火雷噬嗑の九四は火地晋の九四と反対に、全体の卦象を読み解く時には「異物や邪魔者」と悪役なのに、爻辞を読み解く時には「異物や邪魔者に刑罰を執行する」正義の味方となる。
易経のこのような矛盾には割り切って対応するのが賢明である。すなわち、全体の卦象を読み解く時と爻辞を読み解く時では見方スパッとを変えるのである。
火雷噬嗑に限らず、原文(書き下し文)の解釈や言葉の整合性に疑問を抱くことがある。どうしてそのような解釈になるのか、爻辞と爻辞の整合性がないではないか。などなどである。易経は数千年の歳月をかけて様々な人々に読み解かれてきたので、様々な解釈があるのである。様々な解釈を学んだ上で自分なりの解釈を考えて納得する。それが易経を学ぶ醍醐味でもある。
以上が火雷噬嗑の概要である。
ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。
噬嗑、亨。利用獄。
○噬(ぜい)嗑(こう)は亨(とお)る。獄(ごく)を用(もち)うるに利(よろ)し。
噬嗑は上(うわ)頤(あご)と下(した)顎(あご)(二七山雷頥の象)の間にある邪魔物(全体の卦象からは四爻を邪魔者と観る)を、聡明な智慧(上卦離の明智)と活発な威権(下卦震の雷動)で噛み砕いて除き去り、上下和合亨(こう)通(つう)する時である。
邪魔物は天下の害(がい)悪(あく)ゆえ、刑罰や裁判で懲(こ)らしめるが宜しい。以下省略。