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時の物語(易経短編小説集・近日中に出版予定)24

二十三.人事を尽くして天命を待つ時

 人間社会で織りなされる物語は悲(ひ)喜(き)交(こも)交(ごも)である。人や組織が盛運の中にある時には喜々として幸せを感じることが多いが、衰運の中にある時には悲嘆して不幸に陥ることが多い。今回の「人事を尽くして天命を待つ時」の物語は、衰運中の衰運の時である。何をやっても報われず悲嘆して絶望の淵に沈む時であるが、絶望は希望を迎えるためにある。衰運でどん底まで落ちるから盛運の時を迎えることができるのだ。どんな人や組織でも、希望さえ失わなければ、どん底から這い上がっていくことができる。どんな状況に追い込まれても、希望を捨てずにやるべきことをやる。それが「人事を尽くして天命を待つ時」である。

 「人事を尽くして天命を待つ時」の主人公は、大東亜戦争に敗れて以来、事実上国家主権を奪われ属国(経済植民地)から亡国(奴隷国家)への道を歩み続ける日本を取り戻すために希望を失わずにやるべきことをやり続けている「あなた(わたし)」である。

 わたしはもうすぐ前期高齢者の仲間入りをする。三十半ばまで公務員として勤めていたが、自己実現のため独立開業して個人事業を営んできた。独立開業してしばらくは公務員としての経験と人脈を活かして企業経営のお手伝いをしてきたが、今は日本に古くから伝わる古典の研究・啓蒙・執筆活動を生業としている。日本に古くから伝わる古典の研究を始めたきっかけは四十代の始めに今は生涯の師匠として尊敬している先生の教えを受けたことにある。その先生は戦後日本の教育に決定的に欠けている三つのことを教えてくれた。
 一つ目は「正しい日本の歴史を教えていない」こと。
 二つ目は「古くから伝わり生活の一部になった神仏について教えていない」こと。
 三つ目は「聖徳太子の時代から戦前まで根付いていた道徳について教えていない」こと。
 正直言って四十を過ぎるまで以上の三つことに全く興味がなかった。しかし、その先生は今の日本に大変危機感を持っておられた。以下省略。