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期間限定「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 天水訟

2022年5月11日

六 天水訟 ||| ・|・

訟、有孚窒。惕中吉、終凶。利見大人。不利渉大川。
□訟(しよう)は、孚(まこと)有りて窒(ふさ)がる。惕(おそ)れて中すれば吉、終れば凶。大(たい)人(じん)を見るに利し。大(たい)川(せん)を渉(わた)るに利しからず。
 訟は乾(剛健)と坎(険難)が反目して争い事や訴訟が起きる。誠の德が充実しているが、穴の中に陥って閉塞している。戒め懼(おそ)れて忍耐し、適切な時に訴訟を取り下げるがよい。訴訟を続けても解決しない。剛健中正の天子九五を大人として仰ぎ、解決してもらうがよい。危険を犯してはならない。
彖曰、訟上剛下険。険而健訟。訟有孚窒、惕中吉、剛來而得中也。終凶、訟不可成也。利見大人、尚中正也。不利渉大川、入于淵也。
□訟は上(うえ)剛にして下(した)険なり。険にして健なるは訟なり。訟は孚有りて窒がる、惕れて中すれば吉とは、剛來りて中を得ればなり。終れば凶とは、訟は成す可からざればなり。大人を見るに利しとは、中正を尚ぶなり。大川を渉るに利しからずとは、淵に入るなり。
 上卦乾が剛健、下卦坎が険難。内(下)は陰険な性質で外(上)は剛健な性質ゆえ訴訟が起こる。戒め懼れ忍耐し、適切な時に訴訟を取り下げるがよい。剛健九二が下卦に居て中庸の德を得ている。訴訟を続けても解決しない。本来、訴訟は起こすべきでない。剛健中正の天子九五を大人として仰ぎ、解決してもらうがよい。九五は中正の德を備えているゆえ人々から尚ばれている。危険を犯してはならない。波風荒い大川を舟で渉れば顚覆して憂患の淵に沈むこと必至である。
象曰、天與水違行訟。君子以作事謀始。
□天と水と違(たが)い行くは訟なり。君子以て事を作(な)すに始めを謀(はか))る。
 上卦天は上り、下卦水は下る。交わることなく行き違って訴訟が起こるのが訟の形。
 君子は、訴訟の原因が事始めの行き違いにあることに鑑みて、事始めの段階で、適切に対処して、訴訟が起こらぬよう注意する。
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)此卦ヲ得ルトキハ、朋友ノ間ニ争論アリト雖モ思慮ヲ大ニシテ小事ノ爲メニ争ヲ起スベカラズ、凡ソ此卦ハ思慮ノ相違言語ノ齟齬多キノ時トス、戒愼注意スベシ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)この卦を得た時は、朋友の間に論争があっても、小さな事で争わないようにすべきである。考え方の違いや発する言葉が誤解されることが多い。よく自戒して慎みを忘れないようにすべきである。
○相手との間に感情の行き違いがあって争い事を起こす時。
○見込み違いで、戦いに敗れる時。
○社会的地位の高い人と気まずい関係になる時。
○理屈は正しいのに受け容れない(受け容れられない)時。
○訟の時は氣運がもっとも衰える時である。何事も慎んで自ら災害を招いてはならない。己の智恵や考えを過信して実行すれば、自分だけでなく周りの人も後悔させることになる。
○外見(外卦乾)は強そうだが、内心(内卦坎)は苦労している時。
○讒(ざん)言(げん)によって、人との信頼関係を失う時。
○人を怨んで憤(いきどお)る時。
○人を嫉(ねた)んで憎む時。
○悪いことを企画する時。
○憂鬱となり悶々として煩(わずら)う時。
○温和になれない時。
○売買は、今、安く買って、後に高く売れる。

訟 初六 ||| ・|・

初六。不永所事。小有言。終吉。
□初六。事とする所を永くせず。小しく言有り。終に吉。
 坎険の底で困窮し、不平不満を抱いて訴訟を起こすが、長く続けられない。周りから多少物言いがつくが、早く訴訟を取り下げるので、最後は幸を得る。
象曰、不永所事、訟不可長也。雖小有言、其辨明也。
□事とする所を永くせずとは、訟は長くす可からざるなり。小しく言有りと雖(いえど)も、其の辨(べん)明らかなり。
 不平不満を抱いて訴訟を起こすが、長く続けられない。本来、訴訟は起こすべきではない。もし起こしたとしても、適当な時機に取り下げるべきである。
 九四の助言(明智・互卦離)で早く訴訟を取り下げるので、最後は幸を得る。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)金銭其他ノ事ニ就キ不善者小害ヲ受ルコトアリト雖モ、忍テ爭ヒテ止ルノ時ナリトス、世界ノ廣キ人民ノ多キ、此ノ如キノ不善者ハ交際ヲ謝絶シテ可ナリ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)金銭・その他において、善からぬ者によって、災難を被ることがあるが、只管(ひたすら)争うことを堪え忍んでじっとしている時。どの国に生れようが、どんな人種であろうが、善からぬ者とは、交際することを断るべきである。つまらない争い事から、大事な家族や家庭を犠牲にしてはならない。負けるが勝ちという時がある。訴訟や裁判沙汰を好む人は、争ってはならない時だと心すべきである。
○どんな事でも、災難を免れる。
○先読みをする(将来を予測する)ことによって、物事が複雑化したり紛糾したりすることを免れる。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人某氏來リ告ゲテ曰ク僕仕官ノ志アリ周旋ヲ某局長ニ依頼セリ、其局長ハ僕固ヨリ依頼スベキ縁故アリ、且僕ノ爲メニ盡力スベキ理由アリ、必ズ志望ヲ達スルコトアラントス、然レドモ、試ニ其成否ヲ占ハンコトヲ請フト、乃チ筮シテ訟ノ初爻ヲ得タリ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。