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時の物語(易経短編小説集・近日中に出版予定)23

二十二.外面を飾る時

 人間が素のまま生きていくことは容易なことではない。多かれ少なかれ外面を飾り世間体を繕うから生きていける。進学を希望する学校や就職を希望する会社の面接を受ける時は、誰もが外面を飾って臨む。外面を飾らない人などいない。お洒落することも学歴を重ねることも勤め先や結婚相手を選ぶことも全て外面を飾ることである。多かれ少なかれ外面を飾るから幸せに生きていくことができる。全く外面を飾らずに生きていけるのは修行して悟りを得たお坊さんぐらいのものである。
 だが、何事も外面を飾るだけでは大成しない。内面が伴ってこそ充実した人生を送ることができる。外面を飾るだけの限界を知って質素に生きていくことが本当の幸せな生き方ではないだろうか。

 「外面を飾る時」の主人公は裕福な家庭に生まれて何一つ不自由なく生きてきた「あなた(わたし)」である。

 裕福な家に生まれたわたしは働き者の父と優しい母に見守られて何一つ不自由なく生きてきた。学校の勉強も好きだったし、友達にも恵まれていたので、悩み一つなく大学に進学することができた。容姿にも自信があったわたしは男の子にもモテたし生まれつき頭も良かったので成績も優秀だった。仕送りも沢山あったので欲しい物は何でも手に入れることができた。恋人もすぐできたし、男友達も沢山いたので毎日が楽しかった。あっという間に四年間が過ぎて就職することになったが、容姿端麗で成績も良かったわたしはストレートで希望する会社に入ることができた。社会に出てからも学生時代と同じように毎日が楽しかった。
 けれども、わたしは心の底から幸せを感じていなかった。望むものは全て手に入ったのに満たされない何かがあった。何が満たされないのか、自分でもわからなかった。世間の人がわたしを見たら何が満たされていないのかわからないだろう。外面的には全て満たされているわたしがどうして満たされていないのか。自分でもわからないのだからわかるはずもない。以下省略。