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時の物語(易経短編小説集・近日中に出版予定)11

十.カリスマに仕える時

 次は「カリスマに仕える時」の物語である。「カリスマ」を分かり易く例えれば織田信長のようなお殿さまである。実際の人物像は違ったようだが、織田信長のイメージは「統率力が高い」「独裁者」「強引」「わがまま」「独りよがり」「自分に厳しいが部下にはもっと厳しい」「人の意見を聞かない」「短氣」などである。このような「カリスマ」があなたの属する組織のトップだったら、あなたの苦労は並大抵なものではない。けれども、組織に属している以上、「カリスマ」に必死になって命懸けで付いて行き、絶対に「カリスマ」の虎の尾を履んではならない。もし、あなたが虎の尾を履んだら大変なことになる。それが「カリスマに仕える時」である。
 「あなた(わたし)」が属している(小は家庭から大は国家までの)組織にも「カリスマに仕える時」があったかもしれない。あるいは、これから「カリスマに仕える時」が来るかもしれない。常に「カリスマ」がトップに君臨しているの組織もあるだろう。

 「カリスマに仕える時」の主人公は、生まれつき何をやらしても直ぐにできてしまう極めて適応能力が高い「あなた(わたし)」である。

 わたしは小さな頃から家族や親戚のみならず近所の人々から「神童」と呼ばれていた。今でも自分が生まれた時の光景や母親の言葉をはっきりと記憶しているし、その時は言葉の意味は分からなかったが、数ヶ月経つと母親が何を言っているのか理解することができた。頭だけでなく身体の働きも同じで、普通の赤ちゃんならようやくハイハイできるころにしっかり立ち上がって歩くことができた。このようなわたしの姿を見て、家族も親戚や近所の人々もみんな驚いて、誰が名付けたわけでもなくいつの間にやら「神童」と呼ばれるようになっていた。幼稚園に通い始める前に、両親にせがんで小学生向きの伝記を購入してもらい夢中で読み、ある出版社の伝記シリーズを全て読み終えてしまった。
 幼稚園に通い始めると、わたしが幼稚園生とは思えない知識を持っていることに、先生方は大変驚愕されて、ここでもまた「神童」と呼ばれるようになり、小学校・中学校・高校・大学と「神童」と呼ばれ続けて青少年期を過ごした。成績もトップクラスを維持し続けたし、スポーツも万能で美術も音楽も得意だ。あえて苦手なことを挙げれば、母親がどんなに調理に工夫してもピーマンだけは未だに食べられない。こんなことを言わない方がよいかもしれないが何をやってもできてしまうので、何に対しても一生懸命になれない。一生懸命になれないから、成績はトップクラスを維持し続けているが、一度もトップになったことはない。スポーツもプロになれるほどの実力はない。美術も音楽も同じだ。以下省略。