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抜粋「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 水風井 一

2022年8月13日

四八 水風井 ・|・ ||・

井、改邑不改井。无喪无得。往來井井。汔至亦未繘井、羸其瓶、凶。
□井(せい)は邑(ゆう)を改むれども井(せい)を改めず。喪(うしな)ふなく、得るなし。往(おう)来(らい)井(せい)を井(せい)とす。汔(ほとん)ど至らんとして、亦(また)、未だ井(せい)に繘(つるべなわ)せず、其(その)瓶(つるべ)を羸(やぶ)るは、凶なり。
 遷(せん)都(と)で村人が移転しても井戸は残る。汲み出しても水は尽きない。放っておいても溢れない。往来する人々は井戸を利用して、恩(おん)沢(たく)に与(あずか)る。
 だが、釣(つる)瓶(べ)が水に届かなかったり、釣瓶がなかったり、釣瓶が壊れていれば、井戸は何の役にも立たない無用の長物となる。
彖曰、巽乎水而上水井。井養而不窮也。改邑不改井、乃以剛中也。汔至亦未繘井、未有功也。羸其瓶。是以凶也。
□水に巽(い)れて水を上(あ)ぐるは井なり。井は養ひて窮まらざる也。邑を改むれども井を改めざるは、乃ち剛中なるを以て也。汔(ほとん)ど至らんとし、亦、未だ井に繘(つるべなわ)せざるは、未だ功有らざる也。其(その)瓶(つるべ)を羸(やぶ)るる。是(ここ)を以て凶也。
 水(坎)に木製の釣瓶(巽)を入れ、井戸から水を汲み上げるのが井の時。井戸は人や物を養い窮まることを知らない。遷都で村人が移転しても井戸は残る。あたかも天子が剛中の德を備えているように。
 だが、釣(つる)瓶(べ)が水面に届かなかったり、釣瓶がなければ、井戸は用をなさない。釣(つる)瓶(べ)が壊れていれば、井戸は何の役にも立たない無用の長物となってしまう。
象曰、木上有水井。君子以勞民勸相。
□木の上に水有るは井なり。君子以て民に労(ろう)し相(たす)くるを勧(すす)む。
 木(巽)の上に水(坎)が有るのが井(せい)。
 釣(つる)瓶(べ)で水を汲み上げる井戸や地上の草木が地下水を吸い上げる形。
 君子は水が人や物を養う井に見習って、民を慰労し、相互扶助を奨励する。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)彼レ險ニシテ、我レ巽ナルノ卦ナレバ、己レノ無力ナルヲ顧ミズ、困難セル者ニ助力スルノ時トス、又井戸ノ卦ナレバ、他ニ心ヲ移ス可ラズ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)相手(上卦)は坎険であり、自分(下卦)は巽順な形。自分が力不足なことを顧みず、困難に遭遇している人を助けようとする時。井戸の物語に喩えられる卦だから、他に心を移すことなく、清廉な心を維持して時を待つべきである。そのようであれば、目上の人に目をかけられて、抜擢任用される(世に出る)。
○何事も通ずる時。 ○静かな(騒々しくない)時。
○何かを毎日使うことで利便性がドンドン高まる時である。
○現在地に止まって、他に移動しない方がよい時である。
○何事も限界がない。継続することに意味がある。
○心身共に安定させ、動いてはならない時。静かであろうとすれば、常に心身共に安定する時である。

井 初六 ・|・ ||・

初六。井泥不食。舊井无禽。
□初六。井(せい)泥(にご)りて食(くら)はれず。旧(きゆう)井(せい)、禽(とり)无(な)し。
 柔弱不中正で最下に居り六四とは応じない。
 枯れ井戸の底の泥のように誰にも飲んでもらえない。枯れ井戸には鳥も寄ってこない。
象曰、井泥不食、下也。舊井无禽、時舍也。
□井(せい)泥(にご)りて食(くら)はれずとは、下(しも)なれば也。旧(きゆう)井(せい)、禽(とり)无(な)しとは、時(とき)舍(す)つる也。
 誰にも飲んでもらえない。井戸の最下に居るからである。枯れ井戸には鳥も寄ってこない。時世(時・処・位)から見捨てられているのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)身ニ德アリト雖モ、運衰ヘ下ニ埋モレ、其能顯レズ、却テ衆人ニ見棄ラレルガ如シ、然レドモ自ラ信ヲ守リテ潜ミ居レバ、圖ラズ舊識ノ人ニ遇ヒ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)自分が人德を具えていても、運氣衰え、世間に埋もれ、能力を発揮できない。大衆に見捨てられる時。
○不遇な状況に陥っている。信念を貫いて陰徳を積めば、偶然に昔の知り合いに出逢う。それがきっかけとなって、世に出られる。
○井戸の下に埋もれている泥水のように、人の心が濁る時。
○世間でよく云われる「食えぬ奴」が跋扈する時。
○才能不足で支援なく、何事も成就できない。運氣に見放された時。
○何かに陥り困窮して苦しむ時。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人某來リテ、運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、井ノ初爻ヲ得タリ、