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時の物語(易経短編小説集・近日中に出版予定)5

四.リーダーの資質を学ぶ時

 次は「リーダーの資質を学ぶ時」の物語である。「あなた(わたし)」が人の上に立った時は「リーダーの資質を学ぶ時」である。すでに人の上に立っている「あなた(わたし)」にも「リーダーの資質を学ぶ時」があったはずだ。やがて人の上に立つことが確実な「あなた(わたし)」は早い段階で「リーダーの資質を学ぶ時」を経験することが望ましい。多かれ少なかれ誰もが人の上に立つ時が来るのだから、常に「リーダーの資質を学ぶ時」を確保しておくことが理想である。どんな人でも「リーダーの資質を学ぶ時」がある。「リーダーの資質を学ばなければならない時」もある。
 「リーダーの資質を学ぶ時」の物語。主人公は「あなた(わたし)」である。

 わたしは父親が立ち上げた地方にある中小企業の二代目で今三十五歳。学校を出て東京に在る同業で老舗の企業に十年ほど勤めて社会人としての経験を積んだ後、地元に戻り父親の会社に入り、製造担当として二年ほど経験を積んできた。あと十年ほど営業や総務の経験を積んでから父親の下で専務を務め、五十歳のころに社長として事業を引き継ぐつもりでいた。
 ところが、父親は出張先で交通事故に巻き込まれて、あっという間になくなってしまった。母親は専業主婦の経験しかなく会社のことは何も分からない。そこで、一人っ子のわたしが急遽後を継ぐことになった。わたしはあと十年は一従業員として各分野の仕事を覚えようと思っていたので経営の勉強など全くしていない。立場上社長を継ぐことはできても、社長として会社を切り盛りしていく自信など全くない。
 わたしが父親から継いだ会社は、菓子製造卸販売業で和菓子を中心に洋菓子も製造している。父親は創業前は和菓子製造販売業に勤めており、そこで和菓子作りを習得し、自分で和菓子を作ってみたいと思うようになったという。四十の時に二十年以上勤めていた会社を辞めて菓子製造卸販売業を立ち上げて十年が経過したところだった。亡くなった時は五十歳。六十までは息子に頼らず自分の力で会社を切り盛りして、六十五になったら息子に引き継ごうと考えていた。わたしもそのつもりでいたので何の準備もしていなかった。以下省略。