毎日連載! 易経や易占いに関する情報を毎日アップしています。

期間限定「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 水雷屯

三 水雷屯 ・|・ ・・|

屯、元亨。利貞。勿用有攸往。利建侯。
□屯(ちゆん)は元(おお)いに亨(とお)りて貞(ただ)しきに利(よろ)し。往(ゆ)く攸(ところ)有(あ)るに用(もち)ふる勿(なか)れ、侯(きみ)を建(た)つるに利(よろ)し。
 屯(ちゆん)は万物創世(産みの苦しみ)の時。創世・創業には苦しみが伴う。苦しみに耐えてこそ、物事が始まり、すらすら成長して行く。正しく天の道を守るがよい。
 妄(みだ)りに動いてはならない。泰(たい)然(ぜん)と構えて全体を見渡し、将来を切り開いて行く人物を抜(ばつ)擢(てき)任(にん)用(よう)するがよい。
彖曰、屯剛柔始交而難生、動乎険中。大亨貞、雷雨動満盈。天造草昧、宜建侯而不寧。
□屯は剛柔始めて交(まじ)わりて難(なん)生(しよう)じ、険(けん)中(ちゆう)に動く。大いに亨(とお)りて貞なるは、雷雨の動き満(まん)盈(えい)すればなり。天(てん)造(ぞう)草(そう)昧(まい)、宜しく侯(きみ)を建(た)てて寧(やす)からず。
 屯(ちゆん)の時は、乾(剛)坤(柔)始めて交わり震(長男)を生み、震は坎(かん)に塞(ふさ)がれ万物創世の生みの苦しみに遭(そう)遇(ぐう)する。すなわち困難な状況(坎)の中を進む(震)のである。
 苦しみに耐えてこそ、物事が始まり、すらすら成長して行く。正しく天の道を守るがよい。雷雨(下卦震と上卦坎の性質)の震動が漸(ぜん)次(じ)に満ちて(雷水解の時に転じて)、やがて万物が誕生する。
 天の時(じ)運(うん)を見通すことは難しい。泰然と構えて全体を見渡し、将来を切り開いて行く人物を抜擢任用しても、しばらくは、生みの苦しみが続くであろう。
象曰、雲雷屯。君子以経綸。
□雲(うん)雷(らい)は屯(ちゆん)なり。君子以(もつ)て経(けい)綸(りん)す。
 雷(震)が轟(とどろ)き渡(わた)り、雲(坎)が湧き上がるが、未(いま)だ恵みの雨に到(いた)らないのが屯(ちゆん)の形。君子は、恵みの雨を降らせるために、縦糸と横糸(時間と空間)を紡(つむ)ぐのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此卦ニ遇フトキハ譬ヘバ其國文明を以テ稱セラレ、其人亦文明ヲ以て自ラ居ルモノト雖モ、一時ノ困難ニ迫リ、或ハ自己ノ利害ヲ慮ルガ爲ニ、已ムコトヲ得ズシテ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)この卦が出たら、その国は文明的だと言われ、その人は文明人だと思っている。だが、一時的に困難が迫り、あるいは、自分の利害を心配して、やむを得ずに、蒙昧で野蛮な事を行なうことになる。それゆえ、占ってこの卦が出たら猛省すべきである。自分が行動しようとしても、相手が拒み邪魔する。動くに動けないので悶々とする。強引に行動すれば、必ず災難に遭遇し、険阻艱難に陥る。ゆったりと構えて、時運が到来するのを待って、行動することが肝要である。または、社会的な地位が高く、智恵と人德を具えた人物を探し、その人物に従い、心から尊敬して、時運が到来するのを待つ。あるいは、世事に明るく、将来を見通せる人物を探し、その人物の下で働き、人德を磨きながら、業を修める。そうすれば、数年後に、自分の氣運が上向いて、志を実現するチャンスが到来する。
○君主(社長、上司)はいるが、臣下(従業員、部下)がいないので、人德や行いが秀でていても、役に立たない。
○弟が家督を継いで、兄が弟に養われる時。
○地位が低い人は、地位の高い人から引き立てられるのを待っていると出世できる。
○地位が高い人は、地位の低い人の中から優秀な人を抜擢し、仕事を任せればうまく行く。
○こんがらがった糸を苦労して解こうとしている時。急いで事を為そうとすれば、もっとこんがらがって苦しむ。ゆったりと構えていれば徐々に良くなっていく。以上のことから、今遭遇している険阻艱難は、必ず将来は解決に向かう。
○何事もゆったりと対処すべきである。急いではならない。
○物価は下落する。商業活動も不景気である。
○何かを為し遂げようとすれば、誰かに抑制される。
○旅に出ても、なにも良いことは起こらない。
屯 初九 ・|・ ・・|

初九、磐桓。利居貞。利建侯。
□初九、磐(はん)桓(かん)す。貞(てい)に居(お)るに利(よろ)し。建(た)てられて侯(こう)たるに利(よろ)し。
 身分卑(いや)しく、時到(いた)らぬため、軽率に飛び出してはならない。泰然と構えて、道を守るがよい。抜擢(ばつてき)任用されたら、将来を切り開いて行くがよい。
