四十八水(すい)風(ふう)井(せい) ☵ ☴ 坎上巽下
互卦 三八火澤睽 ☲☱
綜卦 四九澤火革 ☱☲
錯卦 二一火雷噬嗑☲☳
水風井☵☴は良い時であり、わかりやすい成功物語である。水風井の物語は色々な事に当て嵌められる。埋もれていた組織や寂れてしまった村落が再び甦っていく物語として読み解くこともできれば、埋もれていた能力があることを当人や当該組織が自覚して、その能力を育てていく物語として読み解くこともできる。新しい事や新しい事業を開拓するために、必要な能力や資質を探して磨いていく物語として読み解くこともできる。
遷都により取り残された古井戸が物語の主人公である。長年使われることなく放置されていた古井戸の湧き水は風雨にさらされ、泥が堆積して本来の清水はすっかり泥水になってしまった。この古井戸の周辺に再び家が建ち並ぶようになったので、再び古井戸を整備して泥水を清水に戻し、清水を汲み上げて、周辺の人々に飲んで貰うことになった。泥水はすっかり濾過されて清水となり古井戸は見事に整備された。周辺の人々に飲まれるようになり、その範囲は徐々に広がっていき、周辺の人々のみならず、遠方の人々をも幸せにする。以上が水風井の物語の想定である。
経文(卦辞・彖辞、彖伝)の末尾の言葉に「凶」とあるので、この卦は盛運ではないと思う方もいるであろうが、古井戸の整備に失敗すれば「凶」ということであり、初爻から上爻までの流れを一つの物語として読めば、盛運であることは疑いない。
この古井戸をどのように解釈するかによって、色々な読み方ができる。時代の変化に適合できずに、一度は見捨てられた組織や地域が、何らかの理由で脚光を浴びるようになって再生されることになった。ところが長年放置されていたので、組織は崩壊寸前、地域のインフラはガタガタで使い物にならない。再び組織や地域を整備して甦らせようとする物語である。そのためには古井戸の湧き水に中る組織や地域の根源的な強みを見つけて、時代の変化に適合するように磨き上げることが必要となる。古井戸の泥水を清水に濾過するのである。
これまで全く気付かずにいた能力があったことを自覚した当人や当該組織が、その能力に気が付き、磨き上げようとする物語として読むこともできる。その能力に気が付くまでは、当人や当該組織は、その能力を古井戸の泥水だと錯覚していた。ところが、ある時にその能力は泥水ではなく、清水であることに気付いたのである。それは当人や当該組織にとって根源的な強みである。根源的な強みだから、磨き上げようと思えば無限に磨き上げることができるのである。以下省略。