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時の物語 周易六十四卦 校正 40

五十七.大人(立派な人)に順う時

 時の物語は「一.がんばる時」と「二.素直に順う時」で始まった。「がんばる時」は主役として動く時、「素直に順う時」は脇役として動く時だった。「大人(立派な人)に順う時」は人間として成長する時だ。大人を分かり易く説明すると「立派な人」だが、厳密に定義すると「天命を自覚して人の道を歩んでいる人」だ。人間として成長するためには「天命を自覚して人の道を歩んでいる人」を敬い順うことが大切だ。

 「大人(立派な人)に順う時」の主人公は「四十七.水が漏れて乾涸らびる時」に登場したパスタ専門店「アルデンテ」を開業した「あなた(わたし)」である。

 小さな頃から料理好きだったわたしは、三十五歳でパスタ専門店「アルデンテ」を開業、四十五歳で二号店、五十歳で三号店を出店した。その後、コロニャン伝染病で苦境に陥ったが、従業員の力を借りて乗り切り、五十五歳になった今、固定客に支えられて三店舗体制を維持している。無我夢中でお店を経営してきたので、人間の生き方や社会について何も考えてこなかった。だが、最近の世相を見て「日本はこのままでよいのだろうか」と思うようになった。わたしの店で働いているスタッフは学歴社会から落ちこぼれた若者が多い。学歴がないから勤め先が見付からずに、手に職を付けようと求職してくるパターンがほとんどだ。飲食店は接客が大事だから、入ったばかりのスタッフには仕事中は常にお客様の立場で考えるようにと指導する。スタッフは二十代の若者が多く話をしてみると素直で良い子だが、物事を斜めから見ている子が多い。学校に通っていた時に味わった劣等感が原因だろう。
 わたしは小さな頃から料理さえしていれば幸せだったので、勉強ができなくても全然気にしなかったが、わたしはレアケースで、ほとんどの若者は勉強ができずに学歴社会のレールから外れると自信を失い自暴自棄になる。彼らは指導すればきちんと仕事をするし人間的にも素直で優しい子が多い。そんな子たちが定職に就けないと社会からドロップアウトしてしまうことが多い。今の画一的な学校教育には問題が多く、多様な子供たちの気持に応えることができない。ほとんどの子供が義務教育を終えたわたしの時代とは違い、今は小中学校に行かなくなってしまう子供たちが少なくない。一度、学歴社会のレールから外れると行き場所がなくなり犯罪に走ってしまう子供たちもいる。こんな話を若いスタッフから聞くと、益々「日本はこのままでよいのだろうか」という思いが強くなり、パスタ店の経営を通じて、ドロップアウトした若者たちに社会に戻ってもらう取り組みをしたいと思うようになった。美味しいパスタ料理を通してお客様に幸せになってもらうことがわたしの人生のテーマだが、それだけでは足りない、もっと社会のため、日本のためになることがしたい。
 その思いを実現するためにはどうすればよいか、色々調べて考えたところ、経営の神様と呼ばれた松下幸之助の言葉に辿り着いた。以下省略。