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超釈古事記 天の岩屋戸 一

2021年7月7日

天の岩屋戸

【書き下し文】
故(かれ)、是(ここ)に天照大御神見(み)畏(かしこ)みて、天(あめ)の石(いわ)屋(や)の戸を開きて、刺(さ)し籠(こも)り坐(まを)しき。爾(しか)くして高(たか)天(あま)原(はら)、皆(みな)暗(くら)く、葦(あし)原(はらの)中(なかつ)國(くに)、悉(ことごと)く闇(くら)し。此(これ)に因(よ)りて常(とこ)夜(よ)往(ゆ)きき。是(ここ)に萬(よろず)の神の聲(こえ)は狹(さ)蝿(ばえ)なす滿(み)ち、萬(よろず)の妖(わざわひ)悉(ことごと)く發(おこ)りき。是(ここ)を以(も)ちて八百萬(やほよろず)の神、天(あめ)の安(やす)の河(かわ)原(ら)に神(かむ)集(つど)ひ集(つど)ひて、高(たか)御(み)産(む)巣(す)日(ひ)の神の子、思(おもひ)金(かね)の神に思はしめて、常(とこ)世(よ)の長(なが)鳴(なき)鳥(どり)を集め鳴かしめて、天(あめ)の安(やすの)河(かわ)の河(かわ)上(かみ)の天(あめ)の堅(かた)石(いわ)を取り、天(あめ)の金(かな)山(やま)の鐵(くろがね)を取りて、鍛(かぬ)人(ち)に天(あま)津(つ)麻(ま)羅(ら)を求(ま)ぎて、伊(い)斯(し)許(こ)理(り)度(ど)賣(め)の命(みこと)に科(おほ)せ、鏡を作らしめ、玉(たまの)祖(おや)の命(みこと)に科(おほ)せて、八(や)尺(さか)の勾(まがたま)の五(い)百(ほ)津(つ)の御(み)須(す)麻(ま)流(る)の珠(たま)を作らしめて、天(あめの)兒(こ)屋(やね)の命(みこと)、布(ふ)刀(と)玉(だま)の命(みこと)を召(め)して、天(あめ)の香(かぐ)山(やま)の眞(ま)男(を)鹿(しか)の肩を内(うつ)拔(ぬき)に拔(ぬ)きて、天(あめ)の香(かぐ)山(やま)の天(あめ)のははかを取りて、占合(うらな)ひまかなはしめて、天(あめ)の香(かぐ)山(やま)の五(い)百(ほ)津(つ)眞(ま)賢(さか)木(き)を、根(ね)こじにこじて、上(かみ)つ枝(え)に八(や)尺(さか)の勾(まがたま)の五(い)百(ほ)津(つ)の御(み)須(す)麻(ま)流(る)の玉(たま)を取り著(つ)け、中(なか)つ枝(え)に八(や)尺(た)の鏡を取り繋(つ)け、下(しも)つ枝(え)に白(しら)丹(に)寸(き)手(て)、青(あお)丹(に)寸(き)手(て)を取り垂(しで)て、此(こ)の種(くさ)種(ぐさ)の物は、布(ふ)刀(と)玉(だま)の命(みこと)、布(ふ)刀(と)御(み)幣(てぐら)と取り持ちて、天(あめの)兒(こ)屋(やね)の命(みこと)、布(ふ)刀(と)詔(のり)戸(と)言(ごと)祷(ほ)き白(まを)して、天(あめの)手(た)力(ぢから)男(を)の神(かみ)、戸の掖(わき)に隱(かく)り立ちて、天(あめの)宇(う)受(ず)賣(め)の命(みこと)、手(た)次(すき)に天(あめ)の香(かぐ)山(やま)の天(あめ)の日(ひ)影(かげ)を繋(か)けて、天(あめ)の眞(ま)析(さき)を鬘(かづら)と爲(な)して、手(た)草(ぐさ)に天(あめ)の香(かぐ)山(やま)の小(さ)竹(さ)の葉を結(ゆ)いて、天(あめ)の石(いわ)屋(や)の戸にうけを伏(ふ)せて、蹈(ふ)みとどろこし、神(かむ)懸(がか)り爲(し)て、胸(むな)乳(ち)掛(か)き出(いだ)し、裳(も)の緒(ひも)を番登(ほと)に忍(お)し垂(た)れき。爾(しか)くして高(たか)天(あま)原(はら)動(とよ)みて、八(や)百(お)萬(よろず)の神共(とも)に咲(わら)ひき。