象曰、雖磐桓、志行正也。以貴下賤、大得民也。
□磐(はん)桓(かん)すと雖(いえど)も、志正しきを行うなり。貴(たつとき)を以て賤(いや)しきに下(くだ)る、大いに民(たみ)を得るなり。
 志は屯(ちゆん)難(なん)を切り開くこと。大いに世間の喝采を浴びて、民は心服する。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻即チ才德兼備シテ大任ニ堪ユル者トス、然レドモ今や屯難ノ時ニ際スルヲ以テ内ハ即チ正道ヲ行ヒテ固ク守リ、外ハ則チ人望ヲ収メテ時機ヲ待ツベシ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)才能と人德を具えているから、大きな任務を任せられる。だが、今は屯難の時だから、自分に対しては(内面的には)、正しい道を履み行ない、世間に対しては(外面的には)、信用・信頼関係を築き上げ、時が至るのを待つべきである。
 事を為し遂げるためには、世間の人望を得るしかない。人望があれば、社会的弱者や愚鈍な人々からも信頼される。普通の人は、ただ社会的な地位を得ることを望み、地位を捨ててまで、信頼関係を大切にしない。智恵を身に付けても、情に欠ける。
 陽は尊ぶが、陰には見向きもしないということである。このような人が、世を治めて、民を率いることなど、できるはずがない。
 リーダーたる者、今は屯難の時であることを、よくよく考えて、さまざまな配慮をしなければならない。
 天命を授かって、国家の発展に寄与すべく、己を虚しくして身を修め、心から民が幸せになることを願えば、やがて、社会的な大事業を成し遂げることができる。正しい道をコツコツと履み行なうことを怠り、時が至る前に大事業を成し遂げようとすれば、功を上げるどころか、人災を招き寄せることになる。
○時が至るのを待って、成長を図る(伸ばす)べきである。あらゆる事を長い目で見るべきである。
○険阻艱難に遭遇した時は、あせって進んではならない。正しい事をコツコツと積み上げ、時が至るのを待つべきである。盥(たらい)の水滴が一粒一粒落ちて、水が一杯になるように…。
○正しい事を、コツコツと積み上げなければ、どうして、屯難の時を脱することができようか。できるはずがない。
○水難の象(かたち)がある。死に至る可能性すらある。
○社会的身分が低くて、身分の高い人から遠ざけられる。
○時が至らないのに前に進もうとする人は、邪心を抱いて、悪知恵を働かせて言葉を飾り、他人を騙そうとする。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治二十六年十二月、某貴顕ノ氣運ヲ筮シテ屯ノ初爻ヲ得タリ、
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治二十六年十二月、ある社会的地位の高い人(貴人)の氣運を占筮したところ、屯の初爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 屯の卦は、雷が水中で動いている時、冬から春に向かっている季節。雷が地の下から出ていこうとするけれども、地上の氷はまだ解けていないので、氷が溶けるのを待っている。
それゆえ、名付けて「屯」と云う。屯は艱難辛苦に遭遇して悩む。冬から春に至って、氷が溶けて水分が蒸発し、雨が降るようになれば、雷は時を得て地上に現れ、雨と和合して慈雨を施し、万物は発育して、造化の功を成す。
 このことを「元(おお)いに亨(とお)る」と云う。
 この時に至るまでは、艱難辛苦に耐え、正しい事をコツコツと積み上げるがよい。もし、時が至る前に無闇に動けば、必ず災難を招き寄せる。このことを戒めて「貞(ただ)しきに利(よろ)し。往(ゆ)く攸(ところ)有(あ)るに用(もち)ふる勿(なか)れ。正しく天の道を守るがよい。妄(みだ)りに動いてはならない。」と云う。
 この卦は、草が地上に芽を出そうとしている時。社会的地位が高い者が、地位が低い者の志を高く評価して抜擢任用すれば、屯の艱難辛苦を救うことができる。社会的地位の低い者は、高い者の地位を脅かすことなく、上役の命令を固く守って、国家が安定することを祈るべきである。
 このことを「侯(きみ)を建(た)つるに利(よろ)し。泰(たい)然(ぜん)と構えて全体を見渡し、将来を切り開いて行く人物を抜擢(ばつてき)任(にん)用(よう)するがよい」と云う。
 占ってこの卦が出た時は、相手と接し、自分の意思を伝えようとするが、なかなか意思が伝わらない。そこで、相手を疑い嫌い、屯の艱難辛苦の氣運に陥って、困難が自分の前に立ち塞がる。
