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期間限定「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 山地剝

二三 山地剝 |・・ ・・・

剝、不利有攸往。
□剝(はく)は往く攸(ところ)有るに利しからず。
 剝は陰氣が増長して盛んになり陽氣を押し出す時。山が剝ぎ落とされて平地になるように、君子が小人に追い詰められる。君子は行動を控え、時勢に順い止まって、様子を窺い時を待つ。
彖曰、剝剝也。柔變剛也。不利有攸往、小人長也。順而止之。覿象也。君子尚消息盈虚。天行也。
□剝は剝(は)ぐ也。柔剛を変ずる也。往く攸有るに利しからず、小人長ずれば也。順にして之に止まる(之を止める)。象を観る也。君子は消(しよう)息(そく)盈(えい)虚(きよ)を尚(たつと)ぶ。天行也。
 剝は剝ぎ落とす。陰柔の勢いが盛大になり、陽剛を剝ぎ落とす。陰柔が漸次に進み、陽剛を変じて陰柔に化する。
 山が剝ぎ落とされ平地になるように君子が小人に追い詰められる。君子は行動を控えて時を待つ。小人の勢いが甚だ増大している。
 下卦坤は順・上卦艮は止である。君子はこの卦象を観て、剝の時に順い止まる〔或いは、陰柔を止める〕のである。
 君子は陰陽消長〔衰退と隆盛〕盈(えい)虚(きよ)〔充実と空虚〕の理法を尊重・順応し、進むべき時は進み、退くべき時は退くのである。陰陽消長、盈虚の循環は、天地自然の運行である。
象曰、山附於地剝。上以厚下安宅。
□山地に附くは剝なり。上以て下を厚くし宅を安んず。
 高く聳(そび)え立つ山が剝(はく)落(らく)して、大地にへばり付く。人の上に立つ者は、この形を反面教師と心得、己は質素倹約に努め、下々には厚く施して、自分の地位を安定させるのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)小人増長シテ君子困追スルノ時トス、又婦人時ヲ得テ男子ヲ蔑視スルノ時トス、故ニ何事ヲモ爲サズ、只小人婦人ノ氣ヲ取リ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)小人が増長し君子が困窮する時。女性が時を得て、男性を軽蔑する。何事も成就しない。小人や女性に気を付けて、身の安全を図り、時が一変するのを待つべきである。巧言令色の輩が君子を装う時。
○一見、下は厚く上は重いので、安静に見える。しかし、薄情で人を剝奪しようと企(たくら)んでいる。
○「智恵や配慮に欠ける」「人に欺される」など、後悔することが多い。
○女性が才能と智恵を具えて、男性を軽蔑する。
○剝とは、剝落すること。山が崩れて大地に埋もれる時。
○進んで行っても事は成就しない。進み行けば失敗する。
○志は高いが分不相応なので、後悔することが多い。
○何かを削り取られる時。 ○何かが尽きる時。
○何事も零落する(落ちぶれる)時である。
○進んで事を為すと失敗する。退くと利益が得られる。
○家財を失う(手放す)ことになる時。
○小人が君子を欺き迫害し、下位の者が上位の者を欺き迫害する。
○人に欺され、財産を奪われないように、守りを固める時。
○物価は一時高止まりして、後に下落する。
剝 初六 |・・ ・・・

