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易経(周易)を読み解く 十四(坤為地 全体)

二 坤(こん)為(い)地(ち) ‥‥‥坤地 ‥‥‥坤地

                                            互卦 同  綜卦 同  錯卦 一乾爲天

坤、元亨。利牝馬之貞。君子有攸往。先迷、後得主。利西南得朋、東北喪朋。安貞吉。
○坤は、元(おお)いに亨(とお)る。牝(ひん)馬(ば)の貞に利(よろ)し。君子往(ゆ)く攸(ところ)有り。先んずれば迷い、後(おく)るれば主を得(う)。西南に朋(とも)を得(え)、東北に朋(とも)を喪(うしな)うに利(よろ)し。貞に安んずれば吉。
 柔順に柔順を重ねた坤の時は、貴方が担っている役割(生活や仕事などにおける貴方の役割と貴方が仕えている人のリーダーとしての資質)の大きさに応じて成就する。貴方は脇役としての自分の役割をはっきりと認識して、雌(めす)馬(うま)が雄(おす)馬(うま)に柔順に従うように、貴方が仕えている人に従うが宜しい。
 今の貴方には脇役の君子として、進むべき道がある。自分が先頭に立てば道に迷うが、雌(めす)馬(うま)が雄(おす)馬(うま)に仕えるように、今、貴方が仕えている人に従えば、貴方が生涯仕える人物に巡り逢うことができる。西南(坤・陰の方角)の地にある故郷に居る時は家族や友達との関係を大切にしなさい。親元を離れて東北(艮・陽の方角)の地に赴けば家族や友達と離れ離れになるが、それが脇役の君子の道だから、宜しいのである。貴方は脇役の君子として、貴方が今、仕えるべきリーダーに柔順に従うが宜しい。
彖曰、至哉坤元、萬物資生。乃順承天。坤厚載物、德合无疆。含弘光大、品物咸亨。牝馬地類、行地无疆。柔順利貞、君子攸行。先迷失道、後順得常。西南得朋、乃與類行。東北喪朋、乃終有慶。安貞之吉、應地无疆。
○彖に曰く、至れるかな坤(こん)元(げん)、萬(ばん)物(ぶつ)資(と)りて生ず。乃(すなわ)ち順にして天を承(う)く。坤厚くして物を載(の)せ、德无(む)疆(きよう)に合う。含(がん)弘(こう)光(こう)大(だい)にして、品(ひん)物(ぶつ)咸(ことごと)く亨(とお)る。牝馬は地の類、地を行くこと无(む)疆(きよう)なり。柔順利貞、君子の行う攸(ところ)なり。先んずれば迷いて道を失い、後(おく)るれば順(したが)って常を得(う)。西南に朋(とも)を得るは、乃ち類と行くなり。東北に朋を喪うは、乃ち終(つい)に慶(よろこ)び有るなり。貞に安んずるの吉は、地の无(む)疆(きよう)なるに應(おう)ず。
 彖伝は次のように言っている。乾元(物事が最大限に成し遂げられる力)に至るほどに偉大であるなぁ、坤元の(萬物を生み出す)力は…。乾元が発する根源的なエネルギーを坤元が丸ごと受け容れて、萬物は生み出された。すなわち大地(坤)が柔順に天(乾)の根源的な力(元氣)を受け容れて、あらゆる事象(萬物)を創造したのである。
 坤の性質は、陰德を厚く積み上げて萬物をその上に載せているから、疆(かぎ)りない乾の性質と合致する。萬物は優しく包含されて光り輝き、それぞれ天から授かった性命(天命)を発揮して、すらすら成長する。
 雄馬に柔順に従う雌馬は、天に対する地に分類される。雌馬は大地としての役割を果たすために疆(かぎ)りなく進んで行く。雌馬はあくまでも雄馬に柔順で、脇役としての貞しさを固く守る。以上が雄馬に従順に従う坤の君子である雌馬の行く道である。
 雌馬は自分が先頭に立てば道に迷うことになるが、雄馬のリーダーに仕えれば、やがて生涯仕える人物に巡り逢える。西南(坤・陰の方角)の地にある故郷に居る時に家族や友達との関係を大切にするのは、生涯仕える人物に巡り逢うための基礎固めである。
 東北(艮・陽の方角)の地に赴けば家族や友達と離れ離れになるが、それが脇役の君子の道である。最初は寂しいけれども、やがて生涯仕える人物に巡り逢って、終には喜びを得られる。今は、脇役の君子として、仕えるべきリーダーに柔順に従えば幸を得るのである。大地(坤)の性質は天(乾)の疆(かぎ)りない性質に相応じているからである。

