Ⅱ 易経(周易)の原理原則
万物は陰陽の相互作用によって生まれるとする考え方は、八(はつ)卦(か)太(たい)極(きよく)図(ず)によって示されている。八卦太極図とは、次のような概念である。なお、通常は、太極及び陽と陰は図形で現すが、ここでは簡略化して、太極を〇、陽を―、陰を‥と現すことにする(―や‥を「爻」と云う)。
乾 ―――(陽陽陽)
――(陽陽)
兌 ‥――(陰陽陽)
―(陽)←―を陽爻と云う
離 ―‥―(陽陰陽)
‥―(陰陽)
震 ‥‥―(陰陰陽)
〇(太極・陽と陰の混在)
巽 ――‥(陽陽陰)
―‥(陽陰)
坎 ‥―‥(陰陽陰)
‥(陰)←‥を陰爻と云う
艮 ―‥‥(陽陰陰)
‥‥(陰陰)
坤 ‥‥‥(陰陰陰)
右図で現したように、太極〇は陽―と陰‥が混在した根源的なエネルギー(元氣)であり、陽―は陽陽陽―――、陰陽陽‥――、陽陰陽―‥―、陰陰陽‥‥―に発展する。陰‥は陽陽陰――‥、陰陽陰‥―‥、陽陰陰―‥‥、陰陰陰‥‥‥に発展する。
陽―と陰‥から発展した八つの象(かたち)を八(はつ)卦(か)と云い、八卦は次のように整理される。
やまとことば(ヲシテ文字の音をひらがな「あいうえお」に当て嵌めると下のようになる)
八卦の象(かたち) 名前 自然 性質 人間家族
――― 乾(けん) 天(てん) あ 健(けん)剛大尊君子武人傲慢 父
‥―― 兌(だ) 沢(たく) 悦(えつ)口舌壊愛欲喧嘩論議 少女
―‥― 離(り) 火(か) う 明(みよう)智徳虚文化観察学問 中女
‥‥― 震(しん) 雷(らい) 動(どう)震進騒決断勇気性急 長男
――‥ 巽(そん) 風(ふう) い 入(にゆう)迷疑流通益命令偽る 長女
‥―‥ 坎(かん) 水(すい) え 陥(かん)難憂孚思想情流法律 中男
―‥‥ 艮(ごん) 山(さん) 止(し)静畜高守孤遅節固執 少男
‥‥‥ 坤(こん) 地(ち) お 順(じゆん)柔小卑貞節承容民凡 母
八卦の象(かたち) 名前 陰陽五行 方位(伏羲・文(ぶん)王(おう)) 天気
――― 乾(けん) 金 南・西北 晴れ
‥―― 兌(だ) 金 東南・西 小雨
―‥― 離(り) 火 東・南 晴れ
‥‥― 震(しん) 木 北東・東 晴れ雷地震
――‥ 巽(そん) 木 西南・東南 曇り
‥―‥ 坎(かん) 水 西・北 雪曇り
―‥‥ 艮(ごん) 土 西北・東北 薄曇り
‥‥‥ 坤(こん) 土 北・西南 曇り
以上の八卦を重ねて六十四卦(六十四通りの物語)として展開した。そして、森羅万象は全てこの六十四卦に当て嵌められる。すなわち、あらゆる現象を六十四卦のいずれかに当て嵌めれば、その時を読み解くことができるのである。
言い方を変えれば、森羅万象(宇宙で起こりえるありとあらゆる現象)は必ず六十四卦のいずれかに当て嵌まる。六十四卦に当て嵌まらない現象は何一つ存在しないと云うことである。つまり、六十四卦に書いてあることを全て理解すれば、宇宙で起こりえるありとあらゆる現象を読み解くことができるのである。
易経(周易)には次の原理原則があるとされている。
●変易 あらゆる事象(現象)は変化する。変化しない事象(現象)は何一つない。
●不易 事象(現象)は無秩序には変化しない。原理原則に基づいて変化する。
●易簡 変易・不易を踏まえて読めば、易経(周易)を理解することは容易である。
易経(周易)は、宇宙で起こりえるありとあらゆる現象を六十四通りの時(六十四卦)として捉えている。時とは時間軸の時・空間軸の時・社会軸の時の組み合わせである。その時々にどのように対応すべきか(時中)を教えてくれるのが易経(周易)である。