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期間限定「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 雷地豫

十六 雷地豫 ・・| ・・・

豫、利建侯行師。
□豫(よ)は、侯(きみ)を建て師(いくさ)を行(や)るに利し。
 豫は悦び楽しむ時。一陽九四に五陰が順い動く。地中(坤)に潜蔵していた陽気(震)が、雷動で地上に出た。草木は芽を出し、花が咲き、天地万物悦楽する。諸侯を建て兵を動かすがよい。諸侯は民を悦楽させ、兵は暴逆を討伐する。
彖曰、豫剛應而志行。順以動豫。豫順以動。故天地如之、而況建侯行師乎。天地以順動、故日月不過而四時不忒。聖人以順動。則刑罰清而民服。豫之時義、大矣哉。
□豫は剛応ぜられて志行なわる。順以て動くは豫なり。豫は順以て動く。故に天地も之(かく)の如し、而(しか)るを況(いわ)んや侯を建て師を行るをや。天地は順以て動く、故に日月過たずして四時忒(たが)わず。聖人順以て動く。則ち刑罰清くして民服す。豫の時義大なる哉(かな)。
 豫は一陽九四に五陰が応じて九四の志が成し遂げられる。天地の道に順い動くのが豫の時。「順以て動く」ことが豫の性質。天地が生成発展するのは順以て動くからである。諸侯を建て兵を動かすには、順以て動く性質に拠らねばならぬ。天地は順以て動き生成発展する。それゆえ日月の運行を過つことなく、四季の循環を違うことはない。聖人も順以て動き政治を施す。清く正しく刑罰を執行すれば民は帰服する。豫の時の意義は何と偉大であろうか。
象曰、雷出地奮豫。先王以作樂崇德、殷薦之上帝、以配祖考。
□雷の地を出でて奮(ふる)うは豫なり。先王以て楽を作り德を崇び、之を上帝に殷(いん)薦(せん)し、以て祖(そ)考(こう)を配す。
 地中に潜蔵していた陽気が雷動により地上に奮い出て雷鳴轟くのが豫の形。
 昔の王は、音楽を奏(かな)でて德を尊(そん)崇(すう)し、天の神を祭る際に祖先を合(ごう)祀(し)したのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)萬事意ノ如ク中心和樂、將ニ漸ク怠ヲ生ゼントスルノ時トス、故ニ虚飾ヲ愼ミ、逸游ヲ戒メ、安ニ居テ危ヲ思ヒ、富貴ニ處リテ貧賤ヲ忘レザルノ志行ナカル可カラズ、此ノ如クスルトキハ、尚ホ此運ヲ保持スルコトヲ得ベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)万事、自分が思っている通りになり、心の思うままに何事も調和する。一つ一つのことが楽しくて仕方がない。そのような時だから、知らず知らずのうちに、怠る気持ちが心の中に芽生えて、少しずつ、少しずつ、崩れかねない時。それゆえ、外面を飾ることを慎み、怠けて遊ぶことがないように戒め、安定した状態の中に居ても、常にリスクに備え、富貴の立場に在っても、貧賤の立場に在った頃を忘れず、常に己の志を胸に抱いて、志に沿った言行を心がけなければならない。以上のようであれば、吉運を保つことができる。
○運氣が盛んな時。自分より地位が高い人から目をかけられ、権威に与る(権威の恩恵を受ける)時である。
○成功することを急がず、物事の順序をきちんと守って、事業を行なえば(勤務すれば)、大成功する。
○自分が正しい事を実行しようとしている時に、逆らおうとする人物が出てきたら、直ちに、力で征服してもよい(征服すべき)時。
○家の主(組織のトップ)は弱々しいけれども、良き妻(優れた側近)が補佐してくれるので、よく治めることができる時。
○才能ある人物を抜擢任用、大事業を一任し、よい結果が得られる時。
○規則を定め組織のルールを確立して、将来揉め事が起きないよう事前に準備しておく時。
○発達する予兆が現われる時。
○お祭り事(祭祀)に関して占った時は吉。
○怠惰が原因となり、事業が廃止に追い込まれる予兆が現われる。
○遊び事や楽しみ事に心を奪われて、事業を怠る。
○遊戯(遊び)や鳴り物(どんちゃん騒ぎ)など、ろくでもないことを好きになる時。
○怠けて豫楽に溺れかねない時。
○盗賊に備えなければならない(犯罪に巻き込まれることを事前に防止すべき)時。
○物価が上がり商品がドンドン流通して、資金的にゆとりができる。

