象曰、山上有木漸。君子以居賢德善俗。
○象に曰く、山の上に木有るは漸なり。君子以て賢德に居(お)り俗(ぞく)を善(よ)くす。
山(艮)の上に木(巽)が有るのが漸(ぜん)の形である。山の上の木は、漸(ぜん)次(じ)に(少しずつ)着実に成長して、雲を突き抜けるほどの大木になる。
君子(立派な人)はこの形に見習い、賢明な道德を習得して己の人間性を磨き、漸次に(少しずつ)着実に民衆を教え導いて、風俗が善くなるように民衆を感化する。
ここまでが、原文(漢文と書き下し文)と意訳で見た、風山漸の「大きな物語」である。
ここからは「小さな物語」となる。「小さな物語」は六つある。一つひとつを原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者が理解できるように意訳していく。
初六 ☴☶ 之卦 三七風火家人☴☲
初六。鴻漸干干。小子厲。言有无咎。
○初六。鴻(こう)、干(みぎわ)に漸(すす)む。小子は厲し。言有れども咎无し。
貴方は柔弱不中正(陰爻陽位)にして応比なしで孤立している。
漸(ぜん)次(じ)に(少しずつ)着実に進む時の始めに、大きな雁(かり)(鴻(こう))が水際まで進んで来た。君子(立派な人)なら安んじて漸進する(少しずつ進む)が、貴方のような若(じやく)輩(はい)者(もの)は安んじて漸進する(少しずつ進む)ことができないので危ういのである。
周りから色々言われるが、咎められるまでには至らない。
象曰、小子之厲、義无咎也。
○象に曰く、小子の厲(あやう)きは、義、咎(とが)无(な)き也。
貴方のような若(じやく)輩(はい)者(もの)は安んじて漸進する(少しずつ進む)ことができないので危うい。だが、貴方は妄動しないので、道義的には咎められない。以下省略。