天火同人は自分に囚われる弱さを克服して世のため人のために尽くすべく心を磨く時である。下卦離☲には「明智・明德」という優れた性質がある。自分の中に眠っているその性質を引き出して磨いていくことが求められる。小人は自分に囚われて世のため人のために尽くすことができない。君子は自分に囚われないから世のため人のために尽くすことができる。誰もが心の中に「明智・明德」を具えている。自分の中に眠っている「明智・明德」を引き出して磨いていくのである。
下卦離☲と二三四爻の互体巽☴に小人が潜んでいる。小人は自分に囚われる。一陰五陽の形は五陽が一陰に惹かれるので、二爻をめぐって私利私欲の争いが起こる。その争いを乗り越えなければ世のため人のために尽くすことはできない。五爻の君子が超然と構えているので、やがて争いを乗り越えて世のため人のために尽くす時がやって来る。それが天火同人の時である。
以上が天火同人の概要である。
ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。
同人、于野。亨。利渉大川。利君子貞。
○人に同じうするに野(や)に于(おい)てす。亨(とお)る。大(たい)川(せん)を渉(わた)るに利(よろ)し。君子の貞(てい)に利(よろ)し。
同人は人と人とが志を同じくして、一致団結して事に中る時である。上卦の天(乾)と下卦の太陽(離)が天の道を同じくするように、広く天下の同志を集めて和合する。貴方が公正で無私ならば、何事もすらっと通る。
同志が一致団結して事に中る場合は、大川を渉るような難事業でも成し遂げることができる。何事も君子(立派な人)の正しい道(志を体現すること)を固く守ることが肝要である。以下省略。