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人生に役立つ易経 水山蹇

 企業の経営に当て嵌めてみると、経営環境が厳しくなり、前途には大変な困難が待ち受けている。まずは、目前の山を登り前途の困難を見渡して、具体的な対策を練り上げなければならない。山を登り始める前に平地で大きく深呼吸して、策をイメージする。それから、ゆっくり山に登って頂上に立ち、前途の困難を見渡して具体的な対策を構想し、組織一体となって力を合わせれば、やがて困難を乗り越えられる。これが水山蹇の時である。
 卦象から見ると、下卦艮☶の山は上卦坎☵の困難をしっかりと受け止めてくれる一方で、山を登ること事態が困難である。ようやく山頂に着いたと思ったら、互体二三四爻の坎☵の困難が待ち受けている。山を登る困難を乗り越えて頂上に立ったら、そこにまた困難が待ち受けている。更に進んで上卦に至ればそこにも坎☵の困難が待ち受けている。困難の三重苦である。けれども、困難に対応する時間はたっぷりある。「何とかなるさ」と達観して、対策を練り上げて時を待つのである。対策を練り上げるときには互体二三四爻の離☲の「明智」や「学問」の性質を活かして最善の対策を打ち立てるがよい。

 以上が水山蹇の概要である。
 ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。

蹇、利西南。不利東北。利見大人。貞吉。
○蹇(けん)は、西南に利しく、東北に利しからず。大人を見るに利し。貞にして吉。
 蹇は前方(上卦)に険阻艱難(坎水☵)が待ち構えている時に処する(下卦艮☶の止まる)道を説いている。西南の方位に行くが宜しい。或いは西南は文王八卦方位で坤(地)の方角なので、険阻艱難な時は無闇に動かず、平らな大地に止まって時に順うべきだと解釈することもできる。東北の方位に行くのは宜しくない。或いは東北は文王八卦で艮(艮)の方角であり、山は険阻艱難の象徴なので険阻艱難な時は険阻艱難に立ち向かってはいけないと解釈することもできる。
 以上の解釈から、険阻艱難な時は、険阻艱難な山に登ろうとせずに平らな大地に止まって、偉大な人物を見習うが宜しい。偉大な人物に見習えば険阻艱難な時に対処する道が見えてくる。偉大な人物を見習って正しい道(道德)を固く守れば、険阻艱難な時を乗り越えることができる。以下省略。