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周易詳解(一部抜粋) 天水訟一

六天水訟 ☰ ☵

 互卦 四九澤火革  ☱☲
 綜卦  五水天需  ☵☰
 錯卦 三六地火明夷 ☷☲

 天水訟は組織内部で争い事が起こる時、内輪揉めする時である。上卦乾(組織上部)は剛健だから、下卦坎(組織下部)が太刀打ちできないほど強い。下卦坎(組織下部)は険しい気持ちで上卦乾(組織上部)に立ち向かおうとするが強敵なので迂闊に動けない。上卦乾(組織上部)は天なので上に在り、下卦坎(組織下部)は水なので下に在る。上と下が離れ離れで一体化できない。以上のような上卦と下卦の関係を組織内部の争い事、内輪揉めと見る。
 組織内部の争い事は勝った負けたの決着をつけてはならない。勝った負けたの決着は組織の分裂につながる。組織を維持するためにはお互い妥協して調停することが必要となる。調停するためには争っている者の間に立つ人格者が必要となる。天水訟ではその人格者を五爻と見立てる。五爻は組織トップの位である。
 以上のことから、組織を国家とすれば五爻は政府あるいは総理大臣、会社とすれば五爻は社長、会社以外の様々な組織とすれば五爻はリーダーと呼ばれる人、家庭であれば父親(場合によっては母親)である。組織内部の争い事が収まるかどうかは、五爻のトップがが人格者であるかないかで決まる。トップが人格者なら収まるが、そうでなければ収まらないのである。
 残念ながら今の時代は国家も会社もその他色々な組織も人格者がトップの位にあることが少ない。大きな組織になればなるほど人格者がトップの位にいない。なぜなら、偏差値教育の勝者がトップの位にいることが多いからである。偏差値教育の勝者は人格者ではない。ただ暗記力や理解力があるだけである。人格者とは仁の人である。仁とは思いやりの心である。易経では仁の人を君子と云い、また大人と云う。
 天水訟の時を全うできるのは五爻のトップが君子か大人の場合だけである。そうでなければ組織は分裂する。そのことを卦辞・彖辞で「惕(おそ)れて中すれば吉、終れば凶。大(たい)人(じん)を見るに利し。大(たい)川(せん)を渉(わた)るに利しからず。」と云っているのである。以下省略。