初六。剝牀以足。蔑貞。凶。
□初六。牀(しよう)を剝するに足を以てす。貞を蔑(ほろ)ぼす。凶。
 小人が君子を剝落する時の最下で、組織の脚下(きやつか)に潜(もぐ)り込み、密(ひそ)かに奸(かん)策(さく)を謀(はか)る。漸次に正しい道を蔑(ないがし)ろにして、終には崩壊に至る。
象曰、剝牀以足、以滅下也。
□牀を剝するに足を以てすとは、以て下より滅っする也。
 組織の脚下に潜り込み、密かに奸策を謀る。陰が陽を下から漸次に侵食する如く、組織の脚下に潜り込み、君子を剝落せんとするのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)目今大ナル壊レナシト雖モ、勢漸ク進ムノ時ナリ、早ク之ガ豫防ヲ爲サザル可カラズ、固執シテ變ヲ知ラザレバ凶ナルノ占トス、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)いよいよ小人の勢いが漸次に増大する時が来た。早く予防しなければならない。常識に固執して対策を講じなければ、凶運となる。
 小人が君子を軽蔑するようになると、君子は破滅していく。(君子は)下から徐々に剝がされて滅亡するのである。
○(君子が)善政を行ったとしても、(小人から)誹謗中傷され、破滅に向かう、という時の流れである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)相識某商來テ運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、剝ノ初爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)旧知の商人がやって来て、運氣を占ってほしいと依頼されたので、筮したところ、剝の初爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 剝は下卦坤の老母が上卦艮の少年に対峙している。親の過度の愛情が、子供を我が儘に育て、子供はやりたい放題で手が付けられなくなり、終には家族が崩壊・滅亡する。
 今回占って初爻が出た。あなたは、雇用した人を管理・指導する立場にありながら、何の規則も設けていない。衣食はケチって、俸給も少なく、雇用人に対する恩情がない。だから、雇用人はいつもあなたのことを軽蔑して、自分のことを考えるのが精一杯である。このままでは、商店の財産を剝落する事態に至る。
 このことを「牀を剝するに足を以てすとは、以て下より滅っする也。組織の脚下に潜り込み、密かに奸策を謀る。陰が陽を下から漸次に侵食する如く、組織の脚下に潜り込み、君子を剝落せんとするのである」と云う。
「あなたは、商店内の動向をよく観察して、適切に対処すべきである」と易断した。
 易断を聞いて、その商人は感謝して帰って行った。
 だが、その後、伝え聞くところによると、その商店の雇用人は数十人もおり、中には優秀な人材もいたが、商店の主人(その商人)は優秀な人材を活かすことができず、疑ったり、一方的に命令したり、悪い所を指摘することしかしなかった。そのため、商店の事務は滞り、主人自ら動き回るけれども、雇用人との関係がギクシャクしているので、一向に改善しない。こんな状況なので、優秀な人材が遊んでいる状況となり、主人は雇用人の俸給を下げるという悪循環に陥った。
 俸給を下げられた雇用人は経済的に困窮して、不満を抱くようになる。やがて、不満が貯まった雇用人は団結して主人の財産を掠め取ろうと計画する。そして、ついには商店の財産は雇用人たちに、掠め取られてしまったのである。雇用人を信用できない商人が、自業自得で剝落されたのである。この商人はリーダーの資質を欠いている。リーダーとしての德を磨かなかったことが、今回の悲劇を招いたのである。深く反省しなければならない。
剝 六二 |・・ ・・・

