五十三風(ふう)山(ざん)漸(ぜん) ☴ ☶ 巽上艮下
互卦 六四火水未濟☲☵
綜卦・錯卦 五四雷澤歸妹☳☱
風山漸☴☶は、下卦艮☶の山の山頂に、上卦巽☴の樹木(巽は陰陽五行の木)が聳(そび)え立っている。樹木はこれからも成長し続けるが、山頂にあるので目立って成長しているようには見えない。すなわち、漸次(徐々)に成長する。上卦坤☷の大地の下に、下卦巽☴の木の種が埋まっている地風升☷☴の樹木がすくすく成長していくのとは対照的である。共に昇り進む時だが、風山漸は漸次(徐々)に昇り進む(成長する)のに対して、地風升はすくすくと昇り進む(成長する)のである。地風升は大盛運の時だが、風山漸は緩やかな盛運の時である。地風升は最後は(上爻に至ると)失速するが、風山漸は最後は(上爻に至ると)雲を突き抜けるように上昇していく。地風升は順調に升り進んで行くが、風山漸は紆余曲折しながら、緩やかに升り進んで行く。
卦象から見ると、下卦艮☶の山頂に上卦巽☴の樹木が聳え立っており、爽やかな風が吹いている。下卦艮には「崇める、神社」の意味もあることから、多くの人々から尊崇されている由緒ある神社に聳え立つ樹齢数百年以上の神木と見ることもできる。二三四爻の互体坎☵を川と見ると、伊勢神宮の五十鈴川を、三四五爻の互体離☲は天照大御神を連想する。すなわち、風山漸の物語は伊勢神宮を表していると考えることができる。
伊勢神宮と檜とは切っても切れない縁で結ばれている。二十年に一度行われる式年遷宮の時に用いる御(ご)造(ぞう)営(えい)用(よう)材(ざい)の自給自足を目標として「神宮森林経営計画」を策定しており、二百年生の檜の育成に取り組んでいる。以下、伊勢神宮のHPから引用する。
『宮(きゆう)域(いき)林(りん)と呼ばれる神宮の森は、内宮のほとりを流れる五十鈴川の上流に位置し、約5500ヘクタールあり、一般的には「神宮林」と呼ばれています。神宮では、大正12年(1923)から将来の遷宮を見据えて、御造営用材の自給自足を目標として「神宮森林経営計画」を策定し、200年生の檜の育成に取り組み、約100年が経過した今日でもその計画は続いています。
○宮域林の由来:宮域林は、内宮の御鎮座当時から神路山・天照山・神垣山などと呼ばれ、大御神の山として崇められていました。天武 天皇の御代に式年遷宮の制度が確立され、第1回式年遷宮(690)が行われた際、宮域林は御造営用材を伐り出す「御杣山」として定められました。その後、御用材の欠乏により御杣山は他の場所に移りましたが、今でも式年遷宮の最初のお祭りである山口祭・木本祭は宮域林で行われており最も神聖な「心御柱」もここから伐り出しています。このように宮域林は、古くから神宮の境内地として管理されてきた由緒のある森林です。以下省略。