十六 雷地豫 ‥‥―震雷 ‥‥‥坤地
互卦 三一澤山咸 綜卦 十五地山謙 錯卦 九風天小畜
豫、利建侯行師。
○豫(よ)は、侯(きみ)を建(た)て師(いくさ)を行(や)るに利(よろ)し。
豫は悦び楽しむ時である。一陽九四に五陰が順い動く。地中に潜蔵していた陽気が雷動(春雷)で地上に出て、草木は芽を出し、花が咲き、天地萬物悦楽する。
喜び楽しむ豫の時は、諸侯を建てて(側近に任せて)兵を動かす(組織を運営する)が宜しい。諸侯(側近)は民(部下や民衆)を悦楽させ、兵(組織)は暴逆を討伐(組織に対する反逆を制圧)する。(公田連太郎述「易経講話二」明德出版社には、豫の字の本義について次のように説明してある。以下、要約して引用する。「豫の字の本義は、大きい象(ぞう)である。説文の注によれば、ゆっくりとしてゆるやかなるものである。心が広く、ゆったりとして、ゆとりがあるので、悦び楽しむことができるのである。ゆったりとしておるので、あらかじめ後の備えをすることもでき、落ちついて楽しむこともできるのである。説文には『豫は象の大なる者なり』とあり、その注に『此れ豫の本義なり。大なれば必ず寛裕なり。故に事に先だちて備う、之を豫と謂う』といってある。また、悦楽の豫が行き過ぎたのが、遊び楽しむの豫となるのである。以上、要約して引用した。)
このことから、豫とは寛裕で事前に準備するから悦び楽しむことであるが、悦び楽しむことが行き過ぎると、遊び楽しむ、すなわち、乱れるという意味になることがわかる。豫の卦辞・彖辞、彖伝、大象伝には、豫の悦び楽しむ面から文章が書いてあるが、爻辞と小象伝には、豫の遊び楽しむ、すなわち乱れる面から文章が書いてあるように感じる。
以下省略。次の書籍をご覧ください。