六二。剝牀以辨。蔑貞。凶。
□六二。牀(しよう)を剝するに弁を以てす。貞を蔑(ほろ)ぼす。凶。
 君子を剝落せんとする勢いが漸次に長じて脚の上(弁)にまで及ぶ。君子が政治の常道に固執して、速やかに禍(わざわい)を回避しなければ、漸次に正しい道が滅んで、終には全てが崩壊する。
象曰、剝牀以辨、未有與也。
□牀を剝するに弁を以てすとは、未だ与(とも)に有らざる也。
 君子を剝落せんとする勢いが漸次に長じて脚の上(弁)にまで及ぶ。
 君子に仲間がいないからである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)危キヲ知ラズシテ、安坐スルノ象ナリ、機ヲ察シテ、早ク身ノ災ヲ避クベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)危ういことを知らずに、安心して坐っている。危険が迫っている予兆を察して、早く避難すべきである。
○「蒙昧な存在が正しい存在を滅ぼす」と云う凶運の恐ろしさをよくよく知っておくべきである。
○謀反(反社会的行為)には関係しない。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)或ル紳士來テ運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ剝ノ第二爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある紳士がやって来て、運氣を占ってほしいと依頼されたので、筮したところ、剝の二爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 剝は、下の五陰が上の一陽を剝落しようとする時。だからこの卦を剝と名付ける。一陽が最上に横たわり、下からこの一陽を剝ぎ落とそうとする。
 人に当て嵌めれば、善人が不善人に迷惑をかけられる時。自分の恩情によって相手に力を与え、相手はその力によって立身出世したのに、相手は恩義を忘れて、仇で報いるような時である。自分は恥をかき、凶悪な被害を受ける。
 だから「牀を剝するに弁を以てす。貞を蔑ぼす。凶。君子を剝落せんとする勢いが漸次に長じて脚の上(弁)にまで及ぶ。君子が政治の常道に固執して、速やかに禍を回避しなければ、漸次に正しい道が滅んで、終には全てが崩壊する」と云う。
「牀を剝する」とは、自分が目をかけた目下の人に自分の足元を掬われること。「弁」とは、木の幹、親族の子供や幹事のこと。「貞を蔑ぼす」とは、自分が応援した相手から、恩を仇で返されること。それゆえ「貞を蔑ぼす。凶。漸次に正しい道が滅んで、終には全てが崩壊する」と云う。
 相手は不義かつ貪欲で、道義を知らない者。交際してはならない。このことを象伝に「未だ与(とも)に有らざる也。君子に仲間がいないからである」と云う。
 紳士は、以上の易断を聞き、感じたことがあったようで、不安な顔付きで帰って行った。
 その後聞いた話では、その紳士は親族に巨額の資金を貸し与えたが、相手は感謝するどころか、その資金を頭脳巧みに騙し取ったと豪語して、恥じる所もないと云う。
 なるほど、易断は絶妙だと、われながら感心したのである。
剝 六三 |・・ ・・・

六三。剝之。无咎。
□六三。之を剝す。咎无し。
 小人共が徒党を組んで上九の君子を剝落しようとする時にあって、六三だけは正応の上九に従うので、咎なきことを得る。
象曰、剝之、无咎、失上下也。
□之を剝す、咎なしとは、上下を失えば也。
 正応の上九に従うので、咎なきことを得る。上下の徒党(小人共)に与(くみ)せず上九と志を共にするのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)心ヲ正シクシ、行ヲ篤クスベシ、然ラザルトキハ、意外ノ禍ヲ受クルノ時トス、…
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)心を正しく、行いを篤実にするべきである。そうでなければ、思ってもいない災難に遭遇する。
○衆陰が一陽を剝落しようとする時に、六三のみ上九と応じている。自分は小人だが君子が必要なことを知っている。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治十七年冬、横濱ノ洋銀商某來テ、運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ剝ノ第三爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治十七年の冬、横浜のある商人がやって来て、運氣を占ってほしいと依頼されたので、筮したところ、剝の三爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 剝は山が崩れて大地となる。五陰が長じて、上の一陽を剝落する。小人が時を得て、勢いに乗って君子を剝落する。剝落とは奪い取ることである。
 今回占って三爻が出た。三爻は上の一陽と応ずる関係にある。
 上位の人と陰陽相応じて志を達成する時である。だから「之を剝す、咎なしとは、上下を失えば也。正応の上九に従うので、咎なきことを得る。上下の徒党(小人共)に与(くみ)せず上九と志を共にするのである」と云う。
「之を剝す」とは、山が変じて地となること。「山のように高い相場が変じて地となるように下落する株を売買する。または、大衆の足を払ってなぎ倒して金銀を剝奪する」。
 以上のような易斷を立てた。
 その後、その商人がやって来て、感謝して言った。
「わたしは、地方の山中に生まれ、小さな頃から、将来は富裕な商人になりたいと思っていた。その後下積みの生活を経て、商業の経験と失敗を重ね、流れ流れて横浜に辿り着いた。相場師としての経験を重ね、お客様から信用され、外国製銀貨の売買を任されて、大金を動かせるようになった。外国製銀貨の売買は、相場が乱高下すると博奕のような取引となり、大きな損失を出すと、身に危険が及ぶこともある。
 今回、朝鮮事件が勃発して外国製銀貨は騰貴したが、山崩れて地となると云う易断を信じて、保有している銀貨を一部売却した。しかし、益々騰貴したので、しばらく、手を引くことにした。やがて天井に到達する頃合いを見て、大量の銀貨を売却すると、相場は下落し、大きな利益を得た。山が崩れて地になるという易断を信じたからである。この成功は、小さい頃からの志を貫いたから実現したのである」。
 剝は、小人が君子を剝落する時だが、君子を剝落しようとするなら、下積みを重ね、人のために働き、人の目を欺くことから始めなければならない。君子は、このような小人の悪行を軽視してはならない。剝は君子が危ない時。謹慎警戒して、災害を予防しなければならない。これは、相場のことだけではない。社会によく起こり得ることである。
 この易断を示して、君子に忠告しておく。

