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抜粋「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 水山蹇 一

2022年7月26日

三九 水山蹇 ・|・ |・・

蹇、利西南。不利東北。利見大人。貞吉。
□蹇(けん)は、西南に利しく、東北に利しからず。大人を見るに利し。貞にして吉。
 蹇は険阻艱難な(互卦二三四の坎を頂く険山を越えても、険阻艱難が待ち受ける)時に処する道を説く。
 西南に行くがよい。西南は坤(地)の方角。険阻艱難な時は、平らな大地に止まって時に順うべき。東北に行ってはならない。東北は艮(山)の方角。山は険阻艱難の象徴。険阻艱難な時は険阻艱難に立ち向かってはいけない。平らな大地に止まって、偉大な人物を見習うがよい。険阻艱難に対処する道が見えてくる。偉大な人物を見習って、正しい道を守れば、険阻艱難な時を乗り越えることができる。
彖曰、蹇、難也。險在前也。見險而能止、知矣哉。蹇利西南、往得中也。不利東北、其道窮也。利見大人、往有功也。當位貞吉、以正邦也。蹇之時用、大矣哉。
□蹇は難(なん)也。険前に在る也。険を見て能(よ)く止まるは知なる哉(かな)。蹇は西南に利しとは、往(ゆ)きて中を得る也。東北に利しからずとは、其(その)道窮(きゆう)する也。大人を見るに利しとは、往きて功有る也。位(くらい)に当たりて貞にして吉とは、以て邦(くに)を正しくする也。蹇の時用大なる哉(かな)。
 坎(険難)が艮(山頂に立ち止まる自分)の前に立ち塞(ふさ)がり動くに動けない蹇(けん)難(なん)の時。このような時に、今の場所に止まり時を待てるのが智者である。蹇の時は西南(坤)に行くがよい。坤の平らな大地に止まることが、険阻艱難な時に中ることである。東北(艮)に行ってはならない。艮の険山に向かって行けば道に窮(きゆう)する。偉大な人物に見習えば険阻艱難に対処する道が見えてくる。君子・賢人に見習い自分を修めるのである。君子・賢人がしかるべき地位に就けば社会は安定する。國が正しく治まるからである。蹇の時の働きは、何と偉大なことであろうか。
象曰、山上有水蹇。君子以反身脩德。
□山の上に水有るは蹇なり。君子以て身に反(かえ)りて德を脩(おさ)む。
 艮(山)の上に坎(水)が有る。険しい山と渉り難い大川と落とし穴が重なる蹇難な時。君子は、自分の行いを省みて德を磨き、時が訪れるのをじっと待つ。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)身ノ上ニ甚シキ艱難アルベシ、而シテ此艱難ヲ齊ハン爲メ、術計画盡キテ、困リ果ルノ時トス、此時ニ當リ、智巧ヲ用ヒ、艱難ヲ出ントスルトキハ、益々・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)身の上に大変な災難を招き寄せる時。その災難から逃れようとするが万策尽きて困り果てる。
○この時に、小賢しい智恵を用いて対処しようとすれば、困難は益々非道くなる。その困難がもっとも非道い場合には、自分の命を失うこともある。そこまで非道くなくても、家の財産を失って(破産)、生活に困窮するところまで追い込まれる。
○蹇とは「跛(あしなえ)」。進むことができない。心配したところでどうにもならない。時が至るのを待つしかない。
○初爻変ずれば(水火既済になれば)、五ヶ月後には天運を招き寄せて、救済者が現れ、困難から脱出することができる。
○「大人を見るに利し」とは、権威のある人、年上の賢人に依頼すれば支援を得られると云うことである。
○第五爻の時に至れば、困難から脱出して、非常事態は終焉し、心の安定を取り戻すことができる。
○闇雲に苦労して、心を痛めることのないようにするべきである。
○底なし沼に陥ってしまったように進退に窮する時。何事も進み行けば凶運を招く。止まるべし。進めば災難を招き寄せる。
○急いで事を成そうとしてはならない。災難を招き寄せるだけである。
○何事も思った通りにできない(何をやってもうまくいかない)時。
○リーダー(上司)は感情的になり、大衆(部下)は偏屈になって、組織(国家・社会・地域・会社・家庭)が治まらない時。
○善からぬ計画に騙されて落とし穴に陥る。
○物価は始めは高く、その後は低くなる。よって、商売は停滞する。

蹇 初六 ・|・ |・・

初六。往蹇、來譽。
□初六。往(ゆ)けば蹇(なや)み、来(く)れば誉(ほまれ)あり。
 柔弱不中正で身分は低く孤立無援。進み往けば蹇(けん)難(なん)に陥る。じっと止まり時を待てば智者の名誉を得る。
象曰、往蹇、來譽、宜待也。
□往けば蹇み来れば誉ありとは、宜しく待つべき也。
 進み往けば蹇難に陥る。待てば智者の名誉を得る。宜しく時を待つのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)今身ノ上ニ難儀アリトテ、智巧ヲ用ヰテ動時ハ、尚ホ其難儀ヲ益スベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)自分の身の上に降りかかった困難に、小賢しい智恵で対応すれば、さらに大きな困難に見舞われる。冷静になって、開運の時が到来するのを待つべきである。
○今は困難の真っ直中にあるが、五ヶ月後には、困難から脱出して、思ってもいなかった名誉を得ることができる。
○あなたに敵がいて、敵に関連した占いを立てた場合は、こちらから進み行けば、敵は益々力を得て、敵の手中に嵌(はま)って、困惑する。敵から進んで来るのは待てば、敵の力は弱体化して和解する。敵を自分の味方にすることができる。
○敵を味方に付けるような対処をすれば、その先見の明に大衆は心服する。思ってもいなかった名誉を得る。
○困難の真っ直中で、速やかに自分のやってきたことを反省して、止まる時は、それ以上、困難の中には陥らない。自分がこれまで取り組んできたことを守ることができる。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人某來リ、一事件アルヲ以テ、進退ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、蹇ノ初爻ヲ得タリ、・・・