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時の物語(易経短編小説集・近日中に出版予定)2

時の物語

 大国主の神に導かれて、文王・周公旦・孔子が書き加えた易経の文章は難解であり、専門知識がないと記号を読み取ることができないので、易経は皇族や武家などの為政者を中心に限られた人にしか読まれていない。現代では占いの書として読む人も居るが一般的にはあまり知られていない。易経の六十四卦は宇宙で起こるありとあらゆる現象を六十四の類型(六十四の時)に分類して、その時々にどのように対処したらよいかが書いてある。
 よって、今自分が生きている時が六十四類型のどれかが分かれば、その時にどのように対処すればうまくいくかも分かる。易経は充実した人生を歩んでいくための指南書なのである。
 けれども、難解で理解するのに時間がかかるので、残念ながらほとんどの人の役に立っていない。これは実にもったいないことである。
 そこで、誰が読んでも分かるように、易経の六十四卦を「時の物語」として記していく。主人公はこの本を読んでいる「あなた」である。「時の物語」では「あなた」を「わたし」と読み替えて書いていく。「わたしだったら、この時にどのように対処するだろう」と想像しながら読み進めてほしい。

一.がんばる時

 最初は「がんばる時」の物語である。誰にでも「がんばる時」がある。がんばればがんばるほど報われる時がある。「あなた(わたし)」にも「がんばった時」があったはずだ。がんばったから報われた時があったはずだ。あるいは、これから「がんばろう」と思っていることがあるかもしれない。または、いつも「がんばっている」人もいるだろう。人間には「がんばる時」がある。「がんばらなければならない時」もある。
 「がんばる時」の物語。主人公は「あなた(わたし)」である。

 わたしには夢や希望がある。いつも夢や希望を叶えたいと思っている。だが、夢や希望を叶えたことがない。いつも途中で挫折してしまう。なぜだろう?
 ある時、こんなわたしの悩みを親友に打ち明けたところ、親友は「あなたの夢や希望の矢印は、あなたに向かっているの?それとも、他人や社会に向かっているの?」と聞かれた。わたしは「うぅん…」と考え込んでしまった。そして、わたしの夢や希望を言葉にしてみた。それは「好きなことをして生きていくこと」や「自己実現すること」だった。そのことを親友に伝えると、親友は「矢印は自分に向かっているんだね。だから途中で挫折してしまうんだと思うよ」と言った。わたしはまた「うぅん…」と考え込んでしまった。そんなわたしを気遣うかのように親友は言葉を続けた。「夢や希望の矢印が自分に向かっていると、何らかの理由で自分の気持ちが萎えてしまったときに、それまで夢や希望を叶えるためにしてきた努力を止めてしまう人が多いんだ。だから途中で挫折してしまうんだ。あなたにも心当たりがあるんじゃない?」以下省略。