剝 六四 |・・ ・・・

六四。剝牀以膚。凶。
□六四。牀を剝するに膚(はだえ)を以てす。凶。
 牀の脚を剝落して、牀の上に居る上九の皮膚を剝落する。もはや禍を回避することはできない。終には全てが崩壊する。
象曰、剝牀以膚、切近災也。
□牀を剝するに膚(はだえ)を以てすとは、切に災いに近き也。
 もはや禍を回避することはできない。漸次に進んで来た剝落の災害がいよいよ切迫して上九に近づいているのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)禍已ニ其身ニ及ブノ時ナレバ、速ニ其方向ヲ轉ジテ、禍ヲ避クルノ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)災いが、自分の身に及ぶ時。方向を転じて災いを回避する処置を執(と)るべきである。そうでなければ、臍(ほぞ)を噛む(自分のヘソを噛む~どうにもならない~)ように後悔する。
○火氣によって、衣裳が剝ぎ取られるような時。
○禁じられていることを犯してしまう時。
○自分から災いに近付いて行き、災いを蒙る。
○火に関係する災難に遭遇する。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)富商某來テ、運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、剝ノ第四爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある富豪がやって来て、運氣を占ってほしいと依頼されたので、筮したところ、剝の四爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 剝は山が崩れて地に戻る時。険しい山が平地に戻ると、小人は危険を忘れて、やりたい放題となる。小人が時を得て、君子を剝落しようとする。
 今回占って四爻が出た。
(富豪が経営する)商店において、信頼している人物が悪事を企て、商店の財産を奪い取ろうとしている。あるいは、強盗が入って社長にまで被害が及ぶ。場合によっては、すでに災いが迫っている。以上のような運氣である。実に、存亡の危機である。
 先祖の御霊をお祀りし、神々にお祈りして、災害を回避するように心がけるのは勿論、一刻も早く転居すべきである。信頼して商店を任せている人物に心を許してはならない。このように災いが迫っているという占いが出た時は、人相を参照すべきである。
(以下、細々とした記述は省略する。)
 血色の悪い人は災いを避けることは難しいが、血色のよい人は災いを避けることができる。今回占った豪商は血色がよかったので、転居することを勧めた。
 豪商は以上の易断を聞いて、大いに驚き、直ぐ旅行に出た。
 だが、米穀の買い出しに出た番頭が、何とそのお金を米相場に投機して大損失を出した。豪商はその番頭を厚く信頼していたので、大金を持たせたことが裏目に出たのである。
 番頭は、儲かれば、それを自分のものにし、損すれば商店に損害を負わせようと考えていたようだが、結局大損した。
 その損失を商店が負って、終に豪商は破産に追い込まれたのである。

