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易経 繋辞上伝を読み解く 第十二章 三

 聖人と称される伏羲は、陽と陰が交わって八卦や六十四卦に発展していく原理を発見して、天地人の道が幽玄で奥深いことを観察した。そして、天地人の道が幽玄で奥深いことを無形の宇宙空間と有形の惑星(大地と山川草木禽獣等)として形容した。萬物は天地人の道の宜しきに適(かな)っている物として象(かたど)られた。それゆえ、萬物を象と言うのである。
 聖人と称される文王と周公旦は、陰陽消長によってあらゆる事象が変幻自在に変化することを観察した。陰陽消長変化により、あらゆる事象が出会って通ずる様子から、陰陽消長変化には常に見られる一定不変の法則があることを見抜いたのである。
 そこで、六十四卦に卦辞・彖辞を懸け、三百八十四爻に爻辞を懸けたのである。卦辞・彖辞並びに爻辞には、その時々の吉凶禍福を断定する文章が盛り込まれている。
 それゆえ、三爻により成る八卦が重なった六十四卦のそれぞれの象から吉凶禍福を断定した文章を卦辞・彖辞と言い、六爻から成る六十四卦の一つひとつの爻が位置している象から吉凶禍福を断定した文章を爻辞と言うのである。

極天下之賾者存乎卦。鼓天下之動者存乎辭。化而裁之存乎變。推而行之存乎通。神而明之。存乎其人。黙而成之。不言而信。存乎徳行。
○天下の賾(さく)を極むる者は卦に存す。天下の動を鼓する者は辭に存す。化して之を裁するは變に存す。推して之を行ふは通に存す。神(しん)にして之を明らかにするは、其人に存す。黙して之を成し、言はずして信なるは、徳(とつ)行(こう)に存す。
 すなわち天地宇宙のあらゆる変化は易の書においては六十四卦として物語化されている。そしてあらゆる変化に対処するための活動を鼓舞するための言葉が卦爻辞に示されている。変化に対処すべく適切に活動して、これまでの誤ったやり方を裁ち切ることを「變」と表現する。適切に対処する方法を推し広げて具体的に行動することを「通」と表現する。神仏のように霊妙な易の働きによって宇宙人生の変化を明らかに提示できるのは、易に通達している聖人や賢人と称される偉人だけである。黙っていても變通を成就し、何も言わなくても萬民から信服されるのは、徳性を磨き続けた聖人や賢人と称される人にしてはじめて可能なことである。