象曰、地勢坤。君子以厚德載物。
○象に曰く、地(ち)勢(せい)は坤(こん)なり。君子以(もつ)て德を厚くし物を載(の)す。
 大象伝は次のように言っている。乾の元氣(天地宇宙の根源的なパワー)を受け容れて萬物を包容・含蓄・創造しているのが、坤の卦象である。坤の君子は、この卦象に倣(なら)って、陰德を厚く積み上げて、あらゆる事象を包容・含蓄・創造するのである。

文言曰、坤至柔而動也剛。至静而德方。後得主而有常。含萬物而化光。坤道其順乎。承天而時行。
○文(ぶん)言(げん)に曰く、坤は至柔にして、動くや剛也。至静にして德方(ほう)也。後(おく)るれば主(しゆ)を得て常(つね)有り。萬物を含んで化(か)光(おお)いなり。坤道其(そ)れ順なるか。天を承(う)けて時に行う。
 文言伝は次のように言っている。坤は至って柔らかくして、乾の元氣を何の疑いもなく、まるごと受け容れる。それゆえ、坤が動くときには彊(かぎ)りなく剛(つよ)いのである。
 至って静かで柔順な坤が、彊(かぎ)りなく剛く健やかな乾の卦德(無限の力)を受け容れて、萬物を生み出す。それゆえ、萬物は全て然(しか)るべく存在しているのである。
 雌馬である坤(陰)は自分が先頭に立つことなく、雄馬である乾(陽)のリーダーに仕えれば、やがて生涯仕える人物に巡り逢って、天命を果たすことができる。
 坤(大地)の道は彊(かぎ)りなく柔順である。乾(天)の元氣をそのまま受け容れて、その時々に応じて萬物を化(か)成(せい)するのである。

【以下、高島易断から占いとしての見立てを引用】
〇全て陰爻の卦。人に当て嵌めれば、身体を養う衣食住だけ考え、心の德性に目を向けない象(かたち)。このような人は、貪るように人から奪い取っても、汚らわしいとは思わず、卑しくケチ臭い性格で、恥知らずである。この卦は本来「凶」ではなく、その人が無知蒙昧だから、物事に迷って凶運に至るのである。それゆえ、何事も調和することを心がけ、柔順に剛毅で明朗かつ見識のある人に随い、その教えを守れば、何事も成就するようになる。
○坤は「動静」の「静」の時。「静」であることが何よりも大切。
○人から命令を受ける立場の時。 ○人に使われる立場の時。 ○大衆の時。
○大勢の人と共同して利益を追求する時。
○器量に欠ける時は凶。 ○急速に事を計ってはならない。
○人に先んずることなく、遅れて行なうことは、柔順にして吉。
○万事、命じられて行なうがよく、自ら進んで行なうことはよくない。志を守ることができない人は凶。
○自分の職分を守って、妄りに動き求めなければ吉。
○散々苦労して、ようやく成功するという兆しが見える。
○農家は田園を守って(本業を守って)、他の仕事をうらやましく思ってはならない。
○物価は安くなるので、買うと利益を得られる。
○柔和・温厚・安静・順直・謙譲・恭敬・貞節・丁寧など全て吉。
○倹約する時。 ○卑賤で愚鈍の象(かたち)。 ○吝嗇の象(かたち)。 ○偏執することがある。