剝 六五 |・・ ・・・

六五。貫魚。以宮人寵。无不利。
□六五。魚を貫く。宮(きゆう)人(じん)を以て寵(ちよう)せらる。利しからざる无し。
 衆陰を目刺し魚のように一つに束ねて、後(こう)宮(きゆう)の妻(さい)妾(しよう)の如く上九に寵愛されれば、剝の禍を回避できる。
象曰、以宮人寵、終无尤也。
□宮(きゆう)人(じん)を以て寵(ちよう)せらるとは、終に尤无き也。
 上九に寵愛される。終に咎なきを得て、禍を回避できる。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)貴人ノ寵ヲ得テ僥倖ナルノ時トス、國家ヲ以テ念トスル者、天下ノ大事アルニ當リテ、婦女子ノ寵ノ如キハ、顧ルニ遑アラズ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)貴人の寵愛を賜って幸せを招き寄せる時。天下国家を論ずる人は、天下の大事に中るべきである。婦人から寵愛を受けるようなことがあってはならない。よくよく反省すべきである。
 女性が柔和に過ぎて、亭主がやりたい放題となり、家計が破綻することに気付かない時でもある。
○大きな果物(大きな成果)があるのに、人が食べない(人々が用いない)ので、木に吊る下がっている(何もせずに存在している)ような(有益なことを活用できない)時。
○男性が女性に制御(コントロール)される時である。
○江戸時代ならば大奥、現代ならば事務方のトップに出世して、将軍や政治家に寵愛され、実権を握っている時である。
○武士なら剣、町人なら棒、女性なら針に関連した占いである。
○色恋沙汰で苦しみ悩む時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)横濱境町森錠太郎氏ハ、外相亜米利加一番ノ書記ニシテ、余ガ知音ナリ、明治十四年春(中略)余ニ占筮センコトヲ請フ、乃チ筮シテ、剝ノ第五爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)横浜境町の外商である森さんは、米国との商取引が日本一のインテリで、わたしの知り合いである。森さんが、明治十四年の春、腹痛のため病院に行って診察してもらい、薬を服用したが効果がない。それどころか、ますます腹痛が激しくなるので母親が心配して、病気の状態を占ってほしいと依頼された。
 そこで、筮したところ、剝の五爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 剝は命を剝ぎ取られようとする卦であり、上爻に至れば陽爻が消滅して全て陰爻となる。すなわち死に向かっている時である。だが、まだ五爻なので、迅速に治療すれば、助かる可能性がある。爻辞に「魚を貫く。宮(きゆう)人(じん)を以て寵(ちよう)せらる」とあるのは、鍼(はり)を用いて病根を貫く、という意味である。以上のことから、「鍼を用いて速やかに治療すれば助かる」と易断して母親に伝えた。
 母親は「幸い、東京に若宮という鍼の専門家がいる。この人に依頼してみようか」と聞くので、わたしは「爻辞に『宮(きゆう)人(じん)を以て寵(ちよう)せらる』とある。その人の性(若宮)は爻辞の『宮人』に通じており、適任だと思われるので、依頼すべきであろう」と答えた。
 母親は直ぐに若宮医師にお願いして、診察してもらったところ、若宮医師は、先ず患者を診察して、次に病状の経過等を聞き、大きく肯きながら次のように言った。
「この症状は、これまでに経験したことがある。診断がもうちょっと遅ければ、助からなかった。今治療して、二~三時間後に腹中に動きがあれば、病気は回復に向かう。だが、残念ながら二~三時間経っても、腹中に動きがなければ、わたしの手には負えない」。
 治療を施したところ、果たして、二~三時間後に腹中に動きがあり、腹痛は忽(たちま)ち和らいだ。しばらく治療を続けたところ、何日も経過しないうちに、完全に腹痛は治った。
 以上のことから、わたし自身、鍼灸が病気の治療に大いに効果があることを知った。そして易断が、このように微妙で細かいことまで的中することに、感動したのである。
 わたしは嘗て、中村敬宇氏(一八三二~一八九一、三十にして昌平黌の儒者に挙げられ、英国に留学後、フランスを経て帰国。東京大学教授、元老院議官、女子高等師範学校長を歴任。その訳著西国立志篇は当時のベストセラーとなり、訳文は原書より優れているといわれた。~安岡正篤編著「明治の風韻」から~)に、この易断のことを話したことがある。
敬宇氏は、わたしの話を賞賛して、次のように言った。
「『魚を貫く』という爻辞から『鍼灸』を連想したのは、他の人には考えも及ばないことであろう。あなたの易斷は実に敬服に値する。また『宮(きゆう)人(じん)』という爻辞の中の言葉が若宮という鍼灸師の名前とつながったのは奇跡的である。易の素晴らしさとは、このようなことであろう。さらに、山地剝の五爻が変ずれば「風地観」となるが、「風地観」の卦象は、神社の鳥居に通じる。そして、風地観の卦辞に「盥(てあらい)して薦(すす)めず。宗廟の祭祀でお供え物を献上する前に、祭主が手を洗い清めて神様の前に進み、至誠の心と厳粛な態度で神様を天から迎える」とあるから、正しく神様のご加護を賜ったのである。易断は決して偶然ではない。このように素晴しい易断は沢山ある」。
 残念なことに普通の人は易を学ばず、あるいは学んでも信じないから、易断の素晴らしさに感激することがない。だが、中村敬宇氏のような明治を代表するような碩学は、易断の素晴らしさをよく理解しているのである。

