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易経(周易)を読み解く 十三(乾為天 上九等)

上九 ――― ――― (乾為天) 之卦 四三澤天夬

上九。亢龍有悔。
○上(じよう)九(きゆう)。亢(こう)龍(りゆう)悔い有り。
 自戒(自らを律して君徳を維持すること)を怠った飛龍が独走して雲(臣下・部下・下々等)から見放された。雲がなければ地上に慈(じ)雨(う)を施(ほどこ)せない。後悔してもどうにもならない。
亢龍有悔、盈不可久也。
○亢(こう)龍(りゆう)悔い有りとは、盈(み)つれば久しかる可(べ)からざる也。
 自戒を怠った飛龍が雲から見放された。後悔してもどうにもならない。
 どれほど優秀な大人でも頂点を極(きわ)めれば、何時かは堕(お)ちていくしかない。頂点を極めた飛龍は、よほど自分を戒(いまし)めないと、あっという間に怠(おこた)り驕(おご)り、自ら堕ちていく。もし、自分を戒(いまし)め続けることができたとしても、やがては君德が衰えて権威を失い、その地位に留まることはできなくなる。君德が衰えたと自覚した指導者(トップ)は、自らその地位を後継者に譲ることが求められるのである。

上九曰、亢龍有悔、何謂也。子曰、貴而无位、高而无民、賢人在下位而无輔。是以動而有悔也。
○上九に曰く、亢龍悔有りとは、何の謂いぞや。子曰く、貴(たつと)くして位无く、高くして民(たみ)无(な)し。賢人下位に在るも輔(たす)くる无(な)し。是(ここ)を以て動きて悔(くい)有る也。
 上九の爻辞に「亢龍悔有り」とあるのはどういう意味ですが。
 孔先生は次のように解説された。
 社会的な名声を得ているが、実質的な地位(君德)を失っている。臣民から崇(あが)められて驕(おご)り高ぶり、高い所から世間を見(み)下(くだ)しているので、民衆の支持も失ってしまった。
 世に隠れた賢人が各地に存在するが、君德を失い、世間を見下している亢龍を助けてくれない。以上のようであるから、何をやってもうまく行かず後悔するしかない。

亢龍有悔、窮之災也。
○亢龍悔有りとは、窮(きわ)まるの災(わざわ)いある也。
 飛龍が雲から見放され、亢龍となって墜ちていく。後悔してもどうにもならない。頂点を極めれば、誰もが遅かれ早かれ行き詰まって窮(きゆう)するようになるのである。

亢龍有悔、與時偕極。
○亢龍悔有りとは、時と偕(とも)に極(きわ)まるなり。
 飛龍が雲から見放され、亢龍となって墜ちていく。後悔してもどうにもならない。誰もが頂点に到達すれば、時の経過と共に、終に行き詰まって、困窮するのである。

亢之爲言也、知進而不知退、知存而不知亡。知得而不知喪。其唯聖人乎。知進退存亡、而不失其正者、其唯聖人乎。
○亢(こう)の言(げん)たる、進むを知って退(しりぞ)くを知らず、存(そん)するを知って亡(ほろ)ぶるを知らず。得るを知って喪(うしな)うを知らざるなり。其(そ)れ唯(た)だ聖人か。進退存亡を知って、其の正を失わざる者は、其れ唯だ聖人か。
 飛龍が雲から見放され、亢(こう)龍(りゆう)となって墜ちていくのは、進むことばかりに囚(とら)われて、退くことを知らなかったからである。知らず知らずのうちに、その地位に在ることに胡座(あぐら)をかいて、その地位を失うことを慮(おもんぱか)らなかったからである。物事を得ることばかり考えて、喪失することに思いが至らなかったからである。
 嗚呼(ああ)、只(ただ)、聖人と称される偉大な人だけであろうか。進むことばかりに囚われず、退くことを知り、その地位に在ることに胡座(あぐら)をかかず、その地位を失うことを慮れる人は。さらに、物事を得ることばかりを考えず、喪失することに思いを致して、その出処進退の正しさを失わない人は。嗚呼、只、聖人と称される偉大な人だけであろうか。

【以下、高島易断から占いとしての見立てを引用】
〇この爻は乾の極点で、位は中を過ぎている。それゆえ、九二の大人と九三の君子は遠くから傍観して関わろうとしない。高い地位に居るが、安心することができない。
〇龍が大空高く昇り過ぎて、空虚な段階に至り、慈雨を施すことができなくなった時。
○大事な文書や印鑑等に関するトラブルがある。注意すべきである。
○慎みのない人は、殺傷沙汰に巻き込まれる可能性がある。
○盛んな者は衰え、浮いている者は沈む。慎むべきである。
○人から誹謗中傷されやすい時。
○社会的地位や家庭における立場が不安定になる時。
○進むと利益を損ない、退くと利益を得る時。

用(よう)九(きゆう)  陽の用い方

用九。見羣龍无首。吉。
○用(よう)九(きゆう)。羣(ぐん)龍(りゆう)を見るに首(かしら)无(な)し、吉。
 用九とは陽の用い方である。人の上に立つ龍(陽剛の象徴)は群衆の中で頭角を隠して、決して目立とうとしない。人の上に立つ指導者は、道德才能を誇らず控え目にしているが宜しい。道徳才能を誇れば世の多数を占める小人は付いてこれない。人の上に立ってなお、謙譲の德で小人を包み込むのが、人の上に立つ龍に求められる資質である。

用九、天德不可爲首也。
○用九は、天德首(しゆ)たる可からざる也。
 陽剛のリーダーは、元(げん)亨(こう)利(り)貞(てい)の天德(人の道を天の道に昇華する君德)を具えているが、その道德才能を包み隠しているから、部下の潜在能力を引き出せるのである。

乾元用九、天下治也。
○乾元の用九は、天下治まる也。
 人の上に立つ龍は、陽爻の集まりである乾爲天の大いなる根源的なパワー(元氣)を上手に用いるから、天下を泰平に治めることができるのである。

乾元用九、乃見天則。
○乾元の用九は、乃ち天の則(のり)を見(しめ)すなり。
 陽爻の集まりである乾爲天の大いなる根源的なパワー(元氣)は、すなわち、天地創造の根源的なパワー(元氣)の胎(たい)動(どう)である。