〇通釈
 須佐之男の命の蛮行を全て善意に受け止めていた天照大御神であったが、自分の部下の機織りの女性を死なせてしまった弟の残虐な性格を恐ろしく思い、天(あめ)の石(いわ)屋(や)(高天原にある洞窟の入り口)の戸を開いて、その戸をしっかりと閉じ塞いで中に籠もってしまわれた。
 すると、高天原は真っ暗になって神々は暗闇に包まれてしまった。そして、葦(あし)原(はらの)中(なかつ)國(くに)を始め、ありとあらゆる世界が真っ暗闇になったのである。こうやって、宇宙全体が日がささない夜だけの状態となり、それがいつまでも続いた。そのため、大勢の神々の叫び騒ぐ声が夏蝿のように宇宙全体に満ち溢れて、あらゆる災いが至るところで起こったのである。
 高天原の神々は困り切ってしまい、天(あめ)の安(やすの)河(かわ)の河原に集まって、これからどうしたらよいかを相談することにした。そして、陽の神様(シナリオを描く神様)である高(たか)御(み)産(む)巣(す)日(ひ)の御子である思(おもひ)金(かね)の神(シナリオを考える知恵の神様)が対策を考えることになった。思(おもひ)金(かね)の神は先ず、常(とこ)世(よ)(世界中で常に存在している生命体の象徴)の長(なが)鳴(なき)鳥(どり)(世界が真っ暗闇になったので困って鳴いている生命体)を集めてきて、世界中の生命体がどんなに困っているかを鳴いて示させた(天照大御神に聞いてもらった)。それから、天(あめ)の安(やすの)河(かわ)の河(かわ)上(かみ)にある天(あめ)の堅(かた)石(いわ)(鉄を鍛えるのに使う硬い石)を採りに行かせて、天(あめ)の金(かな)山(やま)(鉱山)から鐵(くろがね)(鉄)を採掘した。そして、鍛冶職人を探してきて、伊(い)斯(し)許(こ)理(り)度(ど)賣(め)の命(みこと)(石型に溶鉄を流し固めて鏡を鋳る老女)に言いつけて、鏡を作らせた。
 次に、玉(たまの)祖(おや)の命(みこと)(玉(たまの)祖(おやの)連(むらじ)の祖先)に言いつけて、八(や)尺(さか)の勾(まがたま)の五(い)百(ほ)津(つ)の御(み)須(す)麻(ま)流(る)の珠(たま)(多くの勾玉を長い緒に貫き通した玉飾り)を作らせた(以上によって、やがて天皇の皇位の印となる「三種の神器」のうち鏡と勾玉の二つが揃った)。そして、天(あめの)兒(こ)屋(やね)の命(みこと)(中(なか)臣(とみ)氏の祖先)、布(ふ)刀(と)玉(だま)の命(みこと)(忌(いみ)部(べ)氏の祖先)をお呼びになって、天(あめ)の香(かぐ)山(やま)の眞(ま)男(を)鹿(しか)(雄鹿)の肩の骨を内(うつ)拔(ぬき)に(そっくりそのまま)拔(ぬ)き取って、天(あめ)の香(かぐ)山(やま)の天(あめ)のははか(桜)を取ってきて、その骨を焼いて占わせて、次のように始まるにぎやかなお祭りの準備をしたのである。
 天(あめ)の香(かぐ)山(やま)のよく茂っている榊を根こそぎ掘り抜いてきて、上の方の枝に八(や)尺(さか)の勾(まがたま)の五(い)百(ほ)津(つ)の御(み)須(す)麻(ま)流(る)の玉(たま)を取り付けて、中ほどの枝に八(や)尺(た)の鏡を取り付け、下の方の枝に楮(こうぞ)(クワ科の植物)の白い幣(ぬさ)(神に祈る時に捧げ、祓いに使う布や麻などを切って垂らしたもの)と麻の青い幣(ぬさ)を取り垂らした。以上の見事な供え物を布(ふ)刀(と)玉(だま)の命(みこと)(忌(いみ)部(べ)氏の祖先)が神に献上する尊い幣(ぬさ)として捧げ持ち、その捧げ持った榊の前で天(あめの)兒(こ)屋(やね)の命(みこと)(中(なか)臣(とみ)氏の祖先)が尊い祝詞(のりと)を言(こと)祝(ほ)ぎ申しあげた。
 そして、天(あめの)手(た)力(ぢから)男(を)の神(かみ)(腕力の神)が天照大御神がお隠れになっている天の岩屋戸の脇に隱(かく)れて立ち、天(あめの)宇(う)受(ず)賣(め)の命(みこと)(踊り手で猿(さる)女(めの)君(きみ)の祖神)が天(あめ)の香(かぐ)山(やま)の聖なる日(ひ)陰(かげの)蔓(かずら)を襷(たすき)にかけて、聖なる真(まさ)析(きの)葛(かずら)を髪飾りにして、天(あめ)の香(かぐ)山(やま)の笹の葉を束ねて手に持ち、逆さまにした桶を踏み鳴らし、神(かむ)懸(がか)りして、胸の乳房を露わに出し、衣装の紐を陰部までおし垂らした。すると、高天原がどよめくように、神々がどっと笑ったのである。