五十四．媚び諂って失敗する時
自分が得しようと考えて、誰かに何かに媚び諂えば一時は上手く行っても必ず失敗する。「媚び諂って失敗する時」は自分が得しようと考え行動した結果である。人生には二つの大事なステージがある。一つは「就職」というステージ、もう一つは「結婚」というステージである。この二つのステージは幸せな人生の登龍門である。誰もが幸せな人生を送りたい。だが、自分が得しようと考えて誰かに媚び諂えば、大事なステージから転げ落ちる。
「媚び諂って失敗する時」の主人公は「結婚」という人生の大事なステージに見放された（あるいは、満たされていない）六人の「あなた（わたし）」である。
○一人目のあなた（わたし）
わたしは昔から夢を追いかけて生きてきた。けれども一度も夢を叶えたことはない。わたしの夢や理想が実現すれば幸せになれると信じてきた。今もまだ信じている。そんなわたしの直ぐ近くに素敵な方が現れた。わたしはその方と結婚することを夢見るようになった。夢はわたしの生き甲斐だ。夢がなければ生きる意味がない。わたしはいつまでも素敵な方を見ていたいと思うようになった。毎日その方の近くにいたいと夢見るようになった。ある日、思い切ってその方に告白した。けれども、その方はつれない態度で首を横に振った。わたしはショックだった。今度もまた夢は叶わなかった。わたしの夢はどうしていつも叶わないのだろう。友だちからは「あなたは高望み過ぎるのよ」とよく言われるが、自分ではそう思っていない。夢は叶うものだと信じている。けれども一度も夢を叶えたことはない。小さな頃から毎日夢見て生きてきた。五年経っても十年経っても十五年経っても二十年経っても夢を叶えることはできなかった。二十歳になった今、このまま夢を追いかけていると、徒に年を重ねて一つの夢も叶わない人生になってしまう。そんな不安が心を過(よぎ)るようになってきた。直ぐ近くに現れた素敵な方とお付き合いはできなくても、いつも近くにいるのだから、それだけで幸せだと考えればよい。そう考えることにしたのである。
○二人目のあなた（わたし）
自分で言うのは烏(お)滸(こ)がましいが、わたしは容姿端麗で頭も良く異性にもてた。以下省略。