豫 初六 ・・| ・・・

初六。鳴豫。凶。
□初六。鳴(めい)豫(よ))す。凶。
 才德乏しく卑しい身分に在りながら、衆陰率いる豫の主(あるじ)九四に寵(ちよう)愛(あい)され、悦楽の余り声(こわ)色(いろ)を発して人に誇る。自ら破滅に向うのである。
象曰、初六鳴豫、志窮凶也。
□初六の鳴豫は、志窮まりて凶なる也。
 声色を発して人に誇る。志が脆弱ゆえ悦楽に耽り、自ら破滅するのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)卓識アル朋友ノ時ヲ得テ立身セルヲ見、己レ短才ニシテ、世用ニ足ラザルヲモ知ラズ、彼ノ人立身セバ、我ニ大ナル幸アルベシト空想シ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)見識の優れた朋友がチャンスを掴んで、立身出世した姿を見て、自分は才能が乏しく世間から必要とされる存在ではないことを知らず、自分もチャンスを掴めば立身出世して幸福になると空想する。空想して勝手に喜び他人に自慢するが、立身出世できずに、困窮する。
○確乎不抜の志を心に抱いて、自分の実力で世に立つことを心がけるべきである。そのようであれば、応爻の九四に目をかけられて立身出世することもできる。
○地位の高い人から目をかけられ、調子に乗って、私利私欲を貪(むさぶ)ろうとする。
○他の人から助けられる自分のあり方に甘えて、本来やるべき仕事を怠ってしまう。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)余一日横濱ニ赴キ、親友某氏ヲ訪フ、會先客アリ、余ニ禮シテ一占ヲ求ム、乃チ筮シテ、豫ノ初爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)親友の某氏を訪問したら、先客がいた。その先客から占ってほしいと頼まれたので、筮したところ豫の初爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 豫の卦は、九四の一陽が時と位を得て、堂々とした権威を具えているから、上下五陰が九四に従う時である。今回占って初爻が出た。初爻は四爻と陰陽相応じる関係であるから、初爻は四爻に大いに目をかけられる。しかし貴方は、四爻に目をかけられていることをよいことに、四爻の権威を、自分に権威があると勘違いして、他人を侮り、自分勝手に振る舞うところがある。このことを「鳴豫す。凶。才德乏しく卑しい身分に在りながら、衆陰率いる豫の主九四に寵愛され、悦楽の余り声色を発して人に誇る。自ら破滅に向うのである」と云う。以上のようであるから、よくよく自分の行ないを省みて、慎まなければならないと、易断した。すると、先客は立腹して、帰ってしまった。
 親友の某氏は、先客が帰った後、次のように言った。
「彼は、自分の娘をある貴人の愛人として嫁がせ、時々その貴人宅に出入りしており、来客があると、貴人の側近のような顔をしてやりたい放題に振る舞い、貴人の権威を利用して、私利私欲を貪っている。君の易断はそのことをズバリと言い当てたので、彼は恥ずかしさのあまり逃げ帰ったのである」。

