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時の物語 周易六十四卦 校正 17

三十四.暴走しないよう自制する時

 大きな衰運の中にあり、真正面から立ち向かってはならない「逃げるが勝ちの時」と正反対の時。大きな盛運の中にあり、スピードが出すぎて脱線しかねないほど調子に乗るのが「暴走しないよう自制する時」だ。何をやっても絶好調なので、ついついやり過ぎてしまう。大盛運の中にあるからこそ、自制してやり過ぎないように気を付けなければならない。大盛運も大衰運も自分の意思で選べない。天から与えられた宿命だ。宿命にどのように対応するかで、その後の運命が決まっていく。

 「暴走しないよう自制する時」では「二三.人事を尽くして天命を待つ時」に登場した「あなた(わたし)」の前半生を描く。

 わたしは高校に入学する一寸前までは普通の人生を歩んでいた。お金持ちでも貧乏でもない普通の家庭で平凡に育った。幼稚園から中学に至るまで優等生でも劣等生でもなく、友達も多くもなく少なくもなく、大きな怪我や病気にかかったこともない。将来の仕事や生活についてこれといった夢もなく、普通に平凡な人生を歩めればそれでよいと思っていた。ところが、中学校三年になった頃から身体的かつ精神的に不安定な状態となり、両親や学校の先生から心配されるようになった。今振り返るとどうでもよいことを真剣に悩んでいた。思春期特有の微妙な悩みだ。両親や学校の先生からは、「一体どんなことに悩んでいるの?」と聞かれるので、「これこれこういうことで悩んでいる」と答えるのだが、「そんなことは大したことではないだろう」と突き放される。気持ちの持って行き場がなくなり、どんどん人と話をするのが嫌になった。勉強するのも嫌になり成績はどんどん悪くなった。だから高校の三年間は完全に劣等生だ。試験の順位もビリではなかったがビリに近かった。自暴自棄になり進学や就職のことも何も考えられなくなった。無気力かつ絶望的な気持ちで学校に行っていた。勿論友達など一人もいなかった。一時は家に引きこもって不登校となり進学すら危うかった。そんなわたしだが自分のプライドを保つためにあることを趣味にしていた。趣味は楽しかった。そして、趣味が自分を救ってくれた、高校三年になり就職か進学かを決める時にある先生がわたしの趣味を褒めてくれて、その分野でがんばりなさいとある学校に推薦してくれた。推薦入学だから試験がなかった。試験があったら入れなかっただろう。ある先生のお陰で就職せずに学生としての生活を続けられることになった。
 趣味でやっていたことを習うのだから、学校に行くことが楽しかった。高校時代には一人もいなかった友達もできた。だがいつまでも学生生活は続かない。どこかに就職しなければならない。趣味でやってきたことを仕事にする選択もあったが、その分野で働いて一人前になることはかなり困難だったので、普通の仕事に就くことに決めた。その仕事がきっかけとなり、やがて公務員になった。公務員は安定している。ようやくわたしも普通の人生を歩める立場になった。彼女もできたので三十歳の時に結婚した。実家を増築する形でマイホームも建てた。子供も二人産まれた。公務員生活は順調だった。だが、一つだけ満たされないことがあった。仕事は安定していたが自分のやりたい仕事ではない。自己実現してなかった。贅沢な悩みかもしれないが人生一度きり、自分がやりたいことを仕事にしたかった。以下省略。