若い男女から自然に至るまで、強いものが弱いものに謙るから調和する。澤山咸はお互いに感じ合って調和する時である。
澤山咸について「序卦伝」には次のように書いてある。
有天地然後有萬物。有萬物然後有男女。有男女然後有夫婦。有夫婦然後有父子。有父子然後有君臣。有君臣然後有上下。有上下然後禮義有所錯。(漢文)
天地有りて然(しか)る後に万物有り。万物有りて然る後に男女有り。男女有りて然る後に夫婦有り。夫婦有りて然る後に父子有り。父子有りて然る後に君臣有り。君臣有りて然る後に上下あり。上下有りて然る後に礼義、錯(お)く所有り。(書き下し文)
天地が創造されて、その後に万物(山川草木)が誕生する。万物が誕生して、その後に様々な生物が生まれ、男女に区分される。男女はやがて結婚して夫婦となる。やがて夫婦からは子供が生まれて父子の関係が成立する。父子の関係を社会に敷衍(ふえん)すると君臣(上司と部下)の関係となる。君臣(上司と部下)の関係は上下の関係である。上下の関係を長幼の序と云い、人間社会が調和するための礼儀として周(あまね)く社会に浸透していく。
以上が澤山咸の概要である。
ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。
☆ここから下経である。上経(一乾為天~三十離為火)では、「天の道」「地の道」について説いていたが、下経(三一澤山咸~六四火水未済)では、「人の道」について説いている。
上経では「乾為天(陽の役割)」と「坤為地(陰の役割)」から始まったが、下経では「澤山咸(若い男女の出会い」と「雷風恆(夫婦の有り様(よう))」から始まる。
咸、亨。利貞。取女吉。
○咸は亨(とお)る。貞(ただ)しきに利(よろ)し。女(じよ)を取(めと)れば吉。
咸(かん)は感ずる(心が動く)時。若い男女が相(あい)感(かん)応(おう)する時である。下卦艮(少男)が止(とど)まりどっしりと構えて、上卦兌(少女)が喜んで感応する。それゆえ、何事もすらっと通る。
若い男(少男)も若い女(少女)もお互いに正しく感応するから宜しきを得る。
若い男が若い女を娶(めと)れば、共に夫婦の道を歩むことになる。以下省略。