豫 六二 ・・| ・・・

六二。介于石。不終日。貞吉。
□六二。石に介す。日を終えず。貞にして吉。
 柔順中正で応比なく石のように節操を守る。豫楽に耽溺してはならぬと自戒する。兆しを察して正邪を見抜き、日を終える前に速やかに対処する。最後まで道を守って幸を得る。
象曰、不終日、貞吉、以中正也。
□日を終えず、貞にして吉とは、中正なるを以て也。
 最後まで道を守って幸を得る。中庸の德を備えているのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)自身ノ心敦ク他人ノ榮ヲ意トセズ、自立シテ能ク職務ニ勉勵スレバ、盛運ニ赴クノ時トス、然レドモ亦放逸ニ流レントスルノ恐アリ、愼マザル可ラズ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)意志を強く持ち、他人に依存せず、自立して仕事を全うすれば、盛運を招き寄せる。しかし、意志がグズグズになる可能性もあるので慎まなければならない。
○確乎不抜の志を抱き、チャンスを見きわめ、勇気を持って前進していく時。
○裕福になっても驕り高ぶることなく、貧乏になっても節操を失って貪ることなく、素行自得するべき時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治二十二年、某局ノ属官某氏來リ謂テ曰ク、余ハ足下ノ知ラルル如ク、明治四年、本局創設ノ始ヨリ、一等属ニ奉職シ爾來十八年間、(中略)足下試ミニ余ガ後來ノ運氣如何ヲ占ヘト、乃チ筮シテ、豫ノ第二爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治二十二年、ある役所のある役人がやって来て、次のような話をした。
「わたしは、明治四年の役所創設の時から働き始めて、以来十八年にわたって、苦労を重ねながら事務官として務めてきた。部下はどんどん出世して、わたしの上司となった部下が沢山いる。それらの部下は、とくに優れているわけでもないのに、理不尽に出世した、としか見えない。わたしは心中不快だが、辞職しても他に就職するあてもない。このまま出世できなくても、不満の気持ちを断ち切り、希望を失うことなく、人生こんなものよと割り切り、職務に中りたいと思っている。わたしの今後の運勢を占ってもらいたい」。
 そこで筮したところ、豫の二爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 豫の卦は、九四の一陽が権威を独り占めしている時である。
 今回占って二爻が出た。あなたは九四の長官(上司)と応ずる関係ではなく比する関係でもない。あなたと上司とは仕事上の関係だけで、それ以上の関係ではない。
 九四の長官と応比の関係にある人々(初六、六三、上六)は、長官に応じていることを皆喜ばしく思っているが、あなた(六二)は、中正の人徳を具えているから、何よりも仕事を優先して節操は甚だ堅固である。それゆえ、「石に介す。柔順中正で応比なく、石のように節操を守る。豫楽に耽溺してはならぬと自戒する。」と云う。「介す」とは、気概や節操という意味である。心安んずることはできないが、速やかに気概や節操を失うことを回避する。それゆえ、「日を終えず。貞にして吉。兆しを察して正邪を見抜き、日を終える前に速やかに対処する。最後まで道を守って幸を得る」と云う。
 今から三年後(二爻今年、三爻来年、四爻再来年)には、あなたの氣運は変じて四爻となり、必ず出世すると易断した。
 明治二十四年(三年後)、この役人は出世したのである。
豫 六三 ・・| ・・・

六三。旰豫。悔。遅有悔。
□六三。旰(く)豫(よ)す。悔(く)ゆること遅ければ悔い有り。
 才德乏しいのにやり過ぎる六三は、衆陰を率いる九四を仰ぎ視(み)て、媚び諂い豫楽に耽溺する。禍に至ってから後悔しても、取返しがつかない。
象曰、旰豫有悔、位不當也。
□旰(く)豫(よ)す悔い有りとは、位当らざる也。
 後悔しても、取返しがつかない。才德乏しい小人が危い地位に居るのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)我依頼スル所ノ者應ゼズシテ、詮ナキ事ニ心ヲ勞シ、後悔スル、我ガ器量ヲ省ミテ、分外ノ望ヲ願フ可ラズ、早ク改心スレバ吉ナリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)依頼しようとした人が、依頼に応じてくれないので、どうでもよいことに、心を痛めて後悔する。自分の器量を省みて、器量を大きく超えた(分外の)夢や希望を抱いてはならない。自己過信していることに早く気付き、心を改めれば吉運を招き寄せる。
○自分の身分や経済状況を省みずに贅沢することを戒めて、生活費を倹約すべき時である。
○幸せに遭遇することを望んでも叶わない時だと覚悟して地道にコツコツと本業に徹するべき時である。
○人に媚び諂ったり、権力を持っている人に付き従うことによって快楽を貪(むさぼ)ろうとする時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)某縣ノ官吏、予ガ友人某ノ紹介ニ依リ、來テ其運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、豫ノ第三爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある県の役人が、わたしの友人の紹介でやって来て、運氣を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ、豫の三爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 豫の卦は、九四の一陽が時を得て、権威を独り占めしている。上下の五陰は九四に従うしかない時である。今回、貴方の運氣を占って六三が出た。
 貴方は九四と陰陽比しており、九四の長官(上司)と意気投合する関係にある。だが、他の人から、この関係を見ると、貴方が長官に媚び諂って、長官の権威を利用して己の私利私欲を貪(むさぼ)ろうとしているように見える。
 よって、予(あらかじ)め人から疑われないように注意して、決して長官の権威を利用して私利私欲を貪ろうとしてはならない。
 よくよく自制して、後で後悔しないようにすべきであると易断した。
 後日、人(ひと)伝(づて)にその後の経(いき)緯(さつ)を聞くと、この役人は易断に従わず長官が他県に転任となった時、長官に付き従い身を立てることを望んだ(長官に媚び諂った)が、結局叶わなかったそうである。その媚び諂う態度が同僚の感情を損(そこ)ねて、遂に辞職に追い込まれたという。

