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人生に役立つ易経 火澤睽

 国家においては、政府は国民が貧しくなり生活が苦しくなっていることに目を向けず予算を確保するために増税や社会保険料の引き上げなどの無慈悲な政策を進める。国民は国家への帰属心を失い国民が苦しんでいることに目を向けようとしない政府や政治家に愛想を尽かして、政治への関心を失い選挙に行かなくなる。
 家庭も企業も国家も火澤睽の時に陥ると、組織の一体感を失い人間関係が悪化して、多くの人が不幸になる。
 爻の位置関係を見ると、風火家人と反対に火澤睽は位を得ていない(陽爻陰爻が本来在るべき位置にない)爻が多い。心が正しくない人が集まっている形である。人々の心が正しくないのは上の者と下の者の考え方や価値観が反対を向いて背き合っているからである。火澤睽の時を解決するためには、反対を向いている考え方や価値観を一つの方向に整え、背き合っている関係を正すことが必要である。
 易経では人間関係を「応」と「比」で表している。応は上卦と下卦の同じ位置の爻である。初爻と四爻、二爻と五爻、三爻と上爻の関係が応である。応の関係は深い関係である。深い関係が良好ならば物事はスラスラ進む。深い関係が悪くなると物事は停滞する。火澤睽は上の者と下の者の深い関係が悪化している。
 組織を立て直すためには、応の深い関係を正すしかない。応の関係を企業で例えると、初爻と四爻は一般社員と役員、二爻と五爻は中堅社員と社長、三爻と上爻は部長や店長など現場の長と会長や相談役である。それぞれがよく話し合ってお互いを理解するようになれば応の関係が良くなる。応の関係が良くなれば組織全体が良くなり、組織風土も改善する。

 以上が火澤睽の概要である。
 ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。

睽、小事吉。
○睽(けい)は、小(しよう)事(じ)は吉(きつ)。
 睽はお互いに背(そむ)き合う時。上卦離(火)は上(じよう)進(しん)(火は上に向かう)して、下卦兌(沢)は下(か)進(しん)(沢の水は下に向かう)する。お互いの意志が正反対を向いているので、和合することなくお互い背中を向けて反目する。
 以上のような時だから、大きな事業に取り組んではならない。しかし、明智明德(上卦離)を具えており、悦ぶ(下卦兌)卦德があるので、小さな事業なら為し遂げることができる。以下省略。