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時の物語 周易六十四卦 校正 25

四十二.得して得する時

 国に例えれば、一時は国が損して国民が得するが、最後は国も得する時。会社に例えれば、一時は役員が損して社員が得するが、最後は役員も得する時。家庭に例えれば、一時は親が損して子供が得するが、最後は親も得する時。組織には上と下がある。下が厳しい時は上が頑張る。上が頑張れば下は喜ぶ。結果的に上も下も良くなるのが「得して得する時」である。
 この時が成り立つためには、上は下のことを思いやり、下は上のことに感謝するという関係でなければならない。そうでなければ、上が損するだけである。

 「得して得する時」の主人公は、国民を信じて減税したら、国民が頑張り国も豊かになった理想の総理大臣である「あなた(わたし)」である。
 (戦争に敗れて米国の属国と化した日本を取り戻すというスローガンを掲げて多くの国民の期待を背負い総理大臣に就任し日本政治史上最長の長期政権を担いながら、歪んだ世論に合わせて理想の政治を実行できないまま、最後は悲劇の死を迎えたA元総理をモデルにして、世論が健全なら実現したであろう主権国家日本のあり方を夢物語として描いた。)

 わたしは著名な政治家の孫として生まれた。父も有名な政治家だった。将来は政治家になり祖父が果たせなかった本当の主権回復を実現することを期待されて育った。社会に出て直ぐに政治家の道に進まず、民間企業で社会勉強から始めた。祖父の代からの支持者が経営する会社に就職した。社長はわたしの素性を誰にも話さなかったので、わたしは普通の社会人として仕事ができた。同僚や先輩・上司は普段は政治の話はほとんどしなかったが、仕事を終えお酒を飲みに行くと、今の政治への不満を話した。ほとんどの人がGHQが敷いた路線に乗ってマスメディアや教育機関を通して喧伝された自虐史観を信じていた。今の日本が米国に従属していることを仕方ないこととして受け容れて、これからも日本は米国に従属していくしかないと思っていた。中には独学で自虐史観を克服し、先人が築き上げてくれた本来の日本の姿を取り戻さなければならないと考える人もいた。わたしの上司もその一人でわたしの面倒をよく見てくれた。やがて、わたしが政治の道に入るため会社を辞めることになった時、初めて社長はわたしの素性を社員の前で披露した。何も知らなかった社員は驚くと共に応援するよと温かく送り出してくれた。上司はわたしの手を固く握り「期待しているぞ。日本を取り戻してくれよ」と激励してくれた。
 政界に入ったわたしはサラブレッドとして順調に経験と役職を重ねて、日本の伝統を守りたいと考える保守層から大きな期待を集めた。国民的人気が高かったK政権で副官房長官を務めた時、K総理が他国に拉致された日本人を取り戻す決断をする際、わたしの一言が決定打となったことが報道を通じて多くの国民に知られることになった。わたしに対する国民の期待は高まり、K総理に後継者として指名され、五十代で総理大臣を務めることになった。日本を取り戻すために必要だと主張してきた持論を具体化するために、これまでの政権が世論を恐れて取り組めなかったことに、次から次に取り組んだ。以下省略。