訟、有孚窒。惕中吉、終凶。利見大人。不利渉大川。
○訟(しよう)は、孚(まこと)有りて窒(ふさ)がる。惕(おそ)れて中すれば吉、終れば凶。大(たい)人(じん)を見るに利し。大(たい)川(せん)を渉(わた)るに利しからず。
訟は乾(剛健)と坎(険難)が反目して、一つの組織内(小は家庭、大は国家)で争い事や訴訟が起きる時である。下卦坎水には、誠の德が充実している(九二)が、九二は坎水の穴の中(六三と初六の狭間)に陥って閉(へい)塞(そく)している。戒(いまし)め懼(おそ)れて忍耐し、適切な時に訴訟を取り下げるが宜しい。
組織内で起きる争い事や訴訟は勝つか負けるか終わるまで続けても解決しない。剛健中正の天子九五のトップを争い事や訴訟を仲裁してくれる大人として仰ぎ、解決してもらうが宜しい。こういう時(組織内で争い事が起こっている時)にはリスクの高い事に立ち向かって行ってはならないのである。
彖曰、訟上剛下険。険而健訟。訟有孚窒、惕中吉、剛來而得中也。終凶、訟不可成也。利見大人、尚中正也。不利渉大川、入于淵也。
○彖伝は次のように言っている。訟(しよう)は上(うえ)剛(ごう)にして下(した)険(けん)なり。険にして健なるは訟なり。訟は孚(まこと)有りて窒(ふさ)がる、惕(おそ)れて中すれば吉とは、剛來(きた)りて中を得れば也。終れば凶とは、訟は成す可(べ)からざれば也。大人を見るに利しとは、中正を尚(たつと)ぶ也。大川を渉るに利しからずとは、淵(ふち)に入(い)る也。
彖伝は次のように言っている。訟は上卦乾が剛健、下卦坎が険難である。内(下)は険難な性質で、外(上)は剛健な性質なので争い事や訴訟が起こるのである。
戒(いまし)め懼(おそ)れて忍耐し、適切な時に訴訟を取り下げるが宜しい。剛健な九二が下卦に居て中庸の德を得ているからである。組織内で起こる争い事や訴訟は勝つか負けるか終わるまで続けても解決しない。組織内で争い事や訴訟を起こすべきでないのである。
剛健中正の天子九五を争い事や訴訟を仲裁してくれる大人として仰ぎ、解決してもらうが宜しい。九五のトップは中正の德を具えているので人々から尚(たつと)ばれているからである。
こういう時(組織内で争い事が起こっている時)にはリスクの高い事に立ち向かって行ってはならない。組織内で争い事や訴訟が起こっている時に、波風荒い大川を舟で渉れ(リスクの高い事に立ち向かって行け)ば顚(てん)覆(ぷく)して憂(ゆう)患(かん)の淵に沈むこと必至だからある。以下省略。