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四季と易経 その六十五

寒露(かんろ)(二十四節氣の十七節氣)

【新暦十月八日ころから二十二日ころまで】
 「秋分(しゆうぶん)」の次の二十四節氣は「寒露(かんろ)」である。
 朝晩の冷え込みが増し、草木に宿る露が冷たく感じられる時季。この寒露のころに感じる寒さを「露寒(つゆさむ)」といいます。(絵で楽しむ)

鴻雁来(がんきたる)(七十二候の四十九候・寒露(かんろ)の初候)

【新暦十月八日ころから十二日ころまで】
 意味は「雁(がん)が飛来し始める(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 燕が南へ去ったころ、冬鳥の雁が北国から飛来します。その年初めて渡ってくる雁を「初雁(はつかり)」、雁の鳴き声を「雁(かり)が音(ね)」といいます。

 「鴻雁来(がんきたる)」は、易経・陰陽消長卦の「風地観」九四に中る。次に「風地観」六四の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「風地観」六四の言葉は【新暦十月八日ころから十二日ころまで】に当て嵌まる。

風地観六四(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
六四。觀國之光。利用賓于王。
○六四。國(くに)の光を觀(み)る。用(もつ)て王に賓(ひん)たるに利(よろ)し。
 六四は九五の天子(トップ)に最も近く、天子(トップ)からの信頼の厚い大臣(側近)である。間(ま)近(ぢか)に聖賢の德を仰ぎ観て、今後の治(ち)国(こく)平(へい)天(てん)下(か)の光(方向性・ビジョン・シナリオ)を観る。朝廷の賓(ひん)客(かく)として聖(せい)君(くん)(九五)に仕えて確(しか)と補佐するが宜しい。

《小象伝》
象曰、觀國之光、尚賓也。
○象に曰く、國(くに)の光を觀(み)るとは、賓(ひん)たるを尚(たつと)ぶ也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。六四が間近に聖賢の德を仰ぎ観て治国平天下の光(方向性・ビジョン・シナリオ)を観る。
 六四は朝廷(組織)の賓(ひん)客(かく)として聖(せい)君(くん)(トップ)に仕えて確(しか)と補佐せんと庶(こい)幾(ねが)うのである。

 「風地観」六四の之卦は「天地否」である。次に「天地」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「天地否」の九四の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「風地観」の六四と同じく【新暦十月八日ころから十二日ころまで】に当て嵌まる。

天地否(風地観六四の之卦)

《卦辞・彖辞》
否之匪人。不利君子貞。大往小來。
○之(これ)を否(ふさ)ぐは人に匪(あら)ず。君子の貞(てい)に利(よろ)しからず。大往(ゆ)き小來(きた)る。
 否は上下君(くん)臣(しん)交わることなく閉塞する時。人間社会においては、あらゆる事象が閉塞する否の時は人の道に反することが横行闊歩する。君子が正しい道を固く守っても、この閉塞状態をどうすることもできない。
 天(君主・トップ)は上(外)に在り、地(臣下・臣民・民・部下)は下(内)に在る。天地陰陽(上下君臣・上司と部下・夫婦・親子等あらゆる関係)交わることなくあらゆる事象が閉(へい)塞(そく)するのである。

《彖伝》
彖曰、否之匪人、不利君子貞、大往小來、則是天地不交萬物不通也。上下孚交天下无邦也。内陰而外陽、内柔而外剛、内小人而外君子。小人道長、君子道消也。
○彖に曰く、之(これ)を否(ふさ)ぐは人に匪(あら)ず、君子の貞に利しからず、大往(ゆ)き小來(きた)るとは、則(すなわ)ち是(こ)れ天地交わらずして萬(ばん)物(ぶつ)通ぜざる也。上下交わらずして天下に邦(くに)无(な)き也。内は陰にして外は陽、内は柔にして外は剛、内は小人にして外は君子。小人の道長(ちよう)じ、君子の道消(しよう)する也。
 彖伝は次のように言っている。否は天地陰陽(上下君臣・上司と部下・夫婦・親子等あらゆる関係)交わることなく閉(へい)塞(そく)する時である。天地の氣が交わらない(陰陽結合による創造活動が行われない)ので萬(ばん)物(ぶつ)は生成化(か)育(いく)しないのである。
 上下君臣(政府と民衆・上司と部下・親と子)の意志が疎(そ)通(つう)しないので国家(を始めとするあらゆる組織)の体(てい)を成さない。
 内側(下卦)の陰氣が徐々に盛んになり、外側(上卦)の陽氣は徐々に衰退する。内面(下卦)は柔弱なのに外面(上卦)は剛健を装っている。小人が要職を独占して君子は閑(かん)職(しよく)に追いやられる。小人が跋(ばつ)扈(こ)して、君子の道は消滅する。

《大象伝》
象曰、天地不交否。君子以德儉辟難、不可榮以祿。
○象に曰く、天地交わらざるは否(ひ)なり。君子以(もつ)て德を儉(つづまやか)にし難(なん)を辟(さ)け、榮(えい)するに祿(ろく)を以(もつ)てす可(べ)からず。
 大象伝は次のように言っている。天地陰陽交わらず萬(ばん)物(ぶつ)は閉(へい)塞(そく)し、小人が跋(ばつ)扈(こ)して、世の中が乱れ崩壊に向っていくのが否の形である。
 君子はこの形に倣(なら)って、己の道德才能を上手に包み隠して、小人が招き寄せる災難に近付いてはならない。君子を禄(ろく)位(い)(富や名誉)で誘惑することはできないのである。

天地否九四(風地観六四の之卦・爻辞)

《爻辞》
九四。有命无咎。疇離祉。
○九四。命(めい)有り、咎无し。疇(たぐい)、祉(さいわい)に離(つ)く。
 九四は剛健だが控え目な大臣(大人九五の側近)。世の中が乱れ崩壊に向っていく否の時が半(なか)ばを過ぎた。天命に順って天子(トップ)に奉公して閉(へい)塞(そく)した世の中を泰平に導く。
 君位に近く(トップの側近として)悪(にく)まれる恐れがあるが、人から咎められるような過失は犯さない。同志(九五・上九)と共に大いなる泰平の福を得る。しかし、まだ否の時は終わっていない。泰の時が到来するまで油断してはならない。

《小象伝》
象曰、有命无咎、志行也。
○象に曰く、命(めい)有り咎无しとは、志(こころざし)行なわるる也。
 小象伝は次のように言っている。九四は君位に近く(トップの側近として)悪(にく)まれる恐れがあるが、人から咎められるような過失は犯さない。
 君子(九四・九五・上九の陽)が時を得て閉塞した世を泰平に導くという志が成し遂げられたのである。しかし、まだ世の中が乱れ崩壊に向っていく否の時は終わっていない。泰の時が到来するまで油断は禁物である。