二十一火雷噬嗑 ☲ ☳ 離上震下
互卦 三九水山蹇 ☵☶
綜卦 二二山火賁 ☶☲
錯卦 四八水風井 ☵☴
火雷噬嗑☲☳を理解するためには、山雷頤☶☳を踏まえておく必要がある。山雷頤は上爻と初爻が陽爻で他は全て陰爻である。上卦☶を上顎、下卦☳を下顎と見立てるから、上爻は上唇(うわくちびる)あるいは上の歯、初爻は下唇(したくちびる)あるいは下の歯である。口をあんぐりと大きく開けて真ん中が空洞になっている形が山雷頤である。
火雷噬嗑は山雷頤が口をあんぐり開けている空洞に異物が入り込んだ形である。異物は九四の陽爻である。この異物を除去しないと物事が成就しない。それが火雷噬嗑の時である。
ただしこれは全体の卦象から意味を読み解く時の見方であり、爻辞を読み解く時には四爻は異物ではなく、異物を取り除く執行官として言葉がかけられている。
火雷噬嗑の九四は火地晋の九四と反対に、全体の卦象を読み解く時には「異物や邪魔者」と悪役なのに、爻辞を読み解く時には「異物や邪魔者に刑罰を執行する」正義の味方となる。
易経のこのような矛盾には割り切って対応するのが賢明である。すなわち、全体の卦象を読み解く時と爻辞を読み解く時では見方スパッとを変えるのである。
火雷噬嗑に限らず、原文(書き下し文)の解釈や言葉の整合性に疑問を抱くことがある。どうしてそのような解釈になるのか、爻辞と爻辞の整合性がないではないか。などなどである。易経には様々な解釈がある。様々な解釈を学んだ上で自分なりの解釈を考えて納得する。それが易経を学ぶ醍醐味でもある。
以上が火雷噬嗑の概要である。
ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。(太字を読めば理解できる。)
噬嗑、亨。利用獄。
○噬(ぜい)嗑(こう)は亨(とお)る。獄(ごく)を用(もち)うるに利(よろ)し。
噬嗑は上(うわ)頤(あご)と下(した)顎(あご)(二七山雷頥の象)の間にある邪魔物(全体の卦象からは四爻を邪魔者と観る)を、聡明な智慧(上卦離の明智)と活発な威権(下卦震の雷動)で噛み砕いて除き去り、上下和合亨(こう)通(つう)する時である。
邪魔物は天下の害(がい)悪(あく)ゆえ、刑罰や裁判で懲(こ)らしめるがよい。