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時の物語(易経短編小説集・近日中に出版予定)64

六十三.全てが完成した時

 大学に「事に終始有り」とあるが、物事には始めがあれば必ず終わりがある。終わる時は全てが完成した時である。ある面から見れば物事が終わり完成することは喜ばしいことである。だが別の面から見れば物事が終わり完成することは、もう先がない、伸びしろがないということである。物事がピークに達すれば落ちていくしかない。手放しに喜んでいるわけにはいかないのだ。それが「全てが完成した時」である。

 「全てが完成した時」の主人公は「四十九.抜本的に変革する時」「五十.新体制を構築する時」「五十九.砕け散ってまとまる時」の舞台となった未来の皇国日本に暮らしている「あなた(わたし)」である。

 江戸末期、日本は西欧列強に屈服せず明治維新で体制を刷新して近代国家として自主独立を目指した。日清・日露戦争に勝利して世界の一流国入りしたが、人種差別撤廃を国際社会で主張し西欧列強から疎んぜられ、大東亜戦争に大敗して以来、自主独立の精神を忘れ去ってしまった。その日本が長い眠りから目覚めて自主独立しようとしている。
 明治政府の統治体制を参考に新しい体制を整えた皇国日本は、米国に代表される海外諸国やその背後で世界を制御しようとしているグローバル権力からの影響力を排除するために、秘かに核武装を進めた。戦後のお花畑体制では世界で唯一の被爆国の日本が核武装することはタブー視されていたが、「お花畑」から卒業した国民は「被爆国だからこそ二度と被爆しないように核武装すべきだ」と考えるようになった。公言すると核保有国から反対されるので極秘裏に核武装は進められた。以下省略。