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易経 繋辞上伝を読み解く 第五章 一

2021年2月25日

第五章
一陰一陽之謂道。繼之者善也、成之者性也。仁者見之謂之仁。知者見之謂之知。百姓日用而不知。故君子之道鮮矣。
一陰一陽之を道と謂(い)う。之を継ぐ者は善也。之を成す者は性也。仁者は之を見て之を仁と謂う。知者は之を見て之を知と謂う。
百(ひやく)姓(せい)は日に用いて知らず。故に君子の道は鮮(すくな)し。
○陽と陰が交わってあらゆる事象が創造される。陽が陰に転じ、また、陰が陽に転じて、あらゆる事象が生成発展する。以上のような生成発展を道と云う。
 宇宙的な生成発展を天の道と云い、惑星規模の生成発展を地の道と云い、人間社会における生成発展を人の道と云うのである。
 生成発展の本質は継続することにあり、継続することは絶対的な「善(真理)」である。天の道は宇宙の生成発展であるから、その継続性は永遠である。地の道は惑星の生成発展であるから、その継続性は永遠ではないけれども悠久である。人の道は人間社会や一人の人間の生成発展であるから、その継続性は限定的であり、また、刹那的である。
 人間社会(人間が創り出した国家や団体、企業、家族など様々な組織)の継続性は、その多くが限定的であり、刹那的である(国家における易姓革命、団体や企業の消滅、家族の断絶など)が、稀に悠久的に継続する人間社会(王朝が継続し続けている日本国、千年以上も続いている老舗企業や宗教団体など)も存在している。
 一人の人間の生涯は極めて限定的(精々生きても百年ちょっと)であるが、一人の人間が遺した業績や思想の影響力は幾久しく続き得(う)る(五千年前に誕生した易経が今も語り継がれているように)。
 以上のことから、あらゆる事象が継続することは絶対的な「善(真理)」である。天地の道は直接人の手に及ばないが、人の道を継続させること、すなわち、人間社会(人間が創り出した国家や団体、企業、家族など様々な組織)の継続性は、それに関わる人々の心に「善(真理)」があることによって、幾久しく続き得る。人間社会の継続性は、それに携わる人々の「性(善の心で生きる)」によって、長くもなり、短くもなるのである。
 思いやりの心を体現している仁者は、人の道が幾久しく長続きするためには、仁(思いやりの心)が何よりも大切だと主張し、知識を見識(揺るぎのない信念)に昇華できている知者は、人の道が幾久しく長続きするためには、知(知識に裏打ちされた見識=揺るぎのない信念)が何よりも大切だと主張する。
 仁者でも知者でもない普通の人々は、絶対的な「善(真理)=継続性」の恩恵を受けているのに、そのことを全く自覚していない。だから、君子(思いやりの心を体現している仁者や知識を見識(揺るぎのない信念)に昇華できている知者)の道を求める人々が出現することはほとんどないのである。