豫 九四 ・・| ・・・

九四。由豫。大有得。勿疑。朋盍簪。
□九四。由(ゆう)豫(よ)す。大いに得る有り。疑う勿(なか)れ。朋(とも)盍(あ)い簪(あつ)まる。
 才德を具えた豫楽の主(あるじ)九四は、衆陰を率いて(初六・六三を改心させて)天下を治める。上下万民大いに豫楽を得る。天子の補佐役として嫉妬と疑惑が蠢(うごめ)く危い地位に在るが、決して人を疑ってはならない。
 至誠を尽くせば同志が集(つど)い、豫(よ)楽(らく)の時を助け合う。
象曰、由豫、大有得、志大行也。
□由(ゆう)豫(よ)す、大いに得る有りとは、志大いに行われる也。
 上下万民大いに豫(よ)楽(らく)を得る。豫(よ)楽(らく)を施そうとする志が成し遂げられたのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)陽剛ノ才ヲ以テ、柔中ノ君ニ仕ヘ、衆望ヲ下ニ得テ、方ニ危疑ノ地位ニ居ル、然レドモ其志名利ト威權トニ在ラズシテ、衆人ヲ豫樂ニ致スニ在ルトキハ、何ノ嫌カ之アラン、任ニ此爻ニ當ル者、區々ノ私情ヲ以テ、大事ヲ誤ルコト勿レ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)陽剛の才能を具えて、柔順で中庸の徳を具えた君主に仕え、大勢の民衆から信望を得ている。周りから嫉(ねた)まれて危険な地位に居る。名誉や権力を手に入れようとするような野心がなく、大衆に楽しい社会を享受してもらいたいという志を持っていれば、周りの人々から嫌われない。占ってこの爻が出たら、己の利益のために、大事業を成し遂げようとしてはならない。
○時の人として、あらゆる負担を担う時でもある。
○長年の苦労が報われて、大いに喜びを得られる時である。
○周りの人々(親戚や朋友)とよく交流して、何か事を為そうとした時に、信望を得て応援を受けられる時である。
○地位の高い人(上位の人)や部下・お客様(下位の人)から支援されて、事に臨む時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)一日縉紳某來リテ、某貴顕ノ運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、豫ノ第四爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある日、ある紳士がやって来て、ある貴人の運氣を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ、豫の四爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 豫の卦は、春雷が轟き渡り、大地が大きく揺れ動き、これまで鬱(うつ)血(けつ)していたモヤモヤが一気に解き放たれる時。九四の一陽は君主の側近として文武を兼ね具えた人格者。六五の右腕として、権力と権威を独占し、衆陰に慕われ尊崇される存在。
 天下国家のために命をかけ、至誠の心で仕事に取り組めば、衆陰は忠信を感じて、競って九四を支援するようになる。このようであれば時の人として活躍することができる。
 これに反して、ほんの少しでも己の利益を謀り、至誠の心を失えば、あっという間に仕事に綻(ほころ)びが生じて失脚する。
 以上のことから、いつも心を洗い清めて天下国家に尽くせば吉運を招き寄せる。今は人々の心があなたに惹き付けられる時だから、「由(ゆう)豫(よ)す。大いに得る有り。才德を具えた豫(よ)楽(らく)の主(あるじ)九四は、衆陰を率(ひき)いて(初六・六三を改心させて)天下を治める。上下万民大いに豫(よ)楽(らく)を得る」と云い、また「朋(とも)盍(あ)い簪(あつ)まる。至誠を尽くせば同志が集(つど)い、豫(よ)楽(らく)の時を助け合う」と云う。
「すなわち、天下国家のために命を捧げて、少しも疑ってはならない。
 文武を兼ね具えた人格者であることを誇り、ほんの少しでも己の利益を謀るようなことがあれば失脚する」と易断した。この紳士は、易断に感動して帰っていった。
 後日、ある貴人は多くの人々から尊崇される人格者になったと云う。
豫 六五 ・・| ・・・

