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超釈古事記 黄泉の国 二

2021年4月20日

【書き下し文】
是(ここ)に伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)、見(み)畏(かしこ)みて逃げ還(かえ)る時、其(そ)の伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の命(みこと)、「吾(あ)に辱(はじ)見(み)せつ」と言ひて、即(すなわ)ち豫(よ)母(も)都(つ)志(し)許(こ)賣(め)を遣(つかは)して追わしめき。爾(しか)くして伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)、黑き御(み)縵(かづら)を取りて投げ棄(う)つるに、蒲(えびかづらの)子(み)生(な)りき。是(これ)をひろいて食(は)む間(ま)に逃げ行くを、猶(な)お追う。また、其(そ)の右の御(み)美(み)豆(づ)良(ら)に刺(さ)せる湯(ゆ)津(つ)津(つ)間(ま)櫛(ぐし)を引き闕(か)きて投げ棄(う)つるに、笋(たかむら)生(な)りき。是(これ)を拔(ぬ)き食(は)む間(ま)に逃げ行きき。且(また)、後(のち)に、其(そ)の八(や)くさの雷(いかづちの)神(かみ)に、千(ち)五(い)百(ほ)の黄(よ)泉(もつ)軍(いくさ)を副(そ)えて追わしめき。爾(しか)くして御(み)佩(はか)せる十(と)拳(つか)の劍(つるぎ)を拔(ぬ)きて、後(しりえ)手(で)にふきつつ逃げ來(き)たるを猶(な)お追う。黄(よ)泉(もつ)比(ひ)良(ら)坂(さか)の坂本に到(いた)りし時、其(そ)の坂本に在(あ)りし桃の子(み)三(みつ)箇(つ)を取りて持ち撃(う)てば、悉(ことごと)く逃げ返りき。爾(しか)くして伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)、桃の子(み)に、「汝(なが)、吾(あ)を助けし如(ごと)く、葦(あし)原(はら)の中(なか)つ國(くに)に所(あら)有(ゆる)うつしき青(あお)人(ひと)草(くさ)の苦しき瀬に落ちて患(うれ)え惚(なや)む時、助く可(べ)し」と告(の)りて、名を賜(たま)いて意(お)富(ほ)加(か)牟(む)豆(づ)美(み)の命(みこと)と號(い)ひき。

〇通釈(超釈はない)
 そのすさまじい姿を見た伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)が、恐れおののいて黄泉の国から逃げ帰ろうとした時に、伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の命(みこと)は鬼のような形相で、「よくもわたしに恥をかかせましたね」と言って、すぐに豫(よ)母(も)都(つ)志(し)許(こ)賣(め)(黄泉の国の醜(しこ)女(め)たち)に命じて、伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)を追いかけさせた。
 すると、伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)は、自分の頭から黑い御(み)縵(かづら)(髪飾り)を取ってエイッと投げ捨てると、たちまち山葡萄の実がなった。黄泉の国の醜(しこ)女(め)たちが、山葡萄を拾って食べている間に、すたこらさっさと逃げたが、山葡萄を食べ終えた醜(しこ)女(め)たちはしつこく追いかけてきた。伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)はまた、右に束ねた輪状の髪に挿しておいた爪櫛の端を折ってエイッと投げ捨てると、たちまち竹の子が生えてきた。これを醜(しこ)女(め)たちは地面から抜いて食べている間に、伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)はすたこらさっさと逃げていった。
 すると、伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の命(みこと)は自分の腐乱した身体から生まれた八種類の雷(いかづちの)神(かみ)に、黄泉の国の大軍団を従わせて追いかけてきた。そこで、伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)は腰に差した長剣を抜いて、後ろ手に振りながら(呪術を操りながら)逃げたが、雷(いかづちの)神(かみ)たちはしつこく追いかけてきた。
 とうとう、黄泉の国と葦原の中つ国の境である黄(よ)泉(もつ)比(ひ)良(ら)坂(さか)の麓に到(いた)った時、そこに生えていた桃の実を三つ取ってエイッと投げたところ、雷(いかづちの)神(かみ)たちはみんな逃げて行った。そこで伊(い)邪(あ)那(な)岐(き)の命(みこと)は、桃の実に、「おまえがわたしを助けてくれたように、葦(あし)原(はら)の中(なか)つ國(くに)に住んでいる人間たちが苦しい目に遭って悲しみ悩んでいる時には助けてやってくれ」とおっしゃって、意(お)富(ほ)加(か)牟(む)豆(づ)美(み)の命(みこと)という名前を桃の実に賜った。