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期間限定「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 水雷屯

2022年5月8日

三 水雷屯 ・|・ ・・|

屯、元亨。利貞。勿用有攸往。利建侯。
□屯(ちゆん)は元(おお)いに亨(とお)りて貞(ただ)しきに利(よろ)し。往(ゆ)く攸(ところ)有(あ)るに用(もち)ふる勿(なか)れ、侯(きみ)を建(た)つるに利(よろ)し。
 屯(ちゆん)は万物創世(産みの苦しみ)の時。創世・創業には苦しみが伴う。苦しみに耐えてこそ、物事が始まり、すらすら成長して行く。正しく天の道を守るがよい。
 妄(みだ)りに動いてはならない。泰(たい)然(ぜん)と構えて全体を見渡し、将来を切り開いて行く人物を抜(ばつ)擢(てき)任(にん)用(よう)するがよい。
彖曰、屯剛柔始交而難生、動乎険中。大亨貞、雷雨動満盈。天造草昧、宜建侯而不寧。
□屯は剛柔始めて交(まじ)わりて難(なん)生(しよう)じ、険(けん)中(ちゆう)に動く。大いに亨(とお)りて貞なるは、雷雨の動き満(まん)盈(えい)すればなり。天(てん)造(ぞう)草(そう)昧(まい)、宜しく侯(きみ)を建(た)てて寧(やす)からず。
 屯(ちゆん)の時は、乾(剛)坤(柔)始めて交わり震(長男)を生み、震は坎(かん)に塞(ふさ)がれ万物創世の生みの苦しみに遭(そう)遇(ぐう)する。すなわち困難な状況(坎)の中を進む(震)のである。
 苦しみに耐えてこそ、物事が始まり、すらすら成長して行く。正しく天の道を守るがよい。雷雨(下卦震と上卦坎の性質)の震動が漸(ぜん)次(じ)に満ちて(雷水解の時に転じて)、やがて万物が誕生する。
 天の時(じ)運(うん)を見通すことは難しい。泰然と構えて全体を見渡し、将来を切り開いて行く人物を抜擢任用しても、しばらくは、生みの苦しみが続くであろう。
象曰、雲雷屯。君子以経綸。
□雲(うん)雷(らい)は屯(ちゆん)なり。君子以(もつ)て経(けい)綸(りん)す。
 雷(震)が轟(とどろ)き渡(わた)り、雲(坎)が湧き上がるが、未(いま)だ恵みの雨に到(いた)らないのが屯(ちゆん)の形。君子は、恵みの雨を降らせるために、縦糸と横糸(時間と空間)を紡(つむ)ぐのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此卦ニ遇フトキハ譬ヘバ其國文明を以テ稱セラレ、其人亦文明ヲ以て自ラ居ルモノト雖モ、一時ノ困難ニ迫リ、或ハ自己ノ利害ヲ慮ルガ爲ニ、已ムコトヲ得ズシテ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)この卦が出たら、その国は文明的だと言われ、その人は文明人だと思っている。だが、一時的に困難が迫り、あるいは、自分の利害を心配して、やむを得ずに、蒙昧で野蛮な事を行なうことになる。それゆえ、占ってこの卦が出たら猛省すべきである。自分が行動しようとしても、相手が拒み邪魔する。動くに動けないので悶々とする。強引に行動すれば、必ず災難に遭遇し、険阻艱難に陥る。ゆったりと構えて、時運が到来するのを待って、行動することが肝要である。または、社会的な地位が高く、智恵と人德を具えた人物を探し、その人物に従い、心から尊敬して、時運が到来するのを待つ。あるいは、世事に明るく、将来を見通せる人物を探し、その人物の下で働き、人德を磨きながら、業を修める。そうすれば、数年後に、自分の氣運が上向いて、志を実現するチャンスが到来する。
○君主(社長、上司)はいるが、臣下(従業員、部下)がいないので、人德や行いが秀でていても、役に立たない。
○弟が家督を継いで、兄が弟に養われる時。
○地位が低い人は、地位の高い人から引き立てられるのを待っていると出世できる。
○地位が高い人は、地位の低い人の中から優秀な人を抜擢し、仕事を任せればうまく行く。
○こんがらがった糸を苦労して解こうとしている時。急いで事を為そうとすれば、もっとこんがらがって苦しむ。ゆったりと構えていれば徐々に良くなっていく。以上のことから、今遭遇している険阻艱難は、必ず将来は解決に向かう。
○何事もゆったりと対処すべきである。急いではならない。
○物価は下落する。商業活動も不景気である。
○何かを為し遂げようとすれば、誰かに抑制される。
○旅に出ても、なにも良いことは起こらない。