剝 上九 |・・ ・・・

上九。碩果不食。君子得輿、小人剝廬。
□上九。碩(せき)果(か)食(くら)われず。君子は輿(くるま)を得、小(しよう)人(じん)は廬(ろ)を剝す。
 一陽が五陰の上に在るから大きな果物に例える。衆陰がこれを食べようとするが、超然と山頂に隠居して、小人の姦(かん)謀(ぼう)の及ぶところではない。如(い)何(か)に世が乱れ、小人が蔓延(はびこ)っても、正義の種は亡びず、何時かはまた勢いを得る。乱が極まれば民は泰平を願うので、上九は民に崇(あが)められ、大きな車の上に載せられる。君子は小人を覆(おお)い庇(かば)う屋根のような存在、小人が君子を剝落すればさらに世は乱れ、小人も安(あん)閑(かん)としていられなくなる。
象曰、君子得輿、民所載也。小人剝廬、終不可用也。
□君子は輿(くるま)を得とは、民の載せる所也。小人は廬(ろ)を剝すとは、終に用う可からざる也。
 大きな車に載せられる。天下泰平を願う多くの民が推(お)し戴(いただ)いて、上九を車に載せるのである。君子を剝落すればさらに世は乱れ、小人も安(あん)閑(かん)としていられなくなる。天の運行は循環して必ず正しい道に復(かえ)る。小人が君子を陥れても、終にはその姦(かん)謀(ぼう)を遂げることはできない。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)一ノ碩果ヲ保護シテ、人ニ食ハルルコトヲ爲ス勿レ、國家ノ興廃ハ、陰陽消長ノ數ニシテ、天理ノ然rシムル所ナリト雖モ、人事ヲ盡シテ、天命ヲ待ツハ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)一つしかない果実を大切に保護して、人に食べられないようにするべきである。国家の存亡は陰陽消長の循環、人智の及ばない天の道であるが、人事を尽くして天命を待つのが君子のやり方である。
「碩(せき)果(か)食(くら)われず。一陽が五陰の上に在るから大きな果物に例える。衆陰がこれを食べようとするが、超然と山頂に隠居して、小人の姦(かん)謀(ぼう)の及ぶところではない」。
 すなわち、超然と山頂に隠居して、小人の姦謀から逃れなければ、遂には、言葉にならない惨状を見る。
○崩壊していく。 ○首が飛ばされる。 ○上り詰めて落ちていく。
○初爻の時から身に迫ってきた災害により剝落して地に墜ちる時。
○行き止まる時。 ○邪なものが正しい道を侵食する。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)横濱境町森錠太郎氏ハ、外相亜米利加一番ノ書記ニシテ、余ガ知音ナリ、明治十四年春(中略)余ニ占筮センコトヲ請フ、乃チ筮シテ、剝ノ第五爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治二十三年、国家(元老院)の運氣を占って筮したところ、剝の上爻が出た。
易斷は次のような判断であった。
 剝は山が崩れて地となるので、剝と名付ける。
 今回占って上爻が出た。いよいよ山が崩れて大地に戻る時。すなわち、「元老院は廃止される」と易断した。元老院議官は国会が開設される時に、ほとんどの議官が貴族院の議員となり、それ以外の議官は、枢密院の顧問官となった。国事に携わる点では、元老院議官と同じであるが、元老院自体は易断の通り廃止された。
 以上は、毎年立てている冬至占の占例である。後学のためここに記録しておく。