 商売人は、営業活動をすればするほど、損失が生ずる。役人は、職務を全うしようとすればするほど、周りの人から誹謗中傷される。リーダー(指導者)は、リーダーとしての役割を全うしようとすればするほど、逆に困難な立場に陥る。
 以上は、全て下卦震が動くことによって、上卦坎の険難に陥るという卦象に由る。ならば、この時に対処するには、無闇に動いたり進んだりすることを止め、言葉が激しくならないように慎み、正しいことをコツコツと積み上げて氣運が至るのを待つべきである。
 このようであれば、やがては氣運が循環して、同志が現れ、意氣投合して、終には志を成し遂げる。
 今回は、ある貴人の氣運を占って、この卦爻を得たのであるが、貴人は維新を推進した中心的人物の一人で、国家の財政基盤を構築し、西欧列強に囲まれた厳しい環境下で、財政が不足することを回避して、富国強兵の基礎を固めた人物である。
 その役割と尽力は誠に偉大であり、西欧列強と比べて、恥ずかしくない国に日本を育て上げた人物の一人である。
 だが、諺(ことわざ)に「功成る者は堕ち、名盛んなる者は辱められる」と云うように、貴人も政府内で意見が対立して、その立場を追われた。
 しかし、貴人は内心、国家を思う気持ちが強く、憂えること、憤懣やるかたなく、役所を辞めて政党を立ち上げ、大いに国家に尽くそうとする。だが、今回の占いで、どうすべきか推察すると、「貞(ただ)しきに利(よろ)し。往(ゆ)く攸(ところ)有(あ)るに用(もち)ふる勿(なか)れ。正しく天の道を守るがよい。妄(みだ)りに動いてはならない」という時だから、例え国家のために尽くそうとしても、無闇に進めば、必ず悪しき被害を蒙る。
 よって、安易に事を為すべきではない。
 貴人が立ち上げた政党に属する人の中には、まだ職が見つからない人も少なくない。国家のために尽くすどころか、自分のことを優先して、私利私欲で善からぬことを企てる人がいる。それは、六二と六三で、互体(二三四)坤に潜んでいる「私利私欲に囚われた」人々である。
 貴人は賢明な人だから、このような小人と共に妄動することはないと信じているが、今は屯難の時ゆえ、より忠誠の思いを抱き、正しい心を固く守り、無闇に妄動しようとする心が、万が一にも生じないよう、自戒すべきである。
 臣民が国家に尽くすのは、志を貫こうと、前に突き進むだけではない。時が至らなくても、不平や不満を抱かず、じっと耐え、泰然と構えて、時が至るのを待つのも、国家に忠義を尽くすことである。
 屯の初九は、陽爻陽位ゆえ、才能があって志が強いが、今は屯難の世の中なので、今は大衆の一員として埋もれている。だが、やがて抜擢任用されて、天下を泰平に導く役割を担っている。今は上卦坎水の険難が待ち構えているから、無闇に進んで行ってはならない。
今、進んで行けば、必ず険阻艱難の落とし穴に陥る。
 だから、「磐(はん)桓(かん)す。身分卑(いや)しく、時到(いた)らぬため、軽率に飛び出してはならない」と云う。
「磐(はん)桓(かん)」とは、大きな盤(ばん)石(じやく)のように、石が柱になって、じっと動かないことである。
 また、「貞(てい)に居(お)るに利(よろ)し。泰然と構えて、道を守るがよい」とは、「今は大衆の底辺に居て、正しい道を固く守り、志を貫いて、行動は慎み、静かにその時が至るのを待つべきである」と、云っているのである。
 やがて、氣運は循環し、冬から春に移行して、固い氷が氷解し、雷雨が起こり、草木が芽を出して、終にはその時に至る。
 そうなると、屯難の時は去って、初九は九五に抜擢任用される。その時は、遠慮して辞退することなく、毅然とその命令に応じ、大いにその才德を発揮して、国家を泰平に導く端緒となるべく活動すべし。
 このことを、「建(た)てられて侯(こう)たるに利(よろ)し。抜擢(ばつてき)任用されたら、将来を切り開いて行くがよい」と云う。
 貴人の氣運は以上のようである。進もうとする気持ちを抑えて、正しい道を固く守り、やがて、国家のために尽くす時が至るのを期して待つべきである。
 それでも、進もうとする気持ちを抑えきれず、時流に逆らい、熟慮することなく、感情のまま、貴人の立ち上げた政党に属する人々を扇動するようであれば、国家に尽くそうとする志を遂げられないだけでなく、自分や周囲の人々を不幸に陥れることになる。
 もし貴人が、この易断を信用しないようであれば、わたしは次のように説得する。
「先に出版した高島易斷の占例として、普仏戦争(一八七〇~一八七一にかけて行なわれたフランスとプロイセン王国の戦争)の勝敗を占ったところ、屯の初爻を得たので、フランス(ナポレオン三世)の敗北を予測して、的中したことを、肝に銘ずるべきである」と。