屯 初九 ・|・ ・・|

初九、磐桓。利居貞。利建侯。
□初九、磐(はん)桓(かん)す。貞(てい)に居(お)るに利(よろ)し。建(た)てられて侯(こう)たるに利(よろ)し。
 身分卑(いや)しく、時到(いた)らぬため、軽率に飛び出してはならない。泰然と構えて、道を守るがよい。抜擢(ばつてき)任用されたら、将来を切り開いて行くがよい。
象曰、雖磐桓、志行正也。以貴下賤、大得民也。
□磐(はん)桓(かん)すと雖(いえど)も、志正しきを行うなり。貴(たつとき)を以て賤(いや)しきに下(くだ)る、大いに民(たみ)を得るなり。
 志は屯(ちゆん)難(なん)を切り開くこと。大いに世間の喝采を浴びて、民は心服する。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻即チ才德兼備シテ大任ニ堪ユル者トス、然レドモ今や屯難ノ時ニ際スルヲ以テ内ハ即チ正道ヲ行ヒテ固ク守リ、外ハ則チ人望ヲ収メテ時機ヲ待ツベシ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)才能と人德を具えているから、大きな任務を任せられる。だが、今は屯難の時だから、自分に対しては(内面的には)、正しい道を履み行ない、世間に対しては(外面的には)、信用・信頼関係を築き上げ、時が至るのを待つべきである。
 事を為し遂げるためには、世間の人望を得るしかない。人望があれば、社会的弱者や愚鈍な人々からも信頼される。普通の人は、ただ社会的な地位を得ることを望み、地位を捨ててまで、信頼関係を大切にしない。智恵を身に付けても、情に欠ける。
 陽は尊ぶが、陰には見向きもしないということである。このような人が、世を治めて、民を率いることなど、できるはずがない。
 リーダーたる者、今は屯難の時であることを、よくよく考えて、さまざまな配慮をしなければならない。
 天命を授かって、国家の発展に寄与すべく、己を虚しくして身を修め、心から民が幸せになることを願えば、やがて、社会的な大事業を成し遂げることができる。正しい道をコツコツと履み行なうことを怠り、時が至る前に大事業を成し遂げようとすれば、功を上げるどころか、人災を招き寄せることになる。
○時が至るのを待って、成長を図る(伸ばす)べきである。あらゆる事を長い目で見るべきである。
○険阻艱難に遭遇した時は、あせって進んではならない。正しい事をコツコツと積み上げ、時が至るのを待つべきである。盥(たらい)の水滴が一粒一粒落ちて、水が一杯になるように…。
○正しい事を、コツコツと積み上げなければ、どうして、屯難の時を脱することができようか。できるはずがない。
○水難の象(かたち)がある。死に至る可能性すらある。
○社会的身分が低くて、身分の高い人から遠ざけられる。
○時が至らないのに前に進もうとする人は、邪心を抱いて、悪知恵を働かせて言葉を飾り、他人を騙そうとする。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治二十六年十二月、某貴顕ノ氣運ヲ筮シテ屯ノ初爻ヲ得タリ、
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。