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易経(周易)を読み解く 十二(乾為天 九五)

九五 ――― ――― (乾為天) 之卦 十四火天大有

九五。飛龍在天。利見大人。
○九(きゆう)五(ご)。飛(ひ)龍(りゆう)天に在り、大(たい)人(じん)を見るに利(よろ)し。
 九五は、大空高く飛翔して、大地に慈雨を施(ほどこ)す龍のように天下を治めている。自分を導いてくれる禅の老師のようなブレーンを側近として指導を仰ぐか、それが無理なら、万(ばん)事(じ)研修(松下幸之助の言葉・自分の周りで起こること全てが學びであると云う考え方)と心得て、常に自(じ)戒(かい)(自らを律して君徳を維持)するが宜しい。
飛龍在天、大人造也。
○飛(ひ)龍(りゆう)天に在りとは、大(たい)人(じん)の造(しわざ)なる也。
 九五が大空高く飛翔して、大地に慈雨を施す龍のように天下を治めているのは、潜龍の時に確立した確乎不抜の志を実現すべく、滅(めつ)私(し)奉(ほう)公(こう)の精神で天命を体現する大人としての君德を具えており、その地位に驕(おご)ることなく、万事研修と心得て、常に自(じ)戒(かい)しているからである。

九五曰、飛龍在天、利見大人、何謂也。子曰、同声相応、同気相求、水流湿、火就燥。雲従龍、風従虎。聖人作而萬物覩。本乎天者親上、本乎地者親下。則各従類也。
○九五に曰(いわ)く、飛龍天に在り、大人を見るに利しとは、何の謂(い)いぞや。子曰く、同声相(あい)応じ、同気相求む、水は湿(うるお)えるに流れ、火は燥(かわ)けるに就く。雲は龍に従い、風は虎に従う。聖人作(おこ)りて萬(ばん)物(ぶつ)覩(み)る。天に本(もと)づく者は上(かみ)に親しみ、地に本づく者は下(しも)に親しむ。則(すなわ)ち各(おの)々(おの)その類(るい)に従う也。
 九五の爻辞に「飛龍天に在り、大人を見るに利し」とあるのはどういう意味ですか。
 孔先生は次のように解説された。
 同じ声(表面的に同質・表に現れる同じ意見や考え方)の者同士が応じ合い、同じ氣質(内面的に同質・表に現れない同じ意見や考え方)の者同士が応じ合うように、水が流れるところは潤(うるお)い、火が燃えるところは乾燥する。
 龍が大空高く飛翔すれば雲が集り、虎が吠えれば嵐を呼ぶ(すなわち、龍や虎は指導者としての資質を具えているから、萬物が龍や虎を仰ぎ見て従う)。以上と同じ理屈で、君子が地位を得て聖人と称されるようになれば、萬(ばん)民(みん)は聖人を仰(あお)ぎ見る。
 日(じつ)月(げつ)星(せい)辰(しん)は天を離れることなく、その役割を全(まつと)うし、山(さん)川(せん)草(そう)木(もく)禽(きん)獣(じゆう)は大地を離れることなく、その役割を全うする。すなわち、萬(ばん)物(ぶつ)は、各(おの)々(おの)その役割を全うする。

飛龍在天、上治也。
○飛龍天に在りとは、上(かみ)にして治(おさ)むる也。
 九五が大空高く飛翔して、大地に慈(じ)雨(う)を施(ほどこ)す龍のように天下を治(おさ)める。飛龍が指導者(トップ)の地位を得て、組織を治めるから、天下泰平になるのである。
飛龍天在、乃位乎天德。
○飛龍天に在りとは、乃(すなわ)ち天德に位(くらい)するなり。
 九五が大空高く飛翔して、大地に慈(じ)雨(う)を施(ほどこ)す龍のように天下を治(おさ)める。飛龍が君德具えた大人として、天の道(潜龍の時に打ち立てた確乎不抜の志・すなわち天命)を実現するべく指導者(トップ)の地位を得たのである。

夫大人者、與天地合其德、與日月合其明、與四時合其序、與鬼神合其吉凶。先天而天弗違、後天而奉天時。天且弗違、而況於人乎。況於鬼神乎。
○夫(そ)れ大(たい)人(じん)は、天地と其(そ)の德を合わせ、日(じつ)月(げつ)と其(そ)の明を合わせ、四(しい)時(じ)と其の序(じよ)を合わせ、鬼(き)神(しん)と其の吉凶を合わす。天に先(さき)だちて天違(たが)わず、天に後(おく)れて天の時を奉(ほう)ず。天すら且(か)つ違わず、而(しか)るを況(いわ)んや人に於(おい)てをや。況んや鬼神に於(おい)てをや。
 さて大人の中の大人たる飛龍は、決して天の道や地の道を踏み外すことなく、人の道を全うする君德を具えている。日(じつ)月(げつ)星(せい)辰(しん)の明智と歩を合わせて、季節の循環に従い、御先祖様や神々と吉(きつ)凶(きよう)禍(か)福(ふく)を共にしている。
 天の時に先(さき)駆(が)けても天の道を踏み外すことなく(天が追いかけてきてくれる)、天の時に遅れても天の時に合(がつ)致(ち)する(天が待っていてくれる)。
 天の時も大(たい)人(じん)の中の大人たる飛龍を支持しているのである。どうして、人々が飛龍を支持しないであろうか。どうして御先祖様や神々が飛龍を支持しないであろうか。

【以下、高島易断から占いとしての見立てを引用】
〇この爻が出れば、国家においては、大(たい)人(じん)たる君子を要職に抜擢して、天下泰平を実現する時である。天下広しと言えども大人たる君子の存在は貴重である。名君ならばそのことをよく知った上で、大人君子を思い切って抜擢任用して、その才能を発揮させるべきである。九五の爻辞にある「大人を見るに利し」の所以である。
○天が支援してくれる(天が助けてくれる)時。
○(何かを)祈り誓えば(相手が)感応する時。
○龍が天に昇るように、人も時を得て高名に達する時。