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四季と易経 その四

雪下出麦(せつかむぎをいだす)(七十二候の六十六候)

【新暦一月一日ころから四日ころまで】
 意味は「雪の下で麦が芽を伸ばす(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 寒さの厳しい地方では一面の雪景色となり、厚い雪の下から麦がひっそりと芽を伸ばすころ。

 「雪下出麦(せつかむぎをいだす)」は、易経・陰陽消長卦の「地雷復」六(りく)三(さん)に中る。次に地雷復六三の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「地雷復」六三の言葉は【新暦一月一日ころから四日ころまで】に当て嵌まる。

地雷復六三(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
○六三。頻(しきり)に復(かえ)る。厲(あやう)けれども咎(とが)无(な)し。
 六三は陰柔不中正で下卦震(動)の極(きよく)に居(お)り、動き過ぎて落着きがない。凡夫ゆえにしばしば過ちを犯すが、邪心を抱いているわけではないので、その度(たび)に過ちを悔いて正しい道に復る(道德心を取り戻す)。実に危ないけれども、咎められるには至らない。
《小象伝》
○象に曰く、頻復(ひん\ぷく)の厲(あやう)きは、義として咎(とが)无(な)き也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。六三は凡夫ゆえにしばしば過ちを犯す。その度(たび)に過ちを悔いて正しい道に復る(道德心を取り戻す)ので、咎められるには至らない。
 六三は邪心を抱いているわけではなく、異(こと)心(ごころ)や煩悩に惑わされているだけなので、道義的には責められない(凡夫の性(さが)ゆえ許される)のである。

 「地雷復」六三の之卦は「地(ち)火(か)明(めい)夷(い)」である。次に「地火明夷」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「地火明夷」九(きゆう)三(さん)の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「地雷復」の六三と同じく【新暦一月一日ころから四日ころまで】に当て嵌まる。

地火明夷(地雷復六三の之卦)

《卦辞・彖辞》
○明(めい)夷(い)は、艱(かん)貞(てい)に利(よろ)し。
 明夷は明るいものが傷付けられる(夷)時である。また、明夷は明るい太陽(下卦離)が大地(上卦坤)の下に沈み、君子が小人に仕える暗黒の時である。
 このような道無き時(無道)に如(い)何(か)に対処すべきかをよくよく考えなければならない。君子に降りかかる艱難辛苦に中(あた)って、時の流れに身を任せることなく、そうかといって、逆らうこともなく、常に正しい道を固く守ることが唯一の対処法である。
《彖伝》
○彖に曰く、明、地中に入るは明夷。内、文明にして外、柔順、以て大(だい)難(なん)を蒙(こうむ)る。文(ぶん)王(おう)之(これ)を以(もち)う。艱貞に利しとは、其の明を晦(くら)ます也。内、難にして而も能く其の志を正しくす。箕(き)子(し)之(これ)を以(もち)う。
 彖伝は次のように言っている。太陽(下卦離・明智と明德を具えた大人)が大地(上卦坤・小人)の下に沈んで真っ暗となり、暗黒の世を表しているのが明夷の形である。内に文明(離)の德を具え、外に柔順(坤)に振る舞って、暗黒の世に対処しても、大きな艱難辛苦が立ち塞がり、誰もこれを避けることができない。周の文(ぶん)王(おう)は、内に明智・明德を包み隠して幽閉にじっと耐え、(殷王朝の三分の二の領地を自国の領地として保有していながら)外に柔順に振る舞って暴君紂(ちゆう)王(おう)に仕えるしかなかったのである。
 「君子に降りかかる艱難辛苦に中(あた)って、時の流れに身を任せることなく、そうかといって、逆らうこともなく、常に正しい道を固く守ることが唯一の対処法である」とは、明德を隠しつつも、常に正しい道を固く守ることしか対処法はないのである。君子は艱(かん)難(なん)辛(しん)苦(く)が立ち塞(ふさ)がっても、己の明智・明德を包み隠して志操を貫くのである。紂王の叔父・箕(き)子(し)は狂人を装(よそお)って(明智・明德を包み隠し)紂王の奴(ど)隷(れい)に甘んじて、己の志を貫いたのである。
《大象伝》
○象に曰く、明、地の中に入(はい)るは明(めい)夷(い)なり。君子以(もつ)て衆に涖(のぞ)むに、晦(くら)きを用いて明らかなり。
 大象伝は次のように言っている。太陽(離)が大地(坤)の下に沈み隠れて世の中が真っ暗闇(暗黒社会)になってしまったのが明(めい)夷(い)の形である。
 君子はこの形(異常事態)に見習って、凡(ぼん)庸(よう)な大衆と接する時は、明德を包み隠して愚(ぐ)の如(ごと)く振る舞い、自らの内面は明智・明德を貫いて、さりげなく大衆と接することにより、知らず識らずのうちに大衆を善い方向に導くのである。

地火明夷九三(地雷復六三の之卦・爻辞)

《爻辞》
○九三。明(めい)夷(やぶ)る。于(ゆ)きて南に狩(かり)す。其(そ)の大(たい)首(しゆ)を得(う)。疾(はや)くす可(べ)からず。貞(てい)。
 義勇に富む九三(陽爻陽位)は、下卦離(明)の極みに居る。暗黒の時を支配する暗君上六を討伐すべく、南方(明らかな方面)に兵を進める。やがて時が至れば、首(しゆ)領(りよう)上六を討ち取って英雄と称されるようになる。今は急いではならぬ。明智・明德を包み隠して、心の中には大志と大義を高く掲(かか)げて、時が到来するのをじっくりと待て。
《小象伝》
○象に曰く、南に狩(かり)すの志、乃(すなわ)ち大いに得(う)る也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。九三は、暗黒の時を支配する暗君上六を討伐すべく、南方(明らかな方面)に兵を進めて準備を整える。九三の大(たい)志(し)は、首(しゆ)領(りよう)の上六を討ち取ることにより、大いに成就するのである。
※この爻は、周の武王がやがて殷の紂王を討伐したことに例えられる。武王は文王の子。文王を継いで殷の紂王を討伐し周王朝を立てた。
 ここまでが二十四節氣の「冬至」である。「冬至」は【新暦十二月二十一日ころから一月四日ころまで】である。
(四季と易経 その四)