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易経(周易)を読み解く 十七(坤為地 五・六・用)

六五 ‥‥‥ ‥‥‥ (坤為地) 之卦 八水地比

六五、黄裳、元吉。
○六(りく)五(ご)、黄(こう)裳(しよう)、元(げん)吉(きつ)なり。
 六(りく)五(ご)は坤の天子(雇われ社長)。乾の天子(オーナー)の代理人。中庸の德を具えた坤の天子は乾の天子に全面的に支持されている。それゆえ、大いに宜しきを得る。
象曰、黄裳元吉、文在中也。
○象に曰く、黄(こう)裳(しよう)元(げん)吉(きつ)とは、文(ぶん)中(ちゆう)に在(あ)れば也。
 小象伝は次のように言っている。中庸の德を具えた坤の天子(六五)は乾の天子の代理人として乾の天子から全面的に支持されている。それゆえ、大いに宜しきを得る。六五が多彩な才德を包み隠して、乾の天子の代理人として時に中るからである。

君子黄中通理、正位居體。美在其中、而暢於四支、發於事業。美之至也。
○君子は黄(こう)中(ちゆう)にして理(り)に通じ、位(くらい)を正しくして體(てい)に居(お)る。美其(そ)の中に在り、而(しか)して四(し)支(し)暢(の)び、事業に發(はつ)す。美の至り也。
 雌馬の君子(坤の天子)である六五は、中(ちゆう)庸(よう)の德を具えており、己を虚(むな)しくして雄馬(乾の天子)に仕える。六五は道理に通じているから、君(くん)臣(しん)上下の位(くらい)を正して、陰の本体(陽に対する陰の役割)に泰(たい)然(ぜん)と安んじている。
 陰德が美しく内面に満ちており、風(ふう)韻(いん)となって外面に現われている。あらゆる事業は発展・発達して、大いに成果を上げる。雌馬の君子の美德の至れるものである。

【以下、高島易断から占いとしての見立てを引用】
〇この爻が出たら、中庸にして柔順、温和にして、功を上げても、苦労していることを誇らない。恭しく謙遜し、篤実ゆえ、権力を手に入れても驕り高ぶらない。その分をよく守り、終には大吉を得る。だが、表に出ようとしている人がこの爻を出した場合、家臣なのに君主に刃向かい、妻なのに夫よりも早死にし、子供が親を侮(あなど)るなど、多くの人がその本分を忘れてしまう。慎しむべきである。

上六 ‥‥‥ ‥‥‥ (坤為地) 之卦 二三山地剝

上六、龍野于戰、其血玄黄。
○上(じよう)六(りく)、龍(りゆう)野(や)に戰(たたか)う。其(そ)の血玄(げん)黄(おう)なり。
 陰德を積むべき坤の君子(雌馬)が勢い余って龍(雄馬)のように振る舞うようになった。こうなると乾の君子(雄馬)が黙っていない。「坤(陰)が乾(陽)の役割を果たすことはまかりならぬ」と、乾の龍(乾の天子)と坤の龍(坤の天子)が決闘する。乾の天子と坤の天子が決闘すれば、(陽の)黒い血と(陰の)黄色い血を流して、共に傷付き破滅する。
象曰、龍野于戰、其道窮也。
○象に曰く、龍野に戰うは、其の道窮まれば也。
 小象伝は次のように言っている。乾の龍と坤の龍が決闘するのは、雄馬(陽)に順う雌馬(陰)の道(乾の根源的なパワーを受容する陰の存在意義)も、雌馬(陰)に尊崇される雄馬(陽)の道(坤に全面的に受け容れられて萬物を創造を始動する陽の存在意義)も、共に行き詰まって、天地創造の原理原則を逸脱しようとしているのである。
陰疑於陽必戰。為其嫌於陽也、故稱龍焉。猶未離其類也、故稱血焉。夫玄黄者、天地之雜也。天玄而地黄。
○陰、陽に疑わるれば必ず戰う。其(そ)の陽に嫌(うたが)わしきが為め也、故に龍と稱(しよう)す。猶(な)お未(いま)だ其の類を離れざる也、故に血と稱す。夫(そ)れ玄(げん)黄(おう)は、天地の雜(まじわり)なり。天は玄(げん)にして地は黄(おう)なり。
 陰德を積むべき坤の天子が勢い余って龍(乾の天子)のように振る舞うようになれば、乾の天子は黙っていられない。「坤(陰)が乾(陽)の役割を果たすことはまかりならぬ(「乾は大(たい)始(し)を知(つかさど)り、坤は成(せい)物(ぶつ)を作(な)す・繋辞上伝」と云う陰陽の根本原理に背いてはならぬ)」と、乾の龍が坤の龍に決闘を挑(いど)むのは必(ひつ)定(じよう)である。陰が本来の役割を忘れて陽の領域に踏み込んだからである。それゆえ、陽の代名詞である「龍」と称するのである。
 しかし、上六は本来陰であるから、龍のごとく陽を装っても陰を離れることはできない。だから、陰の代名詞である「血」と称するのである。
 (陽の)黒い血と(陰の)黄色い血が流れるのは、乾(陽)と坤(陰)が決闘し、天は黒い血を地は黄色い血を流して共に傷付いたのである。陰が増(ぞう)長(ちよう)すると世を乱す。それゆえ、初六の段階で「霜を履(ふ)みて堅(けん)氷(ぴよう)至る」と戒めたのである。

【以下、高島易断から占いとしての見立てを引用】
〇私利私欲をどん欲に追求し、人に被害を与え、自分もまたブーメランのように被害を蒙る時。自らの心を省みて私利私欲を取り去り柔順な心を養うべし。血氣盛んで、直ぐに人と争う時でもある。自分の本分を守って、他から攻撃されても、争いに応じてはならない。以上のように謹慎すれば、被害を免れることができるかもしれない。
○小人が善からぬ事(不善)を企てる時。 ○相手も自分も共に傷付く時。

用(よう)六(りく)  陰の用い方

用六。利永貞。
○用(よう)六(りく)。永(なが)く貞(ただ)しきに利(よろ)し。
 用六は陰の用い方である。陰は常に陽の裏側に居(い)て、蔭(かげ)で陽を支えるという自分の役割をしっかりと認識して、幾(いく)久しく、雄馬に順う雌馬の役割を固く守るが宜しい。
象曰、用六永貞、以大終也。
○用六の永(えい)貞(てい)は、大を以(もつ)て終わる也。
 陰の正しい用い方は、常に陽の裏側に居て、蔭で陽を支えるという自分の役割をしっかりと認識すること。幾(いく)久しく、雄牡馬に順う雌馬の役割を固く守ることである。
 陰が先頭に立てば道に迷って行き詰まるが、陽の作用を全面的に受(じゆ)容(よう)することによって、萬(ばん)物(ぶつ)は大いに生成化(か)育(いく)する。それが陰の役割(「乾は大(たい)始(し)を知(つかさど)り、坤は成(せい)物(ぶつ)を作(な)す・繋辞上伝」)であり、存在意義なのである。