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時の物語(易経短編小説集・近日中に出版予定)9

八.一つにまとまる時

 次は「一つにまとまる時」の物語である。人間が集まって組織を作れば、組織の中で戦う(内輪もめする)時もあれば他の組織と戦う時もある。組織内外で戦いに明け暮れれば、誰もが疲労困憊して一つにまとまりたくなる。それが「一つにまとまる時」である。
 「あなた(わたし)」が属している(小は家庭から大は国家までの)組織にも「一つにまとまる時」があったはずだ。あるいは、これから「一つにまとまる時」が来るかもしれない。いつも「一つにまとまっている」組織もあるだろう。

 「一つにまとまる時」の物語。主人公は「五.ゆったり待てば結果が出る時」で急逝した先代から菓子製造卸販売業を引き継ぎ、「魔のシュークリーム」を企画販売して企業価値を高めた社長である。以後、この社長を「わたし」と表現して話を進めていく。
 「魔のシュークリーム」を販売してからあっという間に十年が経過した。わたしは営業部に勤務していた十歳年下の従業員と結婚して二人の子供の父親となった。わたしも妻も仕事が忙しいので子供のことを考えて妻の両親と同居することにした。妻は子供が産まれてしばらく仕事を離れて育児に専念していたが、上の子が七歳、下の子が五歳となった昨年から、子供の世話は両親に任せて営業課長として仕事に復帰している。
 当社の「魔のシュークリーム」をライバル視して、次から次へと「魔の商品シリーズ」を開発した「魔の洋菓子」に対抗すべく「魔のいちご大福」を開発した営業部の商品開発係長は現在、営業部長に昇進して営業課長の妻の上司として営業部を統括している。社長業が板に付いてきたわたしは、己が裸の王様にならないように、取引先銀行の元頭取を相談役として迎え経営判断が難しい案件や企業風土の構築などについて度々相談している。また、相談役は仕事ができる営業部長を大変高く評価しており、営業部長は仕事やプライベートなことで何か悩みがあると相談役からアドバイスを受けているようだ。以下省略。