六五。貞疾。恆不死。
□六五。貞にして疾(や)む。恒にして死せず。
 九四に制御されて、豫楽に耽溺できず、慢性化した憂いがある。常に九四に制御されるが、君主の位を失うことはない。
象曰、六五貞疾、乘剛也。恆不死、中未亡也。
□六五の貞にして疾(や)むは、剛に乗ずれば也。恒にして死せざるは、中未だ亡びざれば也。
 慢性化した憂いが常にある。九四の剛に乗ずるからである。
 君主の位を失わない。中庸の德を失わないのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)身尊シト雖モ、常ニ他人ノ爲メニ、牽掣セラレ、萬事意ノ如クナル能ハズ、鬱々樂マズ、終ニ病ヲ得ルノ占トス、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)位は高い(トップリーダー)が、常に側近(ナンバーツー)の力に頼っており、何事も自分の思い通りにはならない。慢性化した憂いがあり楽しむことができない。終には発病してしまう。側近(ナンバーツー)に支援してもらい、共に事を成し遂げようとすれば志は実現する。トップの位に在るが、時運は側近(九四)に握られている。
○喜んで事を成し遂げようとするが、喜びに溺れて遂には失墜する。
○部下の権威に圧倒されて、常に慢性化した憂いを抱く。
○自分の意見を通そうとせずに、賢い人々の意見を務めて用いる。
○お酒に溺れて、病気になってしまいかねない時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)余ガ相識ノ富豪某其運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、豫ノ第五爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)わたしがよく知っているある富豪から、自分の氣運を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ、豫の五爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 豫の卦は、天下泰平で豊かで楽しい時。これを人に当て嵌めれば、家の資産が裕福な時である。九四の一陽が権威を独り占めして、上下の五陰は、九四に応じないわけにはいかないのである。これを一家(商店)に当て嵌めれば、支配人(番頭)が権力を握っており、主人は形式的にトップに座っている(権力が及ばない)という象(かたち)である。
 今、貴方は国内で指折りの大富豪(大商店)であるが、長年続いている家法に従って、支店の経営は支配人に任せており、主人といえども口を出すことはできない。だから、貴方は事業の豫楽を味わい楽しみに耽ることができない。その状態が慢性化しているので、いつもスッキリとしないモヤモヤした心境にある。
 けれども、先祖代々続いている家法に従わないわけにはいかない。家の評判を落とさず、代々永続することを目的に続いている家だからである。今は黙ってジーッと忍耐することが、自分の役割だと観念して、支店のことは各支配人に任せるべきだと易断した。
 このことを「貞にして疾(や)む。恒にして死せず。九四に制御されて、豫楽に耽溺できず、慢性化した憂いがある。常に九四に制御されるが、君主の位を失うことはない」と云う。
(易断の結果は書いてない。)
豫 上六
上六。冥豫。成有渝、无咎。
□上六。冥(めい)豫(よ)す。成れども渝(かわ)る有れば、咎无し。
 豫楽の極点で豫楽に耽溺する。豫楽が極まれば悲哀に変ずる天理を知らない愚か者。
己の非を覚(さと)って、心を入れ替えれば、咎められない。
象曰、冥豫在上。何可長也。
□冥豫して上に在り。何ぞ長かる可けんや。
 天理を知らない愚か者が頂点に居る。どうして豫楽を長く続けられようか…。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)悦樂ニ耽リ酒色ニ昏迷シテ止マザレバ、死ニ至ルベシ、然レドモ、能ク酒色ヲ節シ、淫慾ヲ愼マバ、(中略)盛運ヲ致スベキノ望アリ、宜シク速ニ過ヲ改ムベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)悦楽に耽り、酒色に溺れ、恥じることがなければ、終には死に至る。酒色を節制して、淫欲を慎む心があれば、心身共に健全を保つことができる。死に至ることはない。傾きかけた家は、再び繁栄するようになって、盛運を招き寄せる望みがある。
速やかに、今犯している過ちに気付き、改めるべきである。
○放(ほう)蕩(とう)を重ねて落ちぶれ、後悔する時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人某商來リ謂テ曰ク、現今商事繁忙ノ時ニ際シ、機會ヲ見テ着手セント欲スル一事件アリ、因テ其成否如何ヲ占ハンコトヲ請フト、乃チ筮シテ、豫ノ上爻ヲ得タリ…
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)友人のある商人がやって来て次のように言った。
「現在は、商売が大変忙しいが、機会を窺って是非取り組んでみたい一つの事業がある。そこで、その成否を占ってほしい」。
 そこで筮したところ、豫の上爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 冥豫とは、冥(くら)くして豫(よろこ)ぶという意味である。すなわち、中身のない空っぽな空虚なことに期待して、馬鹿のように悦び勇んでいる者である。よくよく考え、貴方が取り組みたいと思っている事業を取り止めて、堅実に今の商売を続けるべきである。
 この(事業を取り止め、堅実に商売を続ける)ことは、貴方にとって、一番大事なことだから、固く慎みの心を保持して、自戒すべきであると易断した。
 商人は、以上の易断に、大いに感じ入り、感謝して帰っていった。
 その後、聞くところによると、その商人は取り組みたいと思っていた事業を取り止め、堅実な商売を続けたので、商売が傾くこともなく、大きな失敗は犯さなかったと云う。