)に小人が居る。君子の道は盛んに伸びるが、小人の道は衰退するのである。
《大象伝》
○象に曰く、天地交わるは泰なり。后(きみ)以て天地の道を財(ざい)成(せい)し、天地の宜(ぎ)を輔(ほ)相(しよう)し、以(もつ)て民(たみ)を左右(たす)く。
 大象伝は次のように言っている。天地交わり大いに和合するのが泰の卦象である。君主(トップ)はこの卦象に見習って、天地の道を踏み外さないように仁政を行って人の道を補(おぎな)う。萬(ばん)民(みん)に寄り添うように國(組織)を治めるのである。

地天泰九三(地澤臨六三の之卦・爻辞)

《爻辞》
○九三。平(たい)らかにして陂(かたむ)かざる无(な)く、往(ゆ)きて復(かえ)らざる无(な)し。艱(かん)貞(てい)なれば咎无し。恤(うれ)うる勿(なか)れ、其(そ)れ孚(まこと)あれ。食に于(おい)て福(さいわい)有り。
 九三は安泰の最盛期(下卦乾の極点・泰の折り返し地点)という危ない位置に居る。何事も安定した状態が永続することはない。鬼が外に行ったきりで帰ってこないこともない。幾久しく安泰の時が続くと錯覚して、安逸に流されてはならない。
 常に天下国家に思いを馳せ、艱難を乗り越えて正しい道を固く守れば、咎められるような過失は免れる。憂えることなく、至誠を尽くしなさい。食べること(経済活動や生活)に関しては、幸福な状態がまだまだ続くであろう。
《小象伝》
○象に曰く、往(ゆ)きて復(かえ)らざる无(な)しとは、天地際(まじ)わる也。
 小象伝は次のように言っている。鬼が外に行ったきりで帰ってこないことはない(鬼は外・福は内の次は、福は外・鬼は内の状態に移行する)。陰陽消(しよう)長(ちよう)往(おう)来(らい)の常(じよう)理(り)である。
(四季と易経 その十)