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易経 繋辞上伝を読み解く 第五章 二

2021年2月26日

顯諸仁。藏諸用。鼓萬物而不與聖人同憂。盛德大業至矣哉。
諸(これ)を仁に顕(あら)わし、諸(これ)を用に蔵(ぞう)し、萬物を鼓(こ)して聖人と憂(うれ)いを同じくせず。成(せい)徳(とく)大(たい)業(ぎよう)至れる哉(かな)。
 天地人の生成発展の恩恵は、仁(思いやりの心)が外に現れた永遠の命である。天地人の生成発展の作用は、知識に裏打ちされた揺るぎのない信念が内に現れた大業である。
 天地の生成発展は、無我の境地で萬物を奮い立たせて生々化成するが、人間社会の生成発展は、我を超越して無我の境地に辿り着いた聖人と称される人々によって率いられて行くので、聖人は天下国家を憂えるが、天地宇宙は憂えないのである。
 天地人の生成発展は仁(思いやりの心)と云う至善の徳によって成し遂げられるのだ。その大いなる事業(万物の生々化成)の効用は、何と偉大であろうか。

富有之謂大業、日新之謂盛德。
富(ふ)有(ゆう)、之を大(たい)業(ぎよう)と謂い、日新之を成徳と謂う。
○萬物は生々化成して何一つとして欠けているところがない(全てが必要・必然・最善である)。天地宇宙の生成発展は陰陽消長による一大事業(天地人の道)である。
 天地宇宙は日に新た、日に日に新たに生成発展して、止むことがない。これを陰陽消長(天地人の道)によって大いに盛んな徳が成ると云う。

生生之謂易。成象之謂乾。效法之謂坤。極數知來之謂占。通變之謂事。陰陽不測之謂神。
生生之を易と謂う。象を成す之を乾と謂う。法を効(いた)す之を坤と謂う。数を極め来を知る之を占と謂う。変に通ずる之を事と謂う。陰陽測(はか)られざる之を神と謂う。
○天地宇宙は生成発展(生々化成)して止むことがない。この陰陽消長の根源的な原理を六十四通りの物語として明らかにしたのが易経の書物である。
 乾(陽)の根源的なエネルギー(元氣)によって、巨大な宇宙空間に日月星辰など様々な惑星や風雨雷電など自然現象の創造が始まった。
 日月星辰など様々な惑星や風雨雷電などの自然現象(これらを象と云う)は、乾(陽)の根源的なエネルギー(元氣)を受け容れて、惑星(例えば地球)の上に山川草木や丘陵禽獣などを産み出した。
 数の概念により爻が創造され、爻が重なって卦(八卦・六十四卦)となり、六十四卦に卦辞・彖辞、爻辞がかけられて、未来の吉凶禍福を予測する。これが占筮である。
 卦辞・彖辞、爻辞を熟読し、占筮によって未来の吉凶禍福を予測して陰陽消長変化の原理に通達して、あらゆる事変に適切に対応する。易を学ぶ君子によって成し遂げられる大事業である。
 あらゆる事象は陰陽消長変化して変幻自在であるから、易を学ぶ君子でなければ、予測することが極めて難しい。天地初発の造化参神(天御中主神=太極・高御産巣日神=陽・神産巣日神=陰)の働きは、正しく神業と称するに相応しい。