象曰、木上有水井。君子以勞民勸相。
○象に曰く、木の上に水有るは井なり。君子以て民に勞(ろう)し相(たす)くるを勸(すす)む。
木(下卦巽)の上に水(上卦坎)が有るのが井の形である。井は、釣(つる)瓶(べ)で水を汲み上げる井戸(木の上に水)や地上の草木が地下水を吸い上げる(木の上に水)形となっている。
君子(立派な人)は井戸の水や地下水が人や物を養って窮まることがない井の形を見習って、萬民を慰労して慈しみ、相互扶助の精神を奨(しよう)励(れい)して、安寧な社会の実現を図るのである。
ここまでが、原文(漢文と書き下し文)と意訳で見た、水風井の「大きな物語」である。
ここからは「小さな物語」となる。「小さな物語」は六つある。一つひとつを原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者が理解できるように意訳していく。
初六 ☵☴ 之卦 五水天需☵☰
初六。井泥不食。舊井无禽。
○初六。井(せい)泥(にご)りて食(くら)はれず。舊(きゆう)井(せい)、禽(とり)无(な)し。
貴方は柔弱不中正(陰爻陽位)で最下(一番下)に居り六四とは陰爻同士で応じない。今は、枯れ井戸の底の泥水のように誰にも飲んでもらえない存在(役に立たない・小人)である。
底に泥水しかない枯れ井戸は、井戸としての役割を果たさないので、鳥すら寄ってこない。以下省略。