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時の物語 周易六十四卦 校正 27

四十四.悪魔が忍び込む時

 悪魔が近付いてくれば誰もが逃げる。だが、「悪魔が忍び込む時」の悪魔は「天使」や「妖精」のような魅力的な姿でわたしたちの目の前に現れる。優秀ではない人の集団に優秀な人が現れたり、男ばかりの集団の中に魅力的な女性が現れたり、甘いものを控えている人の前に美味しそうなスイーツが現れたりするのと同じだ。誰もが手を出したくなるが、うっかり手を出そうものなら組織を乗っ取られたりかき乱されたり、ダイエットでスリムになった身体が反動で太ったりする。突然あなたの目の前に「天使」や「妖精」のような魅力的な人物や物事が現れたら、疑ってかかる必要がある。それが「悪魔が忍び込む時」である。

 「悪魔が忍び込む時」の主人公は明治時代に創業し、日本に古くから伝わる古典を分かりやすく解説することで定評のある月刊「天命」を長年発行している出版社「日本の心」に勤務している沢山の「あなた(わたし)」である。

 出版社「日本の心」は明治二十三年「教育勅語」が発布された翌年に日本古典研究者菅原高天によって創業された。明治に入り急激に西洋化が進み古くから指導者層に学ばれた日本古典が軽視された。日本的な道徳心が軽視され社会秩序が乱れていることを心配された明治天皇の命令によって「教育勅語」が新時代の国際社会にも通じる人類共通の道徳律として打ち立てられた。そのことに感銘を受けた菅原高天が日本古典を守るために創設したのが出版社「日本の心」である。菅原高天の先祖には著名な菅原道真が居る。菅原家は代々皇室に仕える学者の家系である。明治維新により西洋化を進める政府の意向で日本古典を研究している菅原家と皇室のつながりは断ち切られてしまった。「このままでは日本古典の研究者が減少して、日本古典が衰退してしまう」と考えた菅原高天(以下「高天」と略す)は日本古典の維持普及と研究者の確保を目的に毎月「天命」という月刊誌を発行することを決意、明治二十四年出版社「日本の心」設立と同時に月刊「天命」の発行を始めた。
 日本の伝統文化を大切に考える保守層に支持され発行以来根強い人気を誇っている月刊「天命」だが、大東亜戦争敗戦後の占領期にGHQにより発行停止の憂き目に遭い、経営の維持が危ぶまれた時期もあったが、月刊「天命」の読者が資金的に支え、発行停止が切れた昭和二十五年から復刊し令和の今日に至るまで発行部数二十万を維持している。現在の社主(社長)は五代目で六十三歳、相談役(四代目)は八十八歳と高齢だが極めて元氣で心身共に健康である。「日本の心」はこれまで日本国内限定で事業を展開してきたが、令和に入り日本の文化が世界的に注目されるようになり、海外における月刊「天命」の発行を希望する声が大きくなった。五代目社主は三年かけて社内で発行の是非を検討した結果、発行すべきという意見に集約され、また日本古典を広く普及させるチャンスでもあるので、令和七年から発行することを決めた。以下省略。