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時の物語 周易六十四卦 校正 39

五十六.アウェイに赴く時

 アウェイとは一般的にスポーツの敵地だが、ここでは「旅先」「長期出張」「出向先」「居心地が悪い場所」「場違いな空間」とする。突然、経験や人脈が全くない所(居心地が悪い場所、場違いな空間)に旅したり、異動したり長期出張や出向を命じられたらどうすればよいか。それが「アウェイに赴く時」である。「アウェイに赴く時」は何事も慎重でなければならぬ。明智で物事を見極め慎重に決断して速やかに対処することが求められる。

 「アウェイに赴く時」の主人公は、会社に命じられ突然アウェイ(居心地が悪い場所、場違いな空間)に赴くことになった六人の「あなた(わたし)」である。

○アウェイに赴いた一人目の「あなた(わたし)」
 わたしは極々平凡なサラリーマン。普通に学校に行き普通の成績で卒業して普通の会社に入った。生まれてから実家を離れたことはなく会社も実家の近くだ。定年までこの会社で普通に働くつもりだった。ところが、入社二年目に本社から最も離れた山間地の村落にある出張所に異動を命じられた。出張所は一人勤務で宿舎も兼ねている。村落には二百人弱が居住しており完全な閉鎖社会だ。交通の便が極端に悪く現地に赴任した人は次の異動先に移るまでは帰宅できない。赴任期間は一年間で二十代の独身者が赴任する決まりだ。一年間閉じ込められた生活を送るので、赴任期間を終えると特別賞与が支給される。世間知らずのわたしは出張所に赴いても村民とうまく交流できずに毎日孤独だった。村民も陰でわたしの悪口を言い、誰も話をしてくれない。針のむしろの一年間が過ぎて本社に戻ることになった。
 ご褒美に特別賞与が支給されたがうれしくない。元々人見知りするわたしだったが、この一年で人間不信に陥り相手の顔を見て話をすることができなくなった。こんな精神状態なので命じられた仕事ができなくなり、ノイローゼになって会社を辞めた。
 わたしは一体これからどうすればいいのだろう。
○アウェイに赴いた二人目の「あなた(わたし)」
 わたしは優しい父母と兄に囲まれてスクスク育ったので、人付き合いが大好きで誰とでも仲良くできる。何が起こっても前向きに対処できる。地元の大学を出て地元の会社に就職し同僚と結婚して実家の近くにマイホームを建てた。二人の子供に恵まれ平凡だが幸せに暮らしていた。ところがある時、勤め先がライバル会社に買収された。解雇にはならなかったが、一年間の海外出張を命じられた。英語は苦手なので断ろうと思ったが、買収された身なので断れなかった。まぁ何とかなるさと、持ち前の前向き思考で単身赴任した。英語が話せなくても今はAIが翻訳してくれるから何とかなるさと、初めての海外渡航を楽しんだ。仕事は営業だ。英語が話せないので笑顔で勝負した。パンフレットを鞄に詰め込んでターゲットを絞り、満面の笑顔で飛び込み営業を毎日こなした。始めは相手にされなかったが、二度三度と訪れると笑顔で迎えてくれた。パンフレットを渡してスマフォで日本語を英語に翻訳する。これを毎日繰り返した。以下省略。