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時の物語 周易六十四卦 校正 5

十一.安定する時

 次は「安定する時」の物語である。小は家庭から大は国家まであらゆる組織が「安定する時」である。組織が安定すれば、わたしたち一人ひとりの心も安定する。人間関係が良好となり物事が上手く運ぶようになる。「安定する時」は誰もが幸せになれる時である。
 「あなた(わたし)」が属している(小は家庭から大は国家までの)組織にも「安定する時」があったはずである。これから「安定する時」が来るかもしれない。あなたが属する組織が常に「安定する時」だったら、それは理想的な組織である。

 「安定する時」の主人公は、江戸時代の中期に創業し三百年の歴史を誇る地方の老舗企業に勤めている「あなた(わたし)」である。

 わたしは山に囲まれた自然溢れる地方に生まれ、高校までは両親と祖父母が同居している旧家で育った。大学の時に上京して一人暮らしも経験したが、卒業と同時にUターンで地元に戻り、江戸中期創業で三百年の歴史を誇る老舗企業「江戸屋」に入社した。今の社長は初代から数えて十八代目。江戸時代は二百六十五年続き、最後の将軍慶喜が十五代将軍だから、「江戸屋」は江戸時代よりも続いている。「江戸屋」に就職したのは、地場産業として時代が変化しても一貫して伝統的工芸品を作り続けて、地元から厚く信用されているからだ。以下省略。

十二.閉塞逼迫する時

 次は「閉塞逼迫する時」の物語である。小は家庭から大は国家まであらゆる組織が「閉塞逼迫する時」である。組織が閉塞逼迫すれば、わたしたち一人ひとりの心も閉塞逼迫する。人間関係がギスギスしてあらゆる物事が上手く運ばないようになる。「閉塞逼迫する時」は誰もが不幸になる時だ。
 「あなた(わたし)」が属している(小は家庭から大は国家までの)組織にも「閉塞逼迫する時」があったはずである。あるいは、これから「閉塞逼迫する時」が来るかもしれない。あなたが属する組織が常に「閉塞逼迫する時」なら、その組織はやがて崩壊する。

 「閉塞逼迫する時」の主人公は、明治時代に創業し百年以上の歴史がありながら、これまで培ってきた経営資源を蔑(ないがし)ろにし、既存事業と関連性のない新事業を開拓してグローバル企業を目指している五代目青年社長の「あなた(わたし)」である。

 わたしは政令指定都市の中堅企業「明治旅館」の後継ぎとして生まれた。明治時代に創業した「明治旅館」は政令指定都市で観光資源にも恵まれた地域に集まる富裕層をターゲットに和洋折衷のモダンで優雅な雰囲気と美味しい料理を売り物にしている。代々長男が後を継いでおり、長男のわたしは生まれた時から「明治旅館」の後継ぎとして英才教育を受けた。豪邸で暮らし、わが家のことを知り尽くした使用人の婆やが身の回りの世話をしてくれた。良家のボンボンとして上から目線で物を観て育ったのである。わが家の血筋は目から鼻に抜けるような頭脳の持ち主が多く、わたしもその例